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60.ポン吉からSOS
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「どうぞ」
ママがインターホンに答え、ぼくは玄関に走った。
玄関を開けるとポン吉が飛び込んできた。
「ああ、いらっしゃい。さあ、あがって。今日はぼくのクラスメートもいっぱい来ているから、きみもどうぞ」
しかしポン吉はまごまごしたままだった。
「あれ、どうしたの?さあ、遠慮をしないで」
ポン吉は何かを言いたそうだった。どう話していいかまごついていた。
「あのね、おにいちゃん、あのね、ぼくね」
「うんうん」
「あのね、見たんだ」
「なにを?」
「えっとね、あのね、白いやつ。人の形をした風船みたいなの、たくさん。それでね、みんな学校のほうに行ったの」
ぼくではよくわからなかった。しかし、学校のほうでなにかがあるらしいということはわかった。
「おばさん!」
ぼくはポン吉を家にあがらせ、リビングのドアの外からおばさんを呼んだ。
「おばさん、ちょっと来て!」
おばさんが来た。
ポン吉はまた繰り返す。
「あのね、人の形をした風船みたいなのがたくさん、学校のほうに行った」
「あまのじゃくの屁じゃな」
気付くと座敷オヤジもそこにいた。
「それが学校に行ったということは・・・」おばさんは座敷オヤジに答えを求めた。
「不満のかたまりのような人間がたくさん学校に行ったということじゃ」
「どうすればいいの?」
ぼくは座敷オヤジに聞くというよりは、ポン吉に聞いた。だって知らせに来たというのは何かをしてほしいからじゃないか?
「あのね、ママがね、学校のとなりのデイケアでお掃除の仕事してるんだけどね、まだ帰ってこないの」
それが言いたかったんだ。ママが仕事で遅くなることは、たびたびあるけれど、怪しげな人型風船が学校に集まってきているので、何か起こったんじゃないかと心配になった、というのだ。
ポン吉の不安がぼくの胸にもどっと押し寄せてきた。
「おばさん!」
「わかった」
おばさんはリビングに取って返して告げた。
「みんなごめん、今日はおひらき。ちょっと、わたし、この子とデイケアまで行ってくる」
「ぼくも行くよ。ねえ、ママいいでしょう?」
「え?ああ、いいわ。おばさんと一緒なら大丈夫でしょう」
「ありがとう」
ぼくとおばさんは外出の用意をするために一度2階にあがった。再びリビングに戻った時は床の間の掛け軸は花鳥風月に戻っていたが、今はそれを問題にする人なんかいなかった。
リビングは帰り支度をする人でごったがえしていた。
ママがインターホンに答え、ぼくは玄関に走った。
玄関を開けるとポン吉が飛び込んできた。
「ああ、いらっしゃい。さあ、あがって。今日はぼくのクラスメートもいっぱい来ているから、きみもどうぞ」
しかしポン吉はまごまごしたままだった。
「あれ、どうしたの?さあ、遠慮をしないで」
ポン吉は何かを言いたそうだった。どう話していいかまごついていた。
「あのね、おにいちゃん、あのね、ぼくね」
「うんうん」
「あのね、見たんだ」
「なにを?」
「えっとね、あのね、白いやつ。人の形をした風船みたいなの、たくさん。それでね、みんな学校のほうに行ったの」
ぼくではよくわからなかった。しかし、学校のほうでなにかがあるらしいということはわかった。
「おばさん!」
ぼくはポン吉を家にあがらせ、リビングのドアの外からおばさんを呼んだ。
「おばさん、ちょっと来て!」
おばさんが来た。
ポン吉はまた繰り返す。
「あのね、人の形をした風船みたいなのがたくさん、学校のほうに行った」
「あまのじゃくの屁じゃな」
気付くと座敷オヤジもそこにいた。
「それが学校に行ったということは・・・」おばさんは座敷オヤジに答えを求めた。
「不満のかたまりのような人間がたくさん学校に行ったということじゃ」
「どうすればいいの?」
ぼくは座敷オヤジに聞くというよりは、ポン吉に聞いた。だって知らせに来たというのは何かをしてほしいからじゃないか?
「あのね、ママがね、学校のとなりのデイケアでお掃除の仕事してるんだけどね、まだ帰ってこないの」
それが言いたかったんだ。ママが仕事で遅くなることは、たびたびあるけれど、怪しげな人型風船が学校に集まってきているので、何か起こったんじゃないかと心配になった、というのだ。
ポン吉の不安がぼくの胸にもどっと押し寄せてきた。
「おばさん!」
「わかった」
おばさんはリビングに取って返して告げた。
「みんなごめん、今日はおひらき。ちょっと、わたし、この子とデイケアまで行ってくる」
「ぼくも行くよ。ねえ、ママいいでしょう?」
「え?ああ、いいわ。おばさんと一緒なら大丈夫でしょう」
「ありがとう」
ぼくとおばさんは外出の用意をするために一度2階にあがった。再びリビングに戻った時は床の間の掛け軸は花鳥風月に戻っていたが、今はそれを問題にする人なんかいなかった。
リビングは帰り支度をする人でごったがえしていた。
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