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ラルside

 イオの助言通りにぐりぐりと眉間の皺を伸ばしてみるが、効果はあるだろうか。指を離してイオの反応を見る。

「だいぶいいんじゃない?」
「そうか。」
「それを維持しなさいよ?」
「……分かった。」

「うん、それだけでも変わるわねー。普段よりほんの少しだけ話しかけやすいかも。」
「そうか。後は何をすれば?」

「そうねぇ……あ、話し掛けられたら『ああ……』とか『いや……』とか『別に……』とかで話を終わらせないでもう一言は付け加えること!」

 ビシッと人差し指を立ててそう断言するイオ。

「もう一言……?」

 もう一言とは何ぞ。

「そう。一言で話を終わらせないで、話を繋げる努力をするべし。」
「話を繋げる……」
「まあ、今のように『会話する』のを意識しなさいってこと。」
「今のように……」

 ……ああ駄目だ、ぷすぷすと情報過多で頭がショートしているような気がする。人と関わることがこんなにも難しいなど……聞いていない。

「あらあら、大丈夫~? また眉間に皺が寄ってるわよ?」
「うーむ……?」

「まあ、最初のうちは婚約者ちゃんとの会話で練習すればいいんじゃない?」
「しかしそれだと本末転倒では……」

 マリーに頼ってもらうためのこれなのに……。

「何事も練習が必要よ。そのためにもラルちゃんが話し練習しやすいのは多分あの婚約者ちゃんだろうし、それにきっとあの婚約者ちゃんは快諾してくれるわよ。」
「そうだろうか……」

「そうよ。それかいっそのこと全て話しちゃえば? 『マリーに頼ってもらえるように人嫌いを直そうと思う。だから練習に付き合って欲しい』って。」

 イオのその発言にカッと顔が熱くなる。

「そそそそんなこと出来るか! マリーのための行動なのに、マリーに言ってしまったら格好つかないだろう!」

 ああ、ぐるぐると頭が回るような気分だ。思考がまとまらない。

「へぇ……ラルちゃん、婚約者ちゃんのこと本当に大切なのね。言動の節々から『大好き~』ってのが伝わるわ。」
「……そうなのか?」
「そうなのかって……あんたねぇ……」

 はぁー、と溜息をつかれた。……一体なんだと言うんだ?
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