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7 次の雨は……?
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『また雨の日の放課後、ここに来てよ。そして、またお喋りしよう?』
さらとそう約束して今日は別れた。最初に出会った日は午前授業だったから放課後の時間もたくさんあったが、今日は普通に午後まで授業があったので時間も限られている。しかしすっかり暗くなるまでずっとお喋りしていた。
帰り道でも、未だに雨が降っていたというのに僕の心の中はるんるん気分だった。今にもスキップしそうなくらい浮かれていた。雨の日はさらと会えるんだ、と。しかし一人でスキップすると周りからの冷たい目が怖かったので、透明のビニール傘をくるくる回すだけに留めておいたが。
そしてその後僕が家に帰ってきてまず確認したのは天気予報だった。次はいつ会えるだろうか、と雨が待ち遠しくなっていた。
「あんなに……忌み嫌っていたのにな。」
少しの切っ掛けで心持ちはこうも変わる。実に不思議なものだ。ぽつりと呟いた声もどこか嬉しそうだったのに自分でも気がついた。
「……あ。」
しみじみと不思議さと嬉しさを噛み締めていたその時ふと目に入ったのはカレンダー。それを見て僕は気がついた。
「明日から……六月だ。」
六月といえば梅雨。梅雨といえば六月。さらに会うための月と言っても過言ではない。
「でも梅雨入りは……まだ、か。」
テレビから流れる天気予報は梅雨の『つ』の字もない。そのことにガックリと項垂れるが、まあ一、二週間程の辛抱だと自分を励ます。
「次の雨は……四日後か。」
しかし四日後は土曜日だ。学校には行けない。仕方ない、その次に期待だな。
「るか!」
あれから一週間も経ったこの日はもちろん雨。いつものように放課後になってから教室に戻るとさらがいた。相変わらずニコニコ笑顔が可愛いと思う。僕も自然と笑顔になる。
そういえばそろそろ梅雨入りすると天気予報で言っていたので、僕は梅雨になるのを今か今かと楽しみにしている。最近の楽しみは次の雨の日までの日数を指折り数えることだったりする。
今まで天気予報など流し見して最低限の情報を得るだけだったが、ここ最近はガン見している……なんてことはここだけの秘密だ。
「さら、待った?」
「ううん。私も数分前にヒュッとここに来たから。」
「そっか。そろそろ梅雨入りだよね。そしたらほぼ毎日話せるね。」
「うん! 私も楽しみだなあ。今までは雨の日にここに来ても一人でつまらなかったけど、るかがいると思うと毎日雨だったらいいのにって思うよ。それくらい嬉しい!」
「それは嬉しい限りだね。」
僕と会うことを嬉しく思ってくれるなんて……! この喜びをどう表現すればさらに伝わるのだろうか!
それから楽しくお喋りしていたのだが、そういえば前々から気になっていたことを聞いてみてもいいだろうか。
ぎゅ、と一度自分の手を握りしめてから話し始める。
「そうだ、さら。」
「ん?」
「ちょっと暗い話になるかもしれないけれど……聞いてもいい?」
「……いいよ。」
何を聞かれるのか分かっていそうな表情でさらは答えてくれた。本人の了承も得たし、勇気を出して聞いてみるか。
「さらはここで……死んだんだよね? どうして?」
「……。」
やっぱりそれか。そう言い出しそうな表情で数秒沈黙するさら。聞いてはいけない話だったかな。
やっぱり今の無し! そう言い掛けたその時、僕の声に被さってさらは話し始めた。
「あのね、私、未来に希望が持てなかったの。」
さらとそう約束して今日は別れた。最初に出会った日は午前授業だったから放課後の時間もたくさんあったが、今日は普通に午後まで授業があったので時間も限られている。しかしすっかり暗くなるまでずっとお喋りしていた。
帰り道でも、未だに雨が降っていたというのに僕の心の中はるんるん気分だった。今にもスキップしそうなくらい浮かれていた。雨の日はさらと会えるんだ、と。しかし一人でスキップすると周りからの冷たい目が怖かったので、透明のビニール傘をくるくる回すだけに留めておいたが。
そしてその後僕が家に帰ってきてまず確認したのは天気予報だった。次はいつ会えるだろうか、と雨が待ち遠しくなっていた。
「あんなに……忌み嫌っていたのにな。」
少しの切っ掛けで心持ちはこうも変わる。実に不思議なものだ。ぽつりと呟いた声もどこか嬉しそうだったのに自分でも気がついた。
「……あ。」
しみじみと不思議さと嬉しさを噛み締めていたその時ふと目に入ったのはカレンダー。それを見て僕は気がついた。
「明日から……六月だ。」
六月といえば梅雨。梅雨といえば六月。さらに会うための月と言っても過言ではない。
「でも梅雨入りは……まだ、か。」
テレビから流れる天気予報は梅雨の『つ』の字もない。そのことにガックリと項垂れるが、まあ一、二週間程の辛抱だと自分を励ます。
「次の雨は……四日後か。」
しかし四日後は土曜日だ。学校には行けない。仕方ない、その次に期待だな。
「るか!」
あれから一週間も経ったこの日はもちろん雨。いつものように放課後になってから教室に戻るとさらがいた。相変わらずニコニコ笑顔が可愛いと思う。僕も自然と笑顔になる。
そういえばそろそろ梅雨入りすると天気予報で言っていたので、僕は梅雨になるのを今か今かと楽しみにしている。最近の楽しみは次の雨の日までの日数を指折り数えることだったりする。
今まで天気予報など流し見して最低限の情報を得るだけだったが、ここ最近はガン見している……なんてことはここだけの秘密だ。
「さら、待った?」
「ううん。私も数分前にヒュッとここに来たから。」
「そっか。そろそろ梅雨入りだよね。そしたらほぼ毎日話せるね。」
「うん! 私も楽しみだなあ。今までは雨の日にここに来ても一人でつまらなかったけど、るかがいると思うと毎日雨だったらいいのにって思うよ。それくらい嬉しい!」
「それは嬉しい限りだね。」
僕と会うことを嬉しく思ってくれるなんて……! この喜びをどう表現すればさらに伝わるのだろうか!
それから楽しくお喋りしていたのだが、そういえば前々から気になっていたことを聞いてみてもいいだろうか。
ぎゅ、と一度自分の手を握りしめてから話し始める。
「そうだ、さら。」
「ん?」
「ちょっと暗い話になるかもしれないけれど……聞いてもいい?」
「……いいよ。」
何を聞かれるのか分かっていそうな表情でさらは答えてくれた。本人の了承も得たし、勇気を出して聞いてみるか。
「さらはここで……死んだんだよね? どうして?」
「……。」
やっぱりそれか。そう言い出しそうな表情で数秒沈黙するさら。聞いてはいけない話だったかな。
やっぱり今の無し! そう言い掛けたその時、僕の声に被さってさらは話し始めた。
「あのね、私、未来に希望が持てなかったの。」
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