髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ

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第4章

195.準備。

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入寮日から1週間後の今日は入学式だ。
おろしたての少しだけ大きい制服に袖を通し、今日からは髪を隠さない為、1週間お世話になった帽子をそっとしまう。

「ルル~準備できた~?」

俺は部屋から出て、リビングを通り、ルルの部屋へと向かいながら声を張る。

「ちょ、ちょっと待ってください…!まだ…」

ルルの部屋の扉を開ければ鏡の前でぴよぴよとはねる前髪を必死に直している所だった。
俺はそれを見てクスッと笑い手伝ってやることにした。

「可愛い寝癖だね」
「ちょっと、笑わないでください…!」
「手伝ってあげるから、ほら、屈んで?」
「…申し訳ありません。本来なら自分がお手伝いする立場なのに」
「気にしないで。それに僕達は主従関係よりも前に友達でしょ」
「うん…」

俺よりも背の高いルルは少し屈み、俺に手伝わせていることにしゅんとしていた。
俺はそんなルルの髪を生活魔法の応用〔ミスト〕で濡らしながら慰めるように髪をとかす。
ルルは基本敬語だが、時々砕けた口調で話してくれる。俺はそれが嬉しくて、もっと砕けた口調で話してくれるように接している。

ルルとはまだ1年ちょっとの付き合いだが、随分仲良くなったと思うし、随分打ち解けたと思っている。ルルは俺に仕えているという意識が高いようだが、友達と何度か言葉にしているためかできるだけ砕けた口調で話せる時を作るように努力してくれているようだった。
無理に口調を変えなくてもいいよと言えば、自分でそう思っているから、俺が嫌じゃないなら…と言ってくれた。心の距離が狭まったようで俺はそれが嬉しかった。

ルルはまるで俺の弟のような存在だなと思っていた時期もあったが、実際はルルの方がしっかりしていることが多い。
俺はどちらかと言えば子供らしさを演じているつもりだが、精神が肉体に引っ張られているのか素で子供っぽかったりもする。
その点ルルは言葉遣いはまるで大人のようだし、顔立ちもキリッとした無表情に近い表情を保っているため年齢よりも大人っぽく見える。言っても6歳なのでまだまだ子供らしいあどけなさはあるが。

そんなルルの髪のハネを綺麗に整え、未だ結ばれていないルルのネクタイを結んでやる。

ルルはネクタイで俺は紐をリボン結びしているだけだ。
首につけるものは選べて、ネクタイ、リボン、紐タイ、蝶ネクタイ、スカーフ…と、様々なものを選べる。俺はネクタイと紐タイ、リボンを選んでいて、今は顔立ち的にまだネクタイがなんとなく似合わないためリボンをつけている。
ルルはネクタイだけしか選んでおらず、俺と同じ歳のくせにネクタイが良く似合う。蝶ネクタイでも良かったが、キリッとした雰囲気がネクタイの方があうので、ルルはネクタイだ。

「よし!じゃ、これで準備終わり?」
「はい。お手伝いさせてしまい、申し訳ありませんでした…」
「いーのいーの!気にしないで!僕が好きでやってるからね」
「ですが…」
「じゃ、明日は僕のこのリボン、結んでくれる?」
「…!お任せ下さい!」

ルルに明日のおねがいをして、俺たちは部屋を後にした。















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