雨、アメ、あめ 【完結、おまけ追加】

君影 ルナ

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おまけ

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さらside

 今日も朝は忙しい。それでも欠かさず見るのはお天気予報。私は娘の虹華と共に朝ご飯を食べながらテレビを見る。

『天気予報士の、皐月さーん。』

 お、ちょうどタイミングが良かったようだ。テレビにパッとるかが映る。

『はーい。皆さんおはようございます。今私がいるのは××前です。今日はジメジメとスッキリしない一日になるようですね。今も雨がパラパラと降ってきています。』

 雨が降っているのにニコニコと笑いながら喋り続けるるか。あんなに雨が嫌いだったのに、今では大好きになったらしい。

「虹華、パパだよ~」
「ぱぱだ!」

 テレビを指差して興奮する今年五歳になる我が娘。このやり取りをほぼ毎日繰り返していたりする。

 るかと再会した日に虹が出たから名前は虹華にしたんだ。とても可愛いでしょ?

『皐月さんって雨の日はいつも以上に笑顔になりますよね。雨が好きなんですか?』
『そうですね。私事ではありますが、妻と出会ったのが雨の日だったので……』

「まま、つまってなに?」
「妻はね、ママのことだよ。パパの妻は私。」
「ふーん。」

 質問したのは虹華のはずなのに、話を聞き流してご飯をもっつもっつと食べ始めた。

 私もご飯を食べながらテレビに耳を傾ける。

『雨はずっと降り続けることはありません。絶対いつかは晴れます。ほら、今回も明日の昼頃になれば晴れてくる予報ですし。』
『確かに。』

『そしてそれは人生でも同じことが言えます。雨が降り続けていたとしても絶対いつかは晴れます。だから今雨が降り続けている方は近くで雨宿りをして、晴れを待ってみるのもいいのではないでしょうか。』

 そう言い切ったるかの表情は、あの頃とは比べ物にもならない程晴れやかで。こちらまで笑顔になってしまう。やっぱり名前の通り五月晴れのような笑顔だなあ、だなんて考えちゃったり。

『……そういえば皐月さんってSNSやってるんですよね?』
『あはは、そうですね。だいたい虹の写真を上げています。雨が終わった後には虹が出て晴れる。とても素敵なことだと思うんです。』
『確かにそうですねぇ!』

 ほわほわと和やかな雰囲気。私までそうなってしまいそうになったが、時計を見てハッと気がついた。

「虹華、もうそろそろ幼稚園バス来ちゃう!」
「うーん。」
「一生懸命もぐもぐしてね!」
「ん!」

 ニッコニコな笑顔で返事をしてくれた。いいお返事です。

 よし、私も急いで準備しないと!


 私はこんな毎日を過ごしています。
















遥side

 テレビで雨について話し込んだ次の日。今日も今日とて仕事をしていた。

 お腹空いたなあ、と時計を見るとちょうどお昼休憩の時間になった。その流れでふっと外を見ると雨が弱まって辺りも明るくなってきていた。

「あ、晴れるかな……」

 それなら屋上に行って写真を撮ろうか。そう考えるとくっと口角が上がるのが分かった。お弁当を持って屋上へ向かう。


 降り続ける雨はない。絶対いつかは晴れる。それが束の間の晴れだとしても。僕はそう信じている。

 だって僕もそうだった。さらと出会う前はずっと土砂降りで、さらと出会った時は僕の中では晴れていて、会えなくなった時に『あれは束の間の晴れだった』と知って落胆し、しかしまた雨の日に再会して虹が出たのだから。

「あ……!」

 屋上に続く扉を開けるととちょうど雨が上がって晴れていたのが見えた。その空に掛かる大きな虹はとても綺麗だった。

「虹だ。」

 ポケットに入れていた携帯を取り出して虹を写す。パシャリ、うん、綺麗に撮れた。

 これをまずはさらにlimeで送り、それからtwetterにも載せる。



#今日の虹
#今回も晴れたよ
#上がらない雨は無い!


 end
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