19 / 35
ボクと君の遊園地デート
しおりを挟む
昨日カナメとも話していたけれど、この遊園地はさほど大きくない。
正確には、遊園地としての区画はさほど大きくなく、簡易的な植物園や公園やらも、遊園地内に存在している。
今日のボクたちのプランは、遊園地からの植物園の散歩、公園でお昼を食べ、午後からまた遊園地。
小さいくせに、夜には花火も上がる贅沢な遊園地なんだ。
「先輩、最初は何に乗りましょうか」
「凪くんは、何か乗りたいものがあるのかい?」
小さいとは言え、アトラクション自体は十を超え、小さいからこそ、割とどのアトラクションも行列になってしまっている。
人気なジェットコースターなんかは、開演したばかりの今でも、かなりの行列だ。……みんな、もう少し遠出してくれてもいいんじゃないかい?
「自分、こう言った場所は初めてで……調べては見たんですが、どれも気になって良くわからなかったんですよね」
どれも楽しそうということかい? なんだか可愛らしい発言をしてくれる。
君はボクの母性を掻き立てて、一体なにを望むというんだ。
「なら、全部乗るつもりでいこうじゃないか。最初は気軽に、メリーゴーランドなんてどうだい?」
白馬が遊覧する良くあるものではなく、多少子供向けに作られた、いろんな動物をモチーフにしたメリーゴーランド。
列を見ても、やっぱり親子連れが多い印象だ。
「なんだか、ちょっと気恥ずかしいですね」
「カップルで乗るのも定番らしいから、恥ずかしがることも無いんじゃないかい?」
……自分で言っていて思ったけれど、「恋人だ」と発言するよりも、「カップルなんだ」と発言する方が恥ずかしいのはなんでだろう。唇がすぐに乾いてきちゃうじゃないか。
カナメのアドバイス通り、リップを持参してきたのは正解だったね。
「先輩が良ければ自分は大丈夫ですよ」
「なら乗ってみようか。ボクも子供の頃以来だから、ちょっと懐かしい感じだね」
列はそれなりに並んでいるけれど、一回に乗れる人数が多いのと、並んでる中でも子供しか乗らない家族もいる。
割とすぐに順番が回ってきたんだ。
「これは二人乗り用みたいだよ、凪くん。一緒にどうだい?」
「一緒にですか。えっと……とても楽しそう、ですね」
カボチャの馬車のような乗り物。子供たちは率先して動物の形をしたものばかりに乗るから、割と人気がないらしい。女の子なら乗りたがりそうなものなんだけど、そうでもないのかな?
凪くんの返事が、少し動揺していたように聞こえたのはなんでだろう? やっぱり恥ずかしいのかな。ちょっと可愛すぎるから、男の子は気にしちゃうのかな?
考えるている内に、凪くんの方から馬車に乗り込み、手を差し出してくれる。なんだかんだ言って乗り気だなぁ。
……なんか、こうして手を差し出されると、王子様にエスコートされるお姫様みたいだね。
服装も性格も、ボクをお姫様とは到底呼ばないだろうけど。
「ありがとう、凪くん」
差し出された手は暖かく、心が落ち着くようだ。
……あれ、こんな風に彼の手を握るのは初めてじゃないだろうか。
確かに、前回の映画の後は凪くんに補助してもらってはいたけれど、あの時は泣いていてあまり気にはならなかった。
けど、こうしてお互い視線を合わせて手を握るなんて──
「先輩? 早く乗らないと迷惑になってしまいますよ」
そう言われ周囲に視線を向けると、他の動物に乗った子供たちから、非難の視線のようなものを向けられている……ボクはなにをやっているんだ。
「ご、ごめんよ」
急いで馬車に乗り込むと、メルヘンチックな音楽と共に、乗り物がゆらゆらと動き出す。
せっかくのメリーゴーランドだというのに、ボクはただ俯いて、さっきまで凪くんの手をにぎっていた、自分の右手にばかり視線を向けてしまっている……。
「程よい揺れ加減に、色んな景色を楽しめますね。意外と面白いかもしれません」
なんか変な感想を述べているじゃないか。意識しているのはボクだけなのかい? こうして触れ合うことは、君にとって当然のことなのかい?
多分真っ赤になっている顔を見られたくないから顔は上げられないけれど、横目に凪くんに視線を向ける。
ボクの視線に気づいたのか、優しく微笑んでくれるその顔は、若干赤くなっているようにも見える。
なんだ、君もちょっとは意識してくれているじゃないか! なんだか、さらに恥ずかしくなってしまったよ……もう景色なんて見られない。
「そう、だね」
ただひたすらに君の意見に同意することしか、今のボクにはできそうにないんだ。ごめんよ、凪くん。
頭が沸騰から冷めるよりはやく、可愛い音楽は終わり、メリーゴーランドの終了を知らせてくれる。
さっきの二の舞にならないよう、体だけはなんとか動かして、アトラクションを後にした。
凪くんはボクの様子を気にかけてくれているけれど、君のその優しさは更にボクの体温を上げていくんだ。今はそっとしておいてくれ!
