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僕はテディー

よん

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 それからまたしばらくして、とある夜。あの日は月の光が部屋にも燦々と入ってきていたのを覚えている。その光に少しだけ心が安らかになったのも覚えている。

 そんな明るい夜。僕はいつものように瞳ちゃんが帰ってこない寂しさで泣いていた。

「うわぁぁん、瞳ちゃん、なんで帰ってこないの~!」





 僕の耳は泣きすぎておかしくなったのだろう。僕の声が部屋にこだましたように聞こえた。

 そのことに僕はびっくりして、思わず泣き止んでしまったのだ。

「え? あれ? ……あれれ?」

 やはり声が部屋にこだまする。びっくりして口元に手を当て……

「僕、手が動く!」

 パタパタと腕を動かすイメージを持つと、パタパタとぬいぐるみの手が動く。

 もしかしたらずっと泣いている僕があまりにも哀れに見えて、動けるように神様が魔法をかけてくれたのかもしれない。うん、多分そうだ。

「こっ、これなら瞳ちゃんを探しに行けるっ!」

 僕が何故動けるようになったかとかは深く考えず、即行動に移して部屋から脱出した。テディベアが動いたり喋ったりするなんて普通ではないことは理解していたから、人に見つからないように気をつけて。

 瞳ちゃんの部屋をなんとか抜け出した僕は、畳の部屋に辿り着いた。そこには……ええと、なんだっけ、仏壇? とかいうものがあって。

「あ、瞳ちゃんの写真だ!」

 そこにご主人様の写真が置かれていたんだ。久し振りに見た瞳ちゃん(写真)は薄く笑っているだけだった。それでも、僕の心は少しだけ満たされた。瞳ちゃん、瞳ちゃん、久し振りだね。そう写真に呼びかけてみたりもした。

 その時、トットッと足音が聞こえてきたので、この部屋の様子を見られるような場所に隠れた。ぬいぐるみが動いただなんて……なんだっけ、かいきげんしょーとか言うやつだって言われちゃう。瞳ちゃんと一緒に見たテレビでそんなことを誰かが言っていた気がする。

「瞳……」

 むむ、どうやらここに来たのは瞳ちゃんのママらしい。仏壇の前に座り込み、泣き崩れた。


「ああ、瞳……なんで死んじゃったのかしら? それも……自殺だなんて……」


 僕はひゅっ、と息を飲んだ。
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