砂姫の冒険記録──白き魔女と黒の使い魔は砂姫のために──

夜兎

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入館

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「──だから、本当に空飛んだんだってば!」
「はいはい。さすが黒龍様ですね」

 オネたちはすでに門の中へと入れたようです。
 先ほどのジンとの出来事を説明しているようですが、信用されていませんね。
 門をくぐってもすぐには図書館の中には入れないらしく、鳥車や刃物の類を預けてからの入館のようです。
 すでに預け終わった様子ですが、ハンナも含めた四人が歩く周辺にはジンの姿が見当たりませんね。どうしたのでしょう?

「やっぱり、蛇さんはだめだったね」
「──それ! 何が入館には問題ありませんが、なの? 結局ジンは中まで入れないとか可愛そう!」

 なるほど。おそらく鳥車らと共に預けることになったのでしょう。……まあ、普通の対応ですよね。

「仕方ないわ。大切な本も数多くあるはずですもの。何かあってからでは遅いものね」
「それはわかるけどさー……」

 オネの愚痴を聞いている内に、今度こそ本当の館内への入り口らしき扉が見えてきました。
 相変わらず、大きく頑丈そうな黒い扉です。

「やっとだよ。ジンがかわいそうだから、早く終わらせちゃお」
「そう簡単に済めばいいのだがな……」

 意味ありげな父親の声に、オネは怪訝そうに首を傾げながら扉を開きます。

「うわぁ──すごいなこれ……」
「中々骨が折れそうね。……宿泊などできる場所はあるのかしら?」

 入って早々視界に見えるのは、大量の人集り。外があれだけの行列なのですからまあ、こんなものでしょう。
 もちろん誰かが騒がしくしているわけでもないのですが、これだけ人が集まると、雑音が耳障りにすら感じる程ですね。

 そしてそれを凌駕するほどの書架。左を見ても右を見ても、正面どれほどまで奥を確認しても──上を見上げたところで、書架が並ぶ光景が見えない場所などありません。
 世界の書物が全て──あながち真実かも知れませんね。

「どうなってるの? 図書館にしてはうるさいけど……」
 
 ハンナも気にはしているみたいですが、目で見えないとこの光景は伝わらないことでしょう。

「えーっと、本がものすごーく、一杯ある……て感じかな?」
「へぇー」

 何も伝わっていませんね。まあ、仕方ないことだとは思いますが、もう少しどうにかならなかったのでしょうか……。
 そんな二人の様子をディゼルはただ眺めています。

「どうやら、地図があるようだな」

 一つの掲示板に向けて、父親が歩いて行きます。
 女性陣もついていくと、掲示板にはお知らせの類と、大雑把な種類毎の棚の配置が書かれていますね。
 その下には、同じように配置の記載された小さな紙が置いてあります。

 ディゼルはなにか思い悩んだ表情で地図を眺めており、オネは興味なさげに眺めていました。
 
「とりあえずは伝記や古書について調べた方がいいだろう。望みのものがあればいいのだが……」
「……そうね。でも、オネには少し難しいでしょう。──そうだ、オネとハンナは魔女のお話を読んできて頂戴。何かわかるかも知れないものね」

 そう二人に伝えながら、『伽話』と配置されている本棚を指差します。

「そんな子供向けの──」
「まだハンナは子供よ? それに、そういう本にだって、真実は書かれていたりするものだと思うわ」

 あまり納得のいかない様子の父親ですが、母は強し。好きにしてくれ、と言わんばかりにため息を溢します。
 
「それなら、私でも読めるかな。わかったよ!」
「ちゃんと、ハンナと読むのよ」
「でも私──」

 ディゼルはハンナの抗議を人差し指で塞ぎ、彼女に見えることのない笑顔を向けます。

「オネのことお願いね、ハンナ。ちゃんと調べてきてね」
 
 優しく掛けられた言葉にただ頷き返しました。

「じゃあいこ、ハンナ!」

 オネも笑顔を見せると、親子二手にわかれていきます。

「おねえちゃん、私ご本は読めないよ? おねえちゃん一人になっちゃう……」
「大丈夫だよハンナ。ちゃんと、二人で読むんだから一人じゃないし、ハンナも読めるの」

 オネの言葉を聞いても、やはりハンナの表情は晴れることはありません。
 自分が迷惑を掛けていると考えれば、気持ちも晴れないのでしょう。
 彼女の思いに反して、オネはむしろ上機嫌。難しい本を読まなくて済んだことを喜んでいるのか、ハンナと一緒であることを喜んでいるのか……両方ですかね。

「でも本当にすごいね。どこを見ても本棚、本棚……人もいっぱいだし。みんな何を読みに来るのかな」

 目的地へと歩きながら、周囲の様子を窺います。
 訪れている人間に統一性は無く、小さな子供から身なりの怪しい人間、目が見えているのか怪しい老人なども確認できます。
 あらゆる書物があるのだとすれば、目的は星の数ほどあるのでしょうね。

 ハンナも落ち着かない様子でオネと手を繋ぎ、彼女もまた力強く握り返しています。
 人混みでハンナと別れてしまえば、見つけるのは困難でしょうし、ハンナの不安は計り知れませんからね。

「ついた。ここだね」

 高く並ぶ書架の内、特に背の低いものが並ぶ一角。
 子供ばかりが集まる、御伽話の本ばかりが揃えられた書架。
 そんな棚が十は並んでいますね。

「さて、魔女の本を探さないとだね」

 子供に紛れて目的の本を探すオネに、大した違和感を感じないのは何故なのでしょうか?
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