正確には、遊園地としての区画はさほど大きくなく、簡易的な植物園や公園やらも、遊園地内に存在している。
今日のボクたちのプランは、遊園地からの植物園の散歩、公園でお昼を食べ、午後からまた遊園地。
小さいくせに、夜には花火も上がる贅沢な遊園地なんだ。
「先輩、最初は何に乗りましょうか」
「凪くんは、何か乗りたいものがあるのかい?」
小さいとは言え、アトラクション自体は十を超え、小さいからこそ、割とどのアトラクションも行列になってしまっている。
人気なジェットコースターなんかは、開演したばかりの今でも、かなりの行列だ。……みんな、もう少し遠出してくれてもいいんじゃないかい?
「自分、こう言った場所は初めてで……調べては見たんですが、どれも気になって良くわからなかったんですよね」
どれも楽しそうということかい? なんだか可愛らしい発言をしてくれる。
君はボクの母性を掻き立てて、一体なにを望むというんだ。
「なら、全部乗るつもりでいこうじゃないか。最初は気軽に、メリーゴーランドなんてどうだい?」
白馬が遊覧する良くあるものではなく、多少子供向けに作られた、いろんな動物をモチーフにしたメリーゴーランド。
列を見ても、やっぱり親子連れが多い印象だ。
「なんだか、ちょっと気恥ずかしいですね」
「カップルで乗るのも定番らしいから、恥ずかしがることも無いんじゃないかい?」
……自分で言っていて思ったけれど、「恋人だ」と発言するよりも、「カップルなんだ」と発言する方が恥ずかしいのはなんでだろう。唇がすぐに乾いてきちゃうじゃないか。
カナメのアドバイス通り、リップを持参してきたのは正解だったね。
「先輩が良ければ自分は大丈夫ですよ」
「なら乗ってみようか。ボクも子供の頃以来だから、ちょっと懐かしい感じだね」
列はそれなりに並んでいるけれど、一回に乗れる人数が多いのと、並んでる中でも子供しか乗らない家族もいる。
割とすぐに順番が回ってきたんだ。
「これは二人乗り用みたいだよ、凪くん。一緒にどうだい?」
「一緒にですか。えっと……とても楽しそう、ですね」
カボチャの馬車のような乗り物。子供たちは率先して動物の形をしたものばかりに乗るから、割と人気がないらしい。女の子なら乗りたがりそうなものなんだけど、そうでもないのかな?
凪くんの返事が、少し動揺していたように聞こえたのはなんでだろう? やっぱり恥ずかしいのかな。ちょっと可愛すぎるから、男の子は気にしちゃうのかな?
考えるている内に、凪くんの方から馬車に乗り込み、手を差し出してくれる。なんだかんだ言って乗り気だなぁ。
……なんか、こうして手を差し出されると、王子様にエスコートされるお姫様みたいだね。
服装も性格も、ボクをお姫様とは到底呼ばないだろうけど。
「ありがとう、凪くん」
差し出された手は暖かく、心が落ち着くようだ。
……あれ、こんな風に彼の手を握るのは初めてじゃないだろうか。
確かに、前回の映画の後は凪くんに補助してもらってはいたけれど、あの時は泣いていてあまり気にはならなかった。
けど、こうしてお互い視線を合わせて手を握るなんて──
「先輩? 早く乗らないと迷惑になってしまいますよ」
そう言われ周囲に視線を向けると、他の動物に乗った子供たちから、非難の視線のようなものを向けられている……ボクはなにをやっているんだ。
「ご、ごめんよ」
急いで馬車に乗り込むと、メルヘンチックな音楽と共に、乗り物がゆらゆらと動き出す。
せっかくのメリーゴーランドだというのに、ボクはただ俯いて、さっきまで凪くんの手をにぎっていた、自分の右手にばかり視線を向けてしまっている……。
「程よい揺れ加減に、色んな景色を楽しめますね。意外と面白いかもしれません」
なんか変な感想を述べているじゃないか。意識しているのはボクだけなのかい? こうして触れ合うことは、君にとって当然のことなのかい?
多分真っ赤になっている顔を見られたくないから顔は上げられないけれど、横目に凪くんに視線を向ける。
ボクの視線に気づいたのか、優しく微笑んでくれるその顔は、若干赤くなっているようにも見える。
なんだ、君もちょっとは意識してくれているじゃないか! なんだか、さらに恥ずかしくなってしまったよ……もう景色なんて見られない。
「そう、だね」
ただひたすらに君の意見に同意することしか、今のボクにはできそうにないんだ。ごめんよ、凪くん。
頭が沸騰から冷めるよりはやく、可愛い音楽は終わり、メリーゴーランドの終了を知らせてくれる。
さっきの二の舞にならないよう、体だけはなんとか動かして、アトラクションを後にした。
凪くんはボクの様子を気にかけてくれているけれど、君のその優しさは更にボクの体温を上げていくんだ。今はそっとしておいてくれ!
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
会社の後輩が諦めてくれません
碧井夢夏
恋愛
満員電車で助けた就活生が会社まで追いかけてきた。
彼女、赤堀結は恩返しをするために入社した鶴だと言った。
亀じゃなくて良かったな・・
と思ったのは、松味食品の営業部エース、茶谷吾郎。
結は吾郎が何度振っても諦めない。
むしろ、変に条件を出してくる。
誰に対しても失礼な男と、彼のことが大好きな彼女のラブコメディ。
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定


家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる