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40.運動会当日の100メートル走
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運動会当日。ゲンガクはふてくされて来賓のいるテントの足あたりにたたずんでいた。
100メートル走の時間が来た。100メートル走は背が低い順から走る。ぼくの組は一番最初にスタートラインに立った。
(落ち着け。びりでもともと)ぼくは自分に言い聞かせた。パーンというピストルの音とともに飛び出した。(ぼくは速い、ぼくは速い)と心の中で思い続けた。風を切る感覚が心地よかった。
走り終わると、2番の旗を持った体育係が近づいてきてぼくの腕をとった。6年生が走るときは5年生の体育係が誘導係になる。2番の旗を持った5年生の女の子のゼッケンには「やじま」という名前が書かれていた。(あ、ヤッチの妹だ)とぼくは思いながら連れて行かれた。
ぼくはヤッチの着順も大いに気になった。ヤッチが走る時、ぼくは思わず立ち上がって大声で声援をおくった。ヤッチが2着でゴールインするのを見届けると、ぼくは小躍りして喜んだ。ヤッチの妹が兄貴を迎えに行く。ヤッチの妹も嬉しそうだ。妹がヤッチの腕にしがみついている。ヤッチは照れてその腕を振りほどいた。ぼくは笑ってしまった。ヤッチがぼくの後ろの方にやってきたとき、ぼくはまた立ち上がってヤッチとハイタッチした。
100メートル走が終わるとぼくたちは朝礼台に進み出て表彰を受けた。
ふと、来賓席にたたずんでいたゲンガクを見ると、ものすごい形相をしてこちらをにらんでいた。ゲンガクはやおらテントの足を掴むとゆすりだした。
突風が吹いた。
あちこちで物が吹き飛ばされ、小旗などは倒された。校長先生は朝礼台の上でマイクが倒れないようしっかりと掴みながらしばらく立ちすくんでいた。テントが10センチばかり浮き上がる。悲鳴が上がった。
が、テントのそばにいた先生やPTAがテントの脚をしっかり持って突風をやり過ごした。
気がつくと、ゲンガクのいる方と反対側の脚に学校座敷オヤジの姿が見えた。
このため、運動会はしばらく中断した。ぼくたちはそのまま待機。先生方は多分、気象庁に問い合わせたり、このまま続行するかどうか協議をしているのだろう。
その間、テント下でもゲンガクと学校座敷オヤジの協議が行われることになったみたいだ。風が収まると、学校座敷オヤジはゲンガクのもとに近づき、なにやらやり取りを始めた。ゲンガクがいきり立っているのが遠目にも見て取れた。
おや?その間テントの脚を学校座敷オヤジに代わって守っているのは誰だろう?なんか見覚えのある三つの目・・・。もしやあれは・・・三つ目だけではない。あいつら、運動会だからってPTAみたいにボランティアにでも来たんだろうか。みんなしてゲンガクに無言の圧力を加えている。そして、その圧力のせいか、やがてゲンガクはプイっとどこかにいってしまった。そして学校座敷オヤジ他、三つ目たちの姿も見えなくなった。
こちらの世界でも協議がまとまったようだ。先ほどの突風は局地的なものだったらしく、被害もなかったことから運動会が続行されることになった。
ぼくたち表彰組みも行進を始め、退場ゲートから退場した。
外では案の定ママが待ち構えていた。ママはぼくを見つけると人目もはばからず抱きついてきた。ぼくはちょっと恥ずかしかったけれど、今日のは正真正銘、ぼくの手柄だったからママの喜びを素直に受け止めた。
ぼくが出場する全種目が終わったので、ママはこれで帰ると言う。見送ろうと校門に向かう途中でおばさんにも出合った。おばさんも来てくれていたんだ。おばさんの後ろには三つ目入道をはじめ、おなじみの面々が付き従っていた。やっぱり先ほどのテント下にいたのはこいつらだったのか。
「やったじゃん!」
おばさんも今回は手放しで喜んでくれた。
ママとおばさんが桜の木陰から出て陽の当たる歩道に出ると、お化けの面々の姿は見えなくなった。
あれ、待てよ、先ほどの面々のなかに、オキビキとアマノジャクがいたんじゃなかったか?
