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ボクと彼との初デート
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「可笑しなとこは無いかな? あまり服とか気にしたことないからな」
本日は凪くんとの初デート!
お誘いのお願いをして、その日のうちに連絡が来たのは予想外だったよ。
彼の行動力には目を見張るものがあるね。
あまり気を張り過ぎてもどうかと思い、白のワンピースにボクの好きな色ナンバーワンな緑色のシュシュを右腕に飾らせてもらった。
黒猫のピン留めもつけてみたけれど、変だったりしないだろうか。
そして靴。慣れないハイヒールなんてものを履いてしまったけれど、これに関してはものすごく後悔している……。
だって、家からここまで歩いてきただけで足が痛い! 世の中のハイヒールを履く女の子たちは、どうやって履きならしているんだ! ボクにはたえられないぞ!
……彼の趣味なんて全く分からないから、お気に召してくれれば良いんだけどな。
「しかし、どうやらボクは少々気張り過ぎたらしい。約束の時間までまだ三十分もあるじゃないか」
まあ、特にやることもないので、それは良いんだけど。
彼が来るまでいつものように人間観察でもしていようか。
この銀時計の広間は、綺麗に輝く銀色の時計が目印の定番の待ち合わせスポット。
定番になるだけあって、カップルらしき二人組がちらほら。
男の子の方は、上辺だけに見える子も何人かいるのが辛い……彼女さんはボクと同じ道を歩まないでほしい。
ドレスアップが凄い子もいるけれど、少しソワソワしている。ふふ、今のボクと同じなのかもしれないな。お互い頑張ろう!
ラフな格好のカップルもいるな……なんだか和やかな雰囲気。付き合ってどれくらいなのだろう。ああいう仲はとても憧れる。
──どうしてしまったんだボクは。
別に、カップルしかいない訳じゃないのに、観察対象が全て男女二組ばかり!
うぅ、無意識に意識してしまっているんだろうか。こんなとこ、凪くんに見られたくないぞ。
「おはようございます、朱思先輩」
「おは──な、凪くん! お、おはよう!」
な、凪くんいつから! ボクの変な行動は見られていないだろうね!
「どうやら、待たせてしまったらしいですね。遅くなってすいません」
「べ、別に遅くなんてないさ! ボクが少し早く来すぎただけだから。むしろ早いくらいかい?」
広間に設置された時計を見ても、待ち合わせ時間である九時からは十五分も早い。彼も少しは緊張してくれているのかな?
「ええ、女性を待たせるのはどうかと思いまして……結果的に待たせてしまいましたが」
「だから気にしないでおくれ! ボクは待つことを苦とはしない質だからさ!」
あまり残念そうにしないでほしい。なんだか悪い事をした気分になってしまうじゃないか。
「そう言って頂けて助かります。……朱思先輩の私服、ですか?」
もういっそ触れて欲しくないと思っていたのに! 触れてくるんだね、凪くんよ。
「そ、そうさ! なにか可笑しいかい?」
「いえ、おかしくはないのですが……」
間延びする声に、なんだか少し表情が緩んできてるような……? まさか、笑われたりするんじゃないだろうね。そんなの、ボク立ち直れなくなってしまうよ。
「なんていうか、失礼を承知で言いますが、あまり似合っていないなぁ、と思いまして」
な、なな──なんて事を言うんだい? この子は!
「き、君は凄いな! まさか、そんなストレートに言われるとは思っても見なかったよ!」
しかもなんか嬉しそうだよ! どう言う事なんだい!
「あ、いや、すいません。怒らせるつもりは無かったんです」
「こんな頑張って服を選んできた女子に、その服似合いませんと言って怒らないと思ったのかい! いくらボクでも、悲しくなってしまうよ!」
彼はまともだと思っていたのに、とんだ地雷だよ! ボクはこんな気持ちでこれからデートに行かないといけないのかい?
「本当にごめんなさい! 朱思先輩はとても可愛らしいんです! ただそのなんとなく、貴女の趣味とは違うように感じたので……嫌な思いにさせてしまいましたよね? ごめんなさい……」
なんかすごい落ち込んでしまった! ボクが悪いみたいじゃないか!
「そりゃ、ボクの趣味じゃないよ、こんな服! でも、男の子はこう言う服が良いって言うじゃないか! だったら着るしかないだろう?」
ボクは一体なにに怒っているんだ。確かに、彼の発言は見過ごせない。
けれど、自分でも似合っていないことは分かっていたじゃないか! 彼は正直に言ってくれただけなのに、なんでこんなにも怒りがこみ上げてくるんだ……!
落ち着こう、落ち着くんだ、朱思 愛理《あいり》!
「……ふぅ。ごめんよ、凪くん。君の言い分ももっともだ。こんな不格好なボクだけど、まだデートしてくれるかい?」
時計は九時を指している。まさか、こんな長いこと怒りに溺れるなんて思わなかった。
「不格好なんてそんなこと……! 自分の言い方に問題がありました。本当にすみません! こちらここそ、こんな自分で大丈夫でしょうか?」
ボクが大人げなかったな。こんな風に頭を下げる男の子が、悪意ある発言をする訳がないじゃないか。
「ふふ。それじゃ、この話はお互い水に流そう。……それで、今日はどこに連れて行ってくれるんだい?」
まだ、気持ちを完全に整理できたわけでもないし、全身強張っているのが分かる。ボクは心の整理が下手くそだな。
「先輩の寛大なお心、感謝します。……今日はまず、映画鑑賞なんてどうかな、と思っていたのですが」
えいが? 映画かぁ。なんというか、この子はあれだな。
「凪くん、君はとってもチャレンジャーだね!」
「チャ、チャレンジャーですか? そんなつもりは自分でもないのですが……」
女の子との初デートで映画というのは、とてもチャレンジャーのすることなんだよ、凪くん。
本日は凪くんとの初デート!
お誘いのお願いをして、その日のうちに連絡が来たのは予想外だったよ。
彼の行動力には目を見張るものがあるね。
あまり気を張り過ぎてもどうかと思い、白のワンピースにボクの好きな色ナンバーワンな緑色のシュシュを右腕に飾らせてもらった。
黒猫のピン留めもつけてみたけれど、変だったりしないだろうか。
そして靴。慣れないハイヒールなんてものを履いてしまったけれど、これに関してはものすごく後悔している……。
だって、家からここまで歩いてきただけで足が痛い! 世の中のハイヒールを履く女の子たちは、どうやって履きならしているんだ! ボクにはたえられないぞ!
……彼の趣味なんて全く分からないから、お気に召してくれれば良いんだけどな。
「しかし、どうやらボクは少々気張り過ぎたらしい。約束の時間までまだ三十分もあるじゃないか」
まあ、特にやることもないので、それは良いんだけど。
彼が来るまでいつものように人間観察でもしていようか。
この銀時計の広間は、綺麗に輝く銀色の時計が目印の定番の待ち合わせスポット。
定番になるだけあって、カップルらしき二人組がちらほら。
男の子の方は、上辺だけに見える子も何人かいるのが辛い……彼女さんはボクと同じ道を歩まないでほしい。
ドレスアップが凄い子もいるけれど、少しソワソワしている。ふふ、今のボクと同じなのかもしれないな。お互い頑張ろう!
ラフな格好のカップルもいるな……なんだか和やかな雰囲気。付き合ってどれくらいなのだろう。ああいう仲はとても憧れる。
──どうしてしまったんだボクは。
別に、カップルしかいない訳じゃないのに、観察対象が全て男女二組ばかり!
