髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ

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第3章

177.“父さん”の意味。

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とりあえず談話室へ向かうのはやめて、俺の部屋に向かってもらう。もちろんケインの入ったリスくんは拾ってもらい、無事俺の腕の中にいる。

部屋に着いて、とりあえずソファーに向かい合って座る。
ケインには申し訳ないが黙っててもらい、アミュートは念話が使えるので会話に参加してもらうことにした。

「えっと…まず、その、リスくんはなんで動いてるんだ?」
『それから聞くんだ』
「だって、1番軽そうだ…」
「『なるほど…』」

混乱度の低そうだと、選ばれたリスくんの活動はどう説明すればいいのか少し迷う。

『リスくんは、ユキが毎日大切に抱えていたから動けるようになったんだよ。さっきの全力疾走は面白かったよね』
「……そ、そうか。目覚ましも喋るようになったしな……それで納得するしかないよな……」

そう。あの目覚ましくんはなんとお喋りができるようになったのだ。
俺がお昼寝していると、手を伸ばし優しく揺すりながら、起きて、と声をかけてくれる。そんな可愛い目覚ましくんは、今ではお昼寝時だけでなく朝も起こしてくれるようになった。マリエリがものすごく悔しがっていたけど、部屋にいる目覚ましくんは遅くてもマリエリがへやの扉をノックするタイミングで俺に声をかけたりするから、マリエリの完敗なのだ。
そんな前例があるからか、父さんは渋々受け入れる。

「走っていた理由は…なんだ」
「それは…」
『これから話すことと繋がるよ』
「そうか……」

父さんは俺の話を聞く体制になって、向き合ってくれる。
俺は早くなる鼓動を深呼吸して何とか落ち着かせる。

「えっとね……えっと………」
「記憶、戻ったのか?」
「ち、ちがうよ!もどって、ない……」
「じゃあ……」
「とうさまのこと……とうさんって、おじいたゃんたちみたいに、いえのときだけ、よんじゃ、だめ?」

どうして前に父さんと読んで欲しいと言われた時に呼ばなくて、父様と呼び続けていたのか、前世の話ができないため、どう説明すればいいか分からない。だから、家で呼ぶ時だけ、父さんと呼びたいと思った。おじいちゃん達のことも、家ではおじいちゃんだが、外で人に会う時はおじい様と呼ばないといけないらしい。だから、外では父様と呼ぶけど、家では…せっかく、呼べるようになったんだから……

「べつにいいけど、どうしてだ?」

普通に疑問に思ってだと思う。疑問に思っての質問だとは、分かってる。
わかってるけど、拒否されているような気がして、怖い。
大丈夫大丈夫。父さんって、読んでも気持ち悪くならなかったし、なんだかストンと胸の中に落ちたんだから、大丈夫。この人は、大丈夫。そんな怖がらなくて大丈夫。

『……』

『前にユキに、“父さん”と読んで欲しいって言ったでしょ?あの時、ユキ、気分が悪くなったんだよ。“父さん”って言葉に。その意味は、分かるよね?』
「………………あぁ」

見兼ねたアミュートが話してくれ、父様は真剣な顔をして、重い返事をした。

『だからね、ずっと“父様”って呼んで、平穏を保ってたんだよ。それがね、さっき、自然と“父さん”と心の中で呼んで、それに気付いて声に出した。気分が悪くならなかったんだって。前は“父さん”という言葉に、顔を青くさせてたのにね。』
「それは………つまり………」
『ユキがノアに本当の意味で心を開いたんじゃない?だよね、ユキ』
「…うん、たぶん。ぼくも、びっくりしたけど、ぜんぜん、いやなきぶんにならなかったし、かおがでてきても、はきけ、しなかったよ!」
「……っ………ユキ……」

父さんは、俺を抱きしめて号泣していた。か細い涙声で俺の名を呼び、“ありがとう”と言っていた。
そんなの、こっちこそ“ありがとう”だ。前世のあの人という父親像を上書きできたのだから。
この人はきっと何があっても俺に幻滅したりしない気がする。まだ、僅かに不安があるのは仕方がない。15年で培われ染み付いたイメージと価値観は3年じゃ完全に払拭することは出来