16 / 19
僕はテディー
はち
しおりを挟む
「九重、上なんて私が黙らせれば良いわ。なんたって私、幹部だもの。まあまあ偉い人だもの。それでも無理なら力ずくで黙らせるわ。あの場所で今最強なのは私だから大丈夫。」
「しかし……それでは春子殿の身に危険が及ぶのでは……上からの反感を買って……」
九重、僕を解剖したいとか言う怖い人だけど、春子さんが大事なのはよーく分かった。すごく心配そうな顔だもん。でも春子さんは意見を曲げる気は無さそう。さっきまでよりも真剣な表情になった。
「九重、私はこの機会を逃したくないの。分かる? テディーと関わればモノの怪を、いえ、これから怒り狂ってしまうだろう物達の助けになると思わない? せっかく珍しいモノの怪が現れてくれたんだもの。少しくらい利用させてもらわないとね?」
「その利用というのが、ほとんど利用とは言わない程度のものなのでは?」
「それに私、テディーがこれからどう動きたいか、興味があるわ。だからあまり拘束したくはない。」
「それは……まあ……」
「ね、そういうことで良いでしょ? ……はい、決まり!」
パチン、と春子さんは手を叩いて僕の方を向いた。
「ということでテディー、まずは私の家に来ない?」
「いいよ!」
僕が了承すると、春子さんは僕を抱き上げる。すると、春子さんは驚いたように目を見開いた。
「あらテディー、あなたなかなか良い毛並みね。」
「うふふ、僕のご主人様、瞳ちゃんがよくお手入れしてくれたんだ!」
「そうだったのね。……テディーのお話、もっと聞かせて頂戴。」
「うん!」
それから僕は春子さんのお家にお邪魔して、お話をたくさんした。
僕が生まれた時のこと、お店に並んでいたこと、瞳ちゃんが買ってくれたこと、瞳ちゃんが僕を連れてたくさんの景色を見せてくれたこと、瞳ちゃんの笑顔が好きだったこと、瞳ちゃんが……ひ、瞳ちゃんが……
春子さんとお話していくと、頭が整理されていくような気持ちになった。そして瞳ちゃんとの楽しかった思い出も鮮明に思い出して、悲しい気持ちにもなって……
ああ、涙がまた溢れ出してきた。瞳ちゃんは僕を置いて行っちゃったんだって思ったら……
「そうなのね。テディーは瞳さんが大好きで、だからこそもう会えないと考えて悲しくなった。そっかそっかぁ……」
春子さんは僕の頭を撫でてくれた。その手が、声が、とても温かくて、僕はもっと泣いちゃった。
「しかし……それでは春子殿の身に危険が及ぶのでは……上からの反感を買って……」
九重、僕を解剖したいとか言う怖い人だけど、春子さんが大事なのはよーく分かった。すごく心配そうな顔だもん。でも春子さんは意見を曲げる気は無さそう。さっきまでよりも真剣な表情になった。
「九重、私はこの機会を逃したくないの。分かる? テディーと関わればモノの怪を、いえ、これから怒り狂ってしまうだろう物達の助けになると思わない? せっかく珍しいモノの怪が現れてくれたんだもの。少しくらい利用させてもらわないとね?」
「その利用というのが、ほとんど利用とは言わない程度のものなのでは?」
「それに私、テディーがこれからどう動きたいか、興味があるわ。だからあまり拘束したくはない。」
「それは……まあ……」
「ね、そういうことで良いでしょ? ……はい、決まり!」
パチン、と春子さんは手を叩いて僕の方を向いた。
「ということでテディー、まずは私の家に来ない?」
「いいよ!」
僕が了承すると、春子さんは僕を抱き上げる。すると、春子さんは驚いたように目を見開いた。
「あらテディー、あなたなかなか良い毛並みね。」
「うふふ、僕のご主人様、瞳ちゃんがよくお手入れしてくれたんだ!」
「そうだったのね。……テディーのお話、もっと聞かせて頂戴。」
「うん!」
それから僕は春子さんのお家にお邪魔して、お話をたくさんした。
僕が生まれた時のこと、お店に並んでいたこと、瞳ちゃんが買ってくれたこと、瞳ちゃんが僕を連れてたくさんの景色を見せてくれたこと、瞳ちゃんの笑顔が好きだったこと、瞳ちゃんが……ひ、瞳ちゃんが……
春子さんとお話していくと、頭が整理されていくような気持ちになった。そして瞳ちゃんとの楽しかった思い出も鮮明に思い出して、悲しい気持ちにもなって……
ああ、涙がまた溢れ出してきた。瞳ちゃんは僕を置いて行っちゃったんだって思ったら……
「そうなのね。テディーは瞳さんが大好きで、だからこそもう会えないと考えて悲しくなった。そっかそっかぁ……」
春子さんは僕の頭を撫でてくれた。その手が、声が、とても温かくて、僕はもっと泣いちゃった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
お昼寝カフェ【BAKU】へようこそ!~夢喰いバクと社畜は美少女アイドルの悪夢を見る~
保月ミヒル
キャラ文芸
人生諦め気味のアラサー営業マン・遠原昭博は、ある日不思議なお昼寝カフェに迷い混む。
迎えてくれたのは、眼鏡をかけた独特の雰囲気の青年――カフェの店長・夢見獏だった。
ゆるふわおっとりなその青年の正体は、なんと悪夢を食べる妖怪のバクだった。
昭博はひょんなことから夢見とダッグを組むことになり、客として来店した人気アイドルの悪夢の中に入ることに……!?
夢という誰にも見せない空間の中で、人々は悩み、試練に立ち向かい、成長する。
ハートフルサイコダイブコメディです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
狼神様と生贄の唄巫女 虐げられた盲目の少女は、獣の神に愛される
茶柱まちこ
キャラ文芸
雪深い農村で育った少女・すずは、赤子のころにかけられた呪いによって盲目となり、姉や村人たちに虐いたげられる日々を送っていた。
ある日、すずは村人たちに騙されて生贄にされ、雪山の神社に閉じ込められてしまう。失意の中、絶命寸前の彼女を救ったのは、狼と人間を掛け合わせたような姿の男──村人たちが崇める守護神・大神だった。
呪いを解く代わりに大神のもとで働くことになったすずは、大神やあやかしたちの優しさに触れ、幸せを知っていく──。
神様と盲目少女が紡ぐ、和風恋愛幻想譚。
(旧題:『大神様のお気に入り』)
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる