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1 陽だまり

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 ここはガラッシア国のシステーマ・ソラーレ学園。そこに通う一人の令嬢。その人は……

「あ、陽だまり様よ!」
「まあ、今日も存在が癒しですわ!」
「こちらまで暖かい気持ちになりますわね。」

 周りから『癒しキャラ』として慕われているのだった。














 どうもどうもこんにちは。マリ・・アルモンテ・ヒダ・・ン、ヒダン侯爵家の長女です。

 苗字と名前の最初の二文字ずつを取るとヒダマリ陽だまりになります。面白いですよね。

 その名前と共に、常に笑顔でいるからか周りの皆様から陽だまり様と呼ばれております。暖かそうでいいですね。ああ、ちなみに親しい人からはマリーと呼ばれております。短くていいですよね。





 さて、話は変わりますが今日もいいお天気で幸せですね。こんな日はお庭で日向ぼっこするのが一番です。昼休みになったこの時間を使って学園内のお気に入り日向ぼっこスポットに向かいます。もちろん、お弁当を持って。

 ああ、いいお天気に気が向いてしまって自己紹介が疎かになってしまいましたね。

 私はマリー、そして前世の名を豊永 ひまりと言います。

 ええ、そうです。私には前世の記憶があるのです。ええ、ええ、そうなんです。このガラッシアという国ではない、ニホンという国で育った記憶があるんですよ。

 そんな私ですが、前世も今世も『陽だまり』的存在なのは変わらないらしいのです。前世でもひまりという名前から取って『ひだまりちゃん』というあだ名を皆様に付けてもらいました。

 生まれ変わったら陽だまり的存在から脱却出来るかと思いましたが、どうやら陽だまりであることは運命なのでしょう。

 生まれた瞬間にお母様から『あなたは私達の光なのです。その優しい光で周りの人も照らしてあげるのですよ。』と呼びかけられました。

 前世の記憶を駆使すれば、陽だまりでいるにはどうすればいいかなど容易く分かるものです。前世の時と同じようにのほほんと過ごしていればいいのですから。

 そんなこんなで陽だまりは健在なのです!

「ふぁ……」

 あら、お恥ずかしい場面をお見せしてしまいました。しかしこの陽気に眠気も増幅してしまうのも必然というやつなのでしょう。令嬢としてもはしたないと言われそうですが、眠気には勝てません。

 あ、ほらあそこ、あの大木の根元がお目当ての場所なんですよ。そこにあるベンチに座り、ふっと一息つく。ああ、今日もここはぽかぽか暖かくて気持ち良いですね。さて、お弁当を食べましょう。

「あ……!」

 お弁当箱を開けると、私の大好物のグラタンが入っていました! はわわ……料理長様様です!

「帰ったらお礼を言わなければなりませんね! それではいただきます!」

 手を合わせて食材に感謝し、グラタンを一口食べると……

「美味しい……」

 美味しいグラタンのおかげで眠気は吹き飛んでしまいました。頬がゆるゆるなのは仕方がありません。ですがこれで午後の授業も頑張れますね。

「マリー……」

 目を瞑ってグラタンを堪能していると名前を呼ばれました。目を開けて声の主を探すとすぐ目の前にいました。私に声を掛けたのは眼鏡を掛けた男性。

「あ、ラル様……御機嫌よう。」

 お弁当を置いて挨拶をします。それに無表情で頷くこの方はライトバーグ侯爵家嫡男、ムーンテラル・ライトバーグ様です。ちなみに私の婚約者様で、私はラル様とお呼びしています。

 ちなみに周りの皆さんからは、いつも無表情でいるからか『凍てつく月光ムーンライト様』と呼ばれております。

 陽光の私と月光のラル様。お似合いなのではないかと密かに私は思うのですが、ラル様は私のことを嫌っているといいますか、興味がないと言いますか……いつも素っ気ないのです。

「どうされましたか?」

 にっこり笑顔でいつもと同じ質問をします。ですがいつも『いや……』とか『別に……』と返されてしまいます。なかなかラル様とコミニュケーションを取るのは難しいものです。

「いや……特に用はない。見掛けたから……その……」

 そう言ってそっぽを向いてしまわれました。嫌われてはいないと思いたいところですが、あまり好感触はありませんね。

「そうでしたか。……あ、ラル様、お昼ご飯は食べられましたか?」
「まだだ。弁当は今持っているが……」
「まあ! でしたら、もし嫌でなければここで食べていきませんか? お日様ぽかぽかですよ?」
「……ではそうする。隣失礼する。」

 そう言って隣に座るラル様はお弁当を開けて食べ始めました。私も食事再開です!
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