髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ

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第3章

180.ハーくんと敗北感。

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“父さん事件”があってから、父さんは以前にも増してベッタリしてくるようになった。ものすごい引っ付いてくる。俺を見つければ駆け寄ってきて抱き上げる。仕事に集中できなくなると俺を攫って膝の上に乗せてるんるんで仕事を片付ける。そしてそれを見たガイさんとライさんが羨んで仕事のペースが落ち、喧嘩になって、俺退散。これが最近の毎日の流れだ。

今日も今日とて父さん達の喧嘩から静かに逃げてきたところだ。

「坊ちゃん…?」
「あ、ルル!あそぼ!」
「…いいですよ。ただ、少しだけ待っていただけますか?これを干してくるように頼まれてしまって……だから……」
「じゃあいっしょにいこ!てつだうよ!」
「え?!い、いえいえいえ!ダメですよ!」
「いーじゃん!ほら、はやくいこ!」

俺はルルの持っているシーツ数枚の半分をもち、ルルの手を引いて歩き始める。後ろで何か言っているが気にしない。
決して前世で散々強制させられてた家事が恋しくなったとか久々にやって見たくなったとかではない。断じてない。こういう強引なお手伝いも子供らしさだ。うん。

そうして、庭の洗濯を干す所へ行くと、子供には届きそうにない位置に竿がかけられていた。

「「……」」
「ルル、これ、むりじゃない?」
「……と、とどきます!」
「いやいや、むりでしょどうかんがえても。このしごと、はじめてたのまれたの?」
「…はい。干すのくらいはできるかなと思って…場所は知っていたので了承しました…」
「……どうしよっか」

どう考えても届かない。2人で肩車しながらとかならギリギリ届きそうだが、危ない。アミュートの背中に立ってすればギリギリ届きそうだけど、それだと俺しか出来なくてルルが嫌がるだろう。

『僕が人型になれば出来るよ』
『はっ!その手があったかっっ!…ってダメじゃん。ここでは普通の狼設定なんだから』
『あ、そっか』

一瞬最善だと思ったアミュートの案だったが、ルルは普通の狼だと思っているし、それになにより人型になれることは父さん達にも報告していない。そんな状況で急に人型になれば絶対ややこしい。

「しかたないね。いっしょにあやまりにいこう!」
「え、いえ、私一人で行ってきますので、気にしないでください!」
「のー!」
「のー?」
「いくの!ほら、はやくいこ」

手を取りずんずんと歩き出したはいいが、誰に頼まれたのか知らないし、どこに行けばいいのかもわからず立ち止まり、ルルが背中にぶつかる。

「っ!……す、すみません!」
「んーん、おはな、だいじょーぶ?」
「大丈夫です」
「そっか、あのね、どっちにいけばいい?」
「え?あぁえっと…」
「あー!いたいた!ごめ~ん!ってあ…!」

どっちに行けばいいかルルに聞いていると、メイドさんが声をはりながら元気に走って来て、俺がシーツを持っているのを見るなり謝りながらそれを持った。

「あの…」
「あ、ハーくん、ごめんね、とどかなかったよね」
「はい…すみません」
「んーん、いいの!こっちこそごめんね!気づかなくて」
「いえ…」
「あとやっとくから、気にしないで!坊ちゃんと遊んできていいよ」
「はい、ありがとうございます。すみませんがよろしくお願いします」
「はーい!」

ハーくん…いいな…いや、俺はルルって呼んでるし!
それにしてもルルはしっかりしてるよな……俺は子供らしさ全開の振る舞いを心がけているとは言え、未だに発音も拙いし、精神年齢上なのにここまでしっかりした振る舞いをしていない。なんか少し敗北感が……











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