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11 お出掛けデー

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 さて今日は休日。それも月一のラル様とのお出掛けデーです。事前に連絡が入り、今回は街に出掛けるとのことです。

 私はあまり自発的に外へ出ていかないので、今日はとても楽しみですね!

「お嬢様、ぼーっとしていないで準備してください。」
「はーい。」

 お出掛け先のことに思いを馳せすぎて準備が疎かになってしまいました。これでは時間に間に合いませんね。急がないとです。

 普段よりも質素な服に着替え、お化粧も普段よりも軽くしてもらいます。貴族然とした服装だと人攫いやスリなどの危険もあるのでそのようにとの指令です。















 迎えに来たラル様には応接室にて待っていていただきました。待たせてはいけないとやや早足で向かいます。

 その扉の前で少し上がった息を整え、扉を開ける。

「お待たせして申し訳ありません。」
「いや、いい。今来た所だから。」

 二人とも貴族らしさを封印した格好。しかしラル様はなんというか……

「格好いい……」

 ぽつりと口から漏れ出てしまいました。

 しかしそうなってしまうのも仕方ないと思うのです。着ているものは普段より質素なはずなのに、身から溢れ出るオーラが違うというか……とにかく格好いいんですから。

「ん? 何か言ったか?」
「あっ、いえ! なんでもないです!」
「そうか?」

 ほっ、ラル様が地獄耳じゃなくてよかったです。もし聞かれていたら恥ずかしさでその辺に埋まりたくなると思いますので。

「では行くか。」
「はい。」
















「……。」
「……。」
「……。」
「……。」

 やっぱりラル様とは何を話していいか分からないです。街を歩きながらも私達は無言でした。あ、笑顔は健在ですよ。

 婚約した当初はこちらから色々話しかけたりもしたのですが、どれもラル様に響くこともなく。ああ、そうか、などの相槌で終わってしまいました。

 なのでいつからかは忘れましたが、私達が共にいる時は無言の空間が自然と出来てしまうのです。

 ……ああ、駄目ですね。ネガテイブになってしまいそうでした。危ない危ない。

 根気強く話しかけていればもしかしたら。そんな淡い期待を込めてまた話しかけます。

「ら、ラル様、今日は天気が良くてお出掛け日和ですね。」
「ああ。」
「……。」
「……。」
「……。」
「……。」

 ああもうどうしましょう! 折角のお出掛けなのです。もっとラル様と楽しみたいのです!



 ぐるぐるぐるぐる考えていて、背後から近付く気配に気付くことは出来ませんでした。
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