笑顔の仮面は外れない〜陽光の私と月光の貴方〜 【完結】

君影 ルナ

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18 リョクチャ

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 聞いてみた結果から言えば、『何故かは分からないが、私の直感がマリー以外の人は有り得ないと思った。』らしいのです。

 家に戻ってきた私は自室のソファにぽすっと座る。

「うーん……消化不良です。」

 あの後も街を見て回ったのですが、どうしてもその言葉ばかり気になってしまっていつもより集中出来ませんでした。いえ、ちゃんと楽しみましたが。

 直感で婚約者を決めるとは……なかなか聞かないですからねえ。


 とまで考え、どうしてもハッキリとした理由を求めてしまう自分がいることに気が付きました。

 ハッキリした理由がなくてもラル様と婚約している事実は変わらないのに、何故そこで私は理由を求めてしまったのでしょう。

 いけないいけない、あるがままを受け入れることも大切でした。

 とにかく今は深く考えずに……

 メイドが持ってきてくれたものに目を輝かせます。

「お嬢様、リョクチャでございます。」
「ありがとう。」

 緑茶を楽しみましょう!

 前世の時から緑茶は大好きなのですが、この世界でもリョクチャと呼ばれ──前世の時の物と変わりはないのです!──、東の国で親しまれている飲み物なのだそうです。この世界にも緑茶があることを知った時は歓喜しました。

 そして私がリョクチャ好きだと知ると、両親は東の国から取り寄せてくださいました。今では家に常備されています。有難いですね。


 一口リョクチャを飲むと……

「はぁー……幸せ。」

 心が落ち着き、幸福感で満たされます。頬がゆるゆるに緩んでいるのが自分でも分かります。

 ああ、ちなみにこの白い湯のみは自分で作りました。自分で湯のみを作ったという満足感も、より一層緑茶を美味しくするスパイスになっていると思っています。はぁ、幸せ。

「お嬢様、先程はどこか考え込んでいらっしゃいましたが、少しは楽になられましたか?」
「ええ、随分。いつもありがとう。」
「いえ、これが仕事ですから。」
「ふふ、それでもよ。」

 私の言動の変化によってリョクチャを出してくれたりお菓子を出してくれたり……とてもよく周りを見ているのね。私も見習わなければ、ですね。


















「あ、ちょっと一人になりたいのだけれど……」
「かしこまりました。ご用があればまた呼んでください。」

 私のその要望にメイドは答えてくれました。有難いです。

「ありがとう。」







 パタンと扉が閉まり、完全に一人になれた。

 その瞬間、外では全く外れない笑顔が剥がれ落ちた。
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