本物のチート能力を手に入れたけど、使い方が分からないのだが

夜兎

文字の大きさ
上 下
5 / 7

なんか知らんが、初級魔法みたいな名前してめっちゃ強そうな魔法が使えたんだが

しおりを挟む
 成り行きで──いや成り行きもおかしな感じでマーラと戦うこととなった訳だが、ほんとになんでこうなったんだ?

「なあ、なんで嘘なんかついてた? 理由次第じゃ、俺たちが戦う理由なんてないだろ」
「君が戦うって言ったんじゃない。別に、隠した方が都合がいいと思っただけ。嘘なんてつきたい訳じゃないよ、私だって」

 別に戦うなんて言った覚えはないんだが。どういう勘違いからそうなった? まあ言ってても仕方ないか……。

「嘘つくつもりがないなら、本当のことを話してくれ。助けになれるなら俺だって助けたいんだ」
「……もういい。勝負をつけましょ」
「おい!」

 マーラは腰に下げていた短剣を取り出して、胸元で構えた。……武器あるのかよ。
 しかし、聞く耳も持ってくれそうにないし、戦うしかないのだろうか。全く勝てる気がしないんだが。

「ん?」

 視界に映る互いのHPがふと気になった。俺のHPは、最初から少し上がっただけの、27。これはいい。問題はマーラの方だ。
 さっきステータスを確認した時は100くらいあったはずだ。俺とどれだけレベル差あるんだよと、絶望させられたからな。
 だが、戦闘に入ってからの彼女のHPは20しかない。これはどういうことだ?

 瀕死までのHP……にしては、二割と言うのは少々少なすぎる。
 仮に、意図的に手加減しているとしたらどうだ? ゲームならよくある、強キャラが序盤で出てきた時にステータスが低すぎる問題だ。
 これなら納得できるが……何故今手加減する? 何か意味があるのか?

「本気でこないのか?」

 完全に戦闘が始まった現状、彼女との会話が成立するのかは怪しいが……限りなくゲームに近い世界観ではあっても、ゲームの中じゃないなら会話くらいできるよな?

「……そのステータス見るスキル、気味が悪いね。そんなことまで分かるの? まあ、特に深い理由は無いけど。君相手に本気を出すまでも無いってだけ」
「さようですか」

 まあ間違ってないんだろうが、なんか尺に触るな。
 しかし会話してても埒が開きそうに無いな。どうする、本当に戦うのか?
 弱点をついたとは言え、HP35のスライムが一撃だったんだ。俺の攻撃力でも、今みえている彼女のHPなら削り切れるんじゃ無いか?
 しかし、その逆もまたしかり。もし倒せなければこっちも一撃でやられる可能性が大いにあるんだよな……。
 ──いや、待てよ?

「弱点、か」
「なに? 君程度がつけるほどの弱点なんて、私は持ち合わせていないよ」

 んん~~……やっぱなんかムカつくんだよなぁぁ?
 
「それはこっちで決めさせてもらう」

 スライムの時は確かこの辺に……ああ、あった!

『通常の人間と同じ。また、自分の目的を知る者の援助』

 ……また、よく分からない事が書かれているな。なんだよ、目的を知る者の援助、て。
 自分から目的言わないのに、どうやってその目的を知るんだよ。

『マーラの目的──病床につく妹の治療。そのために必要な薬の材料となる、スライムの核の入手』

 そんなことまで分かるのかよ。ほんと便利だな全解析フルアナライズ
 病床の妹、か。ベタだな。だが、マーラが悪い人ではなさそうだと言うことは分かった。
 しかし、これじゃ振り出しに戻っただけだ。肝心の核の入手法が分からないからな……。

 そういえば、せっかく教わったのに試してなかったな。

「コマンド入力、魔法」

 彼女の話が正しいなら、これで何かが出てくるらしいが……。

「あんなに私のこと疑っておいて、それ信じるんだ?」
「念のためだ。……やっぱなにも出ないじゃないか」
「私だって使えなかったっていったでしょ? あの人に似てるから、君ならもしかして? て思って話しただけだし」

 教えてもらったってのも本当なのか? しかし、実際やってみて使えないなら、やっぱり騙されてるとしか……。

「しかしか」

 やっぱりゲーム的すぎるよな……て、ん?

「なんだこれ」

 何故か目の前にウィンドウ画面のようなものが現れた。

『コマンドを入力してください』

 短い文章だが、もしこれがマーラの言ってた画面で、教わった言葉が真実だったなら──

「入力」

 画面がほぼ空白になり、文字入力のような画面に……

「魔法」
『魔法のコマンドを解放しました。フラグの成立していた魔法の使用が可能になります』
「……まじか」

 魔法のタグが書かれたウィンドウに、火球ファイアボールだけが表示されている。
 集中して見てみると、説明のようなものが表示された。

『対象、あるいは照準を定め、火球と唱えると発動する。目標物、あるいは地点に向けて、込めたMPに応じた大きさの炎の球を放つ』
 
 まあ、大体予想通りだな。

 ふと、マーラの方へと視線を向けると、かなり不思議そうにこちらを眺めている様子が見える。
 そして何故か、彼女の足元にFPSなんかでよく見る、レティクルのようなものと、その上に表示された火球の文字……。
 

「撃てってことか?」

 これも全解析が見せているのか。だとしたら何か意味があるんだろうが……彼女に直接当てる訳でもなく、なんの効果があるんだ?

「んー……まあ、最悪やり直せるんだよな?」

 信じるからな、ロード機能と全解析よ。
 
「──火球!」

 MPの込め方とやらは知らないから、とりあえず適当に唱えてみる。
 目の前に火の玉が現れ、俺の頭と同じくらいの大きさまで成長すると、周囲に陽炎かげろうを残していた。
 少しの時間を置き、俺の近くから放たれた火球はさっきのレティクルの下へと真っ直ぐ飛んで行ったのである。

「名前は初期魔法みたいなくせして、すごい威力だな」

 どぉん‼︎  と鳴り響く轟音と共に、驚いた表情のマーラを爆煙が包み込んだのだ。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

【完結】妃が毒を盛っている。

井上 佳
ファンタジー
2年前から病床に臥しているハイディルベルクの王には、息子が2人いる。 王妃フリーデの息子で第一王子のジークムント。 側妃ガブリエレの息子で第二王子のハルトヴィヒ。 いま王が崩御するようなことがあれば、第一王子が玉座につくことになるのは間違いないだろう。 貴族が集まって出る一番の話題は、王の後継者を推測することだった―― 見舞いに来たエルメンヒルデ・シュティルナー侯爵令嬢。 「エルメンヒルデか……。」 「はい。お側に寄っても?」 「ああ、おいで。」 彼女の行動が、出会いが、全てを解決に導く――。 この優しい王の、原因不明の病気とはいったい……? ※オリジナルファンタジー第1作目カムバックイェイ!! ※妖精王チートですので細かいことは気にしない。 ※隣国の王子はテンプレですよね。 ※イチオシは護衛たちとの気安いやり取り ※最後のほうにざまぁがあるようなないような ※敬語尊敬語滅茶苦茶御免!(なさい) ※他サイトでは佳(ケイ)+苗字で掲載中 ※完結保証……保障と保証がわからない! 2022.11.26 18:30 完結しました。 お付き合いいただきありがとうございました!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...