うぅ、無意識に意識してしまっているんだろうか。こんなとこ、凪くんに見られたくないぞ。
「おはようございます、朱思先輩」
「おは──な、凪くん! お、おはよう!」
な、凪くんいつから! ボクの変な行動は見られていないだろうね!
「どうやら、待たせてしまったらしいですね。遅くなってすいません」
「べ、別に遅くなんてないさ! ボクが少し早く来すぎただけだから。むしろ早いくらいかい?」
広間に設置された時計を見ても、待ち合わせ時間である九時からは十五分も早い。彼も少しは緊張してくれているのかな?
「ええ、女性を待たせるのはどうかと思いまして……結果的に待たせてしまいましたが」
「だから気にしないでおくれ! ボクは待つことを苦とはしない質だからさ!」
あまり残念そうにしないでほしい。なんだか悪い事をした気分になってしまうじゃないか。
「そう言って頂けて助かります。……朱思先輩の私服、ですか?」
もういっそ触れて欲しくないと思っていたのに! 触れてくるんだね、凪くんよ。
「そ、そうさ! なにか可笑しいかい?」
「いえ、おかしくはないのですが……」
間延びする声に、なんだか少し表情が緩んできてるような……? まさか、笑われたりするんじゃないだろうね。そんなの、ボク立ち直れなくなってしまうよ。
「なんていうか、失礼を承知で言いますが、あまり似合っていないなぁ、と思いまして」
な、なな──なんて事を言うんだい? この子は!
「き、君は凄いな! まさか、そんなストレートに言われるとは思っても見なかったよ!」
しかもなんか嬉しそうだよ! どう言う事なんだい!
「あ、いや、すいません。怒らせるつもりは無かったんです」
「こんな頑張って服を選んできた女子に、その服似合いませんと言って怒らないと思ったのかい! いくらボクでも、悲しくなってしまうよ!」
彼はまともだと思っていたのに、とんだ地雷だよ! ボクはこんな気持ちでこれからデートに行かないといけないのかい?
「本当にごめんなさい! 朱思先輩はとても可愛らしいんです! ただそのなんとなく、貴女の趣味とは違うように感じたので……嫌な思いにさせてしまいましたよね? ごめんなさい……」
なんかすごい落ち込んでしまった! ボクが悪いみたいじゃないか!
「そりゃ、ボクの趣味じゃないよ、こんな服! でも、男の子はこう言う服が良いって言うじゃないか! だったら着るしかないだろう?」
ボクは一体なにに怒っているんだ。確かに、彼の発言は見過ごせない。
けれど、自分でも似合っていないことは分かっていたじゃないか! 彼は正直に言ってくれただけなのに、なんでこんなにも怒りがこみ上げてくるんだ……!
落ち着こう、落ち着くんだ、朱思 愛理《あいり》!
「……ふぅ。ごめんよ、凪くん。君の言い分ももっともだ。こんな不格好なボクだけど、まだデートしてくれるかい?」
時計は九時を指している。まさか、こんな長いこと怒りに溺れるなんて思わなかった。
「不格好なんてそんなこと……! 自分の言い方に問題がありました。本当にすみません! こちらここそ、こんな自分で大丈夫でしょうか?」
ボクが大人げなかったな。こんな風に頭を下げる男の子が、悪意ある発言をする訳がないじゃないか。
「ふふ。それじゃ、この話はお互い水に流そう。……それで、今日はどこに連れて行ってくれるんだい?」
まだ、気持ちを完全に整理できたわけでもないし、全身強張っているのが分かる。ボクは心の整理が下手くそだな。
「先輩の寛大なお心、感謝します。……今日はまず、映画鑑賞なんてどうかな、と思っていたのですが」
えいが? 映画かぁ。なんというか、この子はあれだな。
「凪くん、君はとってもチャレンジャーだね!」
「チャ、チャレンジャーですか? そんなつもりは自分でもないのですが……」
女の子との初デートで映画というのは、とてもチャレンジャーのすることなんだよ、凪くん。
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