ほら、ホラーだよ

77.番外編

　子供の皆さんにお伺いします。

　お父さん、あるいは、お母さんの勤めているの会社の名前を知っていますか？

　というのも28話でおばさんがチャタロー君に
「砧インテグレーションスタッフサービスって会社、どこにあるか知ってる？」
と聞くところがあります。

 おばさんはあらかじめネットで砧インテグレーションスタッフサービスという会社が、この近所にある事を調べてきたので、そこに名前を登録しているはずのお手伝いさんの子供だから、場所くらい知っているだろうと思ったからです。

　でもチャタロー君は首をかしげました。
小学校一年生のチャタロー君はお母さんがなんていう会社にいるか知らなかったんですね。
　この時点では書きませんでしたが、お母さんがデイホームの掃除の仕事に行っていることは知っていました。でもその仕事を紹介した紹介派遣会社の名前は知らなかったのです。

　実は、これも書きませんでしたが、ヨシヒコ君はお父さんの勤めている会社がなんというか、はっきり言えませんでした。
　ただ人材派遣登録会社に勤めているという事だけは知っていました。砧インテグレーションスタッフサービスという会社ではない、ということも分かっていました。
　でもお父さんの勤め先は？と聞かれても、多分、ちゃんと答えられなかったと思います。
　お父さんの会社は、ヒューマン　ウエルネス　エージェンシー　というんですけどね。

　22話で、安野くんという同級生は「親は○×商事の営業３課の安野康之です」と職質のお巡りさんに答えていましたが、多分、安野君は中学受験の面接の時、聞かれる可能性があるので、親から教えられていたと思われるのです。

　ヨシヒコ君の場合は、中学受験しませんし、それにヒューマン　ウエルネス　エージェンシーなんて覚えにくいですよね。

　しかし、ヨシヒコ君はもう中学生ですから覚えました。

　そしてお父さんに聞いてみたんです。


「お父さんは二つの会社に入っているの？　その、ヒューマン　ウエルネス　と　砧インテグレーションと」

　ヨシヒコ君、中学生になったので、パパっていうのやめたみたいです。
で、お父さん、と呼び掛けています。

　で、お父さんのお答え。

「あー、あれね。砧インテグレーションスタッフサービス。あれは今、うちの会社の子会社として試験的に組み入れているものなんだけれど、元は町内会の人手の貸し借りから始まったボランティア団体だったんだ。
仕事をしたいけれど、普通の会社に行くのはちょっと無理、という人いるでしょう。例えばマミさんみたいに、お掃除しかできない人とか、コヅカさんみたいにパソコンはできるけれど、電話が取れないとか、ヤモリさんみたいにポストにレターをポストインするのはできるけれど、人付き合いするのは怖いとかいう人。そういう人にも仕事口を紹介できる部署を、会社の福祉事業の一環としてやっていこうということで始まったサービスなんだ。
やっぱりね、町内会のボランティア団体だと、仕事先を探すにも限度があるんでね」

　話を聞きながら、ヨシヒコ君は、お父さんが、変化（へんげ）さんたちの暮らしを確保するために、いままで奔走してきた過程を、お父さんの回想シーンから受け取っていました。

（パパって、いいやつなんだね）

　あれ？　ヨシヒコ君の心の中では、まだパパはパパなんですね。