100メートル走の時間が来た。100メートル走は背が低い順から走る。ぼくの組は一番最初にスタートラインに立った。
(落ち着け。びりでもともと)ぼくは自分に言い聞かせた。パーンというピストルの音とともに飛び出した。(ぼくは速い、ぼくは速い)と心の中で思い続けた。風を切る感覚が心地よかった。
走り終わると、2番の旗を持った体育係が近づいてきてぼくの腕をとった。6年生が走るときは5年生の体育係が誘導係になる。2番の旗を持った5年生の女の子のゼッケンには「やじま」という名前が書かれていた。(あ、ヤッチの妹だ)とぼくは思いながら連れて行かれた。
ぼくはヤッチの着順も大いに気になった。ヤッチが走る時、ぼくは思わず立ち上がって大声で声援をおくった。ヤッチが2着でゴールインするのを見届けると、ぼくは小躍りして喜んだ。ヤッチの妹が兄貴を迎えに行く。ヤッチの妹も嬉しそうだ。妹がヤッチの腕にしがみついている。ヤッチは照れてその腕を振りほどいた。ぼくは笑ってしまった。ヤッチがぼくの後ろの方にやってきたとき、ぼくはまた立ち上がってヤッチとハイタッチした。
100メートル走が終わるとぼくたちは朝礼台に進み出て表彰を受けた。
ふと、来賓席にたたずんでいたゲンガクを見ると、ものすごい形相をしてこちらをにらんでいた。ゲンガクはやおらテントの足を掴むとゆすりだした。
突風が吹いた。
あちこちで物が吹き飛ばされ、小旗などは倒された。校長先生は朝礼台の上でマイクが倒れないようしっかりと掴みながらしばらく立ちすくんでいた。テントが10センチばかり浮き上がる。悲鳴が上がった。
が、テントのそばにいた先生やPTAがテントの脚をしっかり持って突風をやり過ごした。
気がつくと、ゲンガクのいる方と反対側の脚に学校座敷オヤジの姿が見えた。
このため、運動会はしばらく中断した。ぼくたちはそのまま待機。先生方は多分、気象庁に問い合わせたり、このまま続行するかどうか協議をしているのだろう。
その間、テント下でもゲンガクと学校座敷オヤジの協議が行われることになったみたいだ。風が収まると、学校座敷オヤジはゲンガクのもとに近づき、なにやらやり取りを始めた。ゲンガクがいきり立っているのが遠目にも見て取れた。
おや?その間テントの脚を学校座敷オヤジに代わって守っているのは誰だろう?なんか見覚えのある三つの目・・・。もしやあれは・・・三つ目だけではない。あいつら、運動会だからってPTAみたいにボランティアにでも来たんだろうか。みんなしてゲンガクに無言の圧力を加えている。そして、その圧力のせいか、やがてゲンガクはプイっとどこかにいってしまった。そして学校座敷オヤジ他、三つ目たちの姿も見えなくなった。
こちらの世界でも協議がまとまったようだ。先ほどの突風は局地的なものだったらしく、被害もなかったことから運動会が続行されることになった。
ぼくたち表彰組みも行進を始め、退場ゲートから退場した。
外では案の定ママが待ち構えていた。ママはぼくを見つけると人目もはばからず抱きついてきた。ぼくはちょっと恥ずかしかったけれど、今日のは正真正銘、ぼくの手柄だったからママの喜びを素直に受け止めた。
ぼくが出場する全種目が終わったので、ママはこれで帰ると言う。見送ろうと校門に向かう途中でおばさんにも出合った。おばさんも来てくれていたんだ。おばさんの後ろには三つ目入道をはじめ、おなじみの面々が付き従っていた。やっぱり先ほどのテント下にいたのはこいつらだったのか。
「やったじゃん!」
おばさんも今回は手放しで喜んでくれた。
ママとおばさんが桜の木陰から出て陽の当たる歩道に出ると、お化けの面々の姿は見えなくなった。
あれ、待てよ、先ほどの面々のなかに、オキビキとアマノジャクがいたんじゃなかったか?
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