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ボクの初恋?
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「本当に、その気持ちがなんなのか知りたいんだよね、エリー?」
授業も終わり、教室にはまばらなクラスメイトだけ。
充も帰ってしまい、カナメはボクの前の席を借りて、こちらに向かって座っている。
恋を知るためのおまじない。今日一日、ボクの楽しみだった時間だ。
「そうだよ。ボクは恋というものを知りたい。君がそれを教えてくれるといったんじゃないか。今日一日は、この時間がとても楽しみで、授業はあまり身に入らなかったよ」
今朝もそうだったけど、カナメが言い出したことなのに、なんで君がため息をつくんだい? 不思議だよ。
「分かりました。……それじゃ、胸に手を当てて、目を閉じて」
カナメに言われた通りに胸に手を当て、目を閉じる。
こうしていると、楽しみにしていたこともあって、胸の鼓動が早くなっているのが手の先から伝わってくるようだ。
「そのまま、凪くんのことを考えてみて」
凪くんのこと……。
まだお付き合いしてから一週間も経っていない。
それでも、ボクなりに彼のことは分かっているつもりだ。
とても気の利く男の子。顔はボクの好みかと言われてもわからないけれど、真剣にこちらを見つめながら考えてくれるその仕草は、こうして思い浮かべるだけでもドキドキしてしまう。
何故か彼はボクのことをよく分かっている。ボクがどうして欲しいかも……この前は恥ずかしくて、せっかくのエスコートにもうまく応えてあげられなかった。自分が情けないな。
凪くんは、とても素晴らしい男性だよ。
目を開けると、カナメが目を背けて体を震わせている……?
「どうしたんだい、カナメ」
「お、終わったの? どうだった?」
「? そうだね。一緒にいることを考えたら嬉しくて、一緒にいられないことを考えたらとても寂しい気持ちになったよ。でも、今はなんとなく幸せな気分で、少し身体が熱い感じさ」
なんでカナメが顔を赤くするんだい? こんなことを言っていて恥ずかしいのはボクじゃないか!
「うん、エリーの気持ちはよーくわかった。じゃあさ、進藤のことも同じように考えてみてよ」
「充のことをかい? 今は凪くんのことだと思っていたけれど」
「いいから! 比較って大事だからさ、ね?」
まあ、その言い分は分かる。何かを考える時も、比較する対象があると、それもまた新しい考えにつながるからね。
カナメに言われた通りに、もう一度胸に手を当て目を閉じて、充のことを考える。
充は幼馴染。
昔から文句ばかりだけれど、ボクのことをしっかりと考えてくれているのは分かる。
なにを言っていても、いつもボクの相談に乗ってくれる。
少しだらしないところもあるけれど、ボクのことを考えてくれているときの表情はとてもかっこよくて、昔からその顔を見るのがたまらなく好きだった。
多少乱暴なところはあるけれど、あれが彼の照れ隠しみたいなものだと思うと、なんだか微笑ましく見えるんだ。
同い年、なんなら生まれはボクの方が早いくらいだけど、彼はいいお兄ちゃん、て感じ。
充は、一緒にいてとても落ち着く存在だ。
目を開けると、カナメが大きくため息をついていた。今度はどう言う感情なんだい?
「終わった?」
「うん。充のことを考えると、とても温かな気持ちになったよ。ほっこりとして、心が落ち着くんだ」
「そか。ま、そう言うことだよね」
一人納得してしまったけれど、ボクは何もわからなかったぞ。教えてはくれないのかい?
「相手のことを考えて、心がわくわくしたり、ドキドキしたり、幸せな気持ちになったり、辛くなったり。そんな矛盾ばかりが起こるのが、恋ってやつだと、あたしは思ってるんだよね。だから、エリーの凪くんへの気持ちは、恋なんだと思うよ」
「凪くんへのこの感情はやっぱり恋……?」
もしこれが恋とするなら──。
そう認識すると、さらに鼓動が早くなる。さっきよりもさらに身体が熱くなる。ボクは……。
「そう、なんだね。……それじゃ、充へのこの感情はなんなんだい?」
凪くんへの気持ちがそうなのだとしたら、充に対するこれはなんなのかな? 暖かくなるこの気持ちは一体?
「あーそれは、あれだ。家族を想う気持ち、みたいな? なんて言えばいいのかなぁ」
そっか。充はいいお兄ちゃん。彼のことも好きだけど、凪くんに向けるこの感情とはまた、違った〝好き〟なんだね。
カナメにしては珍しく、言葉を濁していたけれど、彼女にも分からないことがあるんだね。なんだか少し嬉しくなってしまったよ!
「そっか。カナメにも分からないんじゃ仕方ないね。ありがとう。凪くんと別れるのは絶対に嫌だけど、もしこのままお付き合いが続けられるなら、ボクは本当の恋を知ることができそうだ。がんばってみるよ」
これが恋。あぁ、凪くん。早く君に会いたいな。
「……どんまい進藤」
「充がどうかしたのかい?」
「あ、いや何でもないよ。頑張ってね、エリー!」
カナメにまで応援されてしまっては、加減は出来ないじゃないか。
早く君に伝えたいよ、この気持ち。
授業も終わり、教室にはまばらなクラスメイトだけ。
充も帰ってしまい、カナメはボクの前の席を借りて、こちらに向かって座っている。
恋を知るためのおまじない。今日一日、ボクの楽しみだった時間だ。
「そうだよ。ボクは恋というものを知りたい。君がそれを教えてくれるといったんじゃないか。今日一日は、この時間がとても楽しみで、授業はあまり身に入らなかったよ」
今朝もそうだったけど、カナメが言い出したことなのに、なんで君がため息をつくんだい? 不思議だよ。
「分かりました。……それじゃ、胸に手を当てて、目を閉じて」
カナメに言われた通りに胸に手を当て、目を閉じる。
こうしていると、楽しみにしていたこともあって、胸の鼓動が早くなっているのが手の先から伝わってくるようだ。
「そのまま、凪くんのことを考えてみて」
凪くんのこと……。
まだお付き合いしてから一週間も経っていない。
それでも、ボクなりに彼のことは分かっているつもりだ。
とても気の利く男の子。顔はボクの好みかと言われてもわからないけれど、真剣にこちらを見つめながら考えてくれるその仕草は、こうして思い浮かべるだけでもドキドキしてしまう。
何故か彼はボクのことをよく分かっている。ボクがどうして欲しいかも……この前は恥ずかしくて、せっかくのエスコートにもうまく応えてあげられなかった。自分が情けないな。
凪くんは、とても素晴らしい男性だよ。
目を開けると、カナメが目を背けて体を震わせている……?
「どうしたんだい、カナメ」
「お、終わったの? どうだった?」
「? そうだね。一緒にいることを考えたら嬉しくて、一緒にいられないことを考えたらとても寂しい気持ちになったよ。でも、今はなんとなく幸せな気分で、少し身体が熱い感じさ」
なんでカナメが顔を赤くするんだい? こんなことを言っていて恥ずかしいのはボクじゃないか!
「うん、エリーの気持ちはよーくわかった。じゃあさ、進藤のことも同じように考えてみてよ」
「充のことをかい? 今は凪くんのことだと思っていたけれど」
「いいから! 比較って大事だからさ、ね?」
まあ、その言い分は分かる。何かを考える時も、比較する対象があると、それもまた新しい考えにつながるからね。
カナメに言われた通りに、もう一度胸に手を当て目を閉じて、充のことを考える。
充は幼馴染。
昔から文句ばかりだけれど、ボクのことをしっかりと考えてくれているのは分かる。
なにを言っていても、いつもボクの相談に乗ってくれる。
少しだらしないところもあるけれど、ボクのことを考えてくれているときの表情はとてもかっこよくて、昔からその顔を見るのがたまらなく好きだった。
多少乱暴なところはあるけれど、あれが彼の照れ隠しみたいなものだと思うと、なんだか微笑ましく見えるんだ。
同い年、なんなら生まれはボクの方が早いくらいだけど、彼はいいお兄ちゃん、て感じ。
充は、一緒にいてとても落ち着く存在だ。
目を開けると、カナメが大きくため息をついていた。今度はどう言う感情なんだい?
「終わった?」
「うん。充のことを考えると、とても温かな気持ちになったよ。ほっこりとして、心が落ち着くんだ」
「そか。ま、そう言うことだよね」
一人納得してしまったけれど、ボクは何もわからなかったぞ。教えてはくれないのかい?
「相手のことを考えて、心がわくわくしたり、ドキドキしたり、幸せな気持ちになったり、辛くなったり。そんな矛盾ばかりが起こるのが、恋ってやつだと、あたしは思ってるんだよね。だから、エリーの凪くんへの気持ちは、恋なんだと思うよ」
「凪くんへのこの感情はやっぱり恋……?」
もしこれが恋とするなら──。
そう認識すると、さらに鼓動が早くなる。さっきよりもさらに身体が熱くなる。ボクは……。
「そう、なんだね。……それじゃ、充へのこの感情はなんなんだい?」
凪くんへの気持ちがそうなのだとしたら、充に対するこれはなんなのかな? 暖かくなるこの気持ちは一体?
「あーそれは、あれだ。家族を想う気持ち、みたいな? なんて言えばいいのかなぁ」
そっか。充はいいお兄ちゃん。彼のことも好きだけど、凪くんに向けるこの感情とはまた、違った〝好き〟なんだね。
カナメにしては珍しく、言葉を濁していたけれど、彼女にも分からないことがあるんだね。なんだか少し嬉しくなってしまったよ!
「そっか。カナメにも分からないんじゃ仕方ないね。ありがとう。凪くんと別れるのは絶対に嫌だけど、もしこのままお付き合いが続けられるなら、ボクは本当の恋を知ることができそうだ。がんばってみるよ」
これが恋。あぁ、凪くん。早く君に会いたいな。
「……どんまい進藤」
「充がどうかしたのかい?」
「あ、いや何でもないよ。頑張ってね、エリー!」
カナメにまで応援されてしまっては、加減は出来ないじゃないか。
早く君に伝えたいよ、この気持ち。
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