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29 転生

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 この世界にも輪廻転生という考えはあるようなので、きっとラル様も何を言っているかは分かったでしょう。受け入れるかどうかは別として。

「前世……」
「そうです。私にはマリアルモンテ・ヒダンではない人物の記憶があります。」
「まさか……!?」

「ええ、そのまさかです。私は前世で豊永 ひまりという名前で生きていました。それも、この世界ではない別の世界で。」
「別の世界……」

「はい。そしてその時の母親に『陽だまりでいること』を強要されていました。」
「……。」

「ね? 突飛でしょう? 信じてくださらなくてもいいんですよ。あまりにも非現実的すぎますから。」

 自嘲的な笑みがこぼれてしまいました。ええ、非現実すぎますから。

 とは言いつつも拒絶されると思うとチクリと胸が痛くなりました。嫌われたくない気持ちの表れでしょうか。

 私が思うよりもずっとラル様のことが好きなのですね。自分のことなのに他人事のようです。

 ああ、ああ、胸が痛い。痛みを緩和させようとそっと胸の辺りを摩る。

「いや、信じよう。確かに突飛で信じ難いが、マリーが嘘をつくとも思えない。」
「無理なさらなくても……」

「無理なんかじゃない。それに……マリーのことを知ることが出来て場違いかもしれんが嬉しく思う。今まではマリーの笑顔しか知らなかったから。」
「ラル様……」

 拒絶されると思い込んでいたので、拒絶されなかった安心感からか引いた涙がまた溢れてきました。

 あれ、私ってこんなに泣き虫でしたっけ? そう思ってしまうくらいぼろぼろと涙が零れる。

「出来ればでいいが、笑顔以外の表情も見たい。」

 そんなラル様の言葉が私の中にじんわりと染み渡るのが分かりました。ああ、なんて暖かいのでしょう。

「泣き止んだらでいいから、前世のマリーの話も聞きたい。駄目か?」
「……駄目なんかじゃないです!」
「良かった。」

 安堵したようにほっと一息ついたラル様は、私の頬に流れる涙を指で拭ってくださいました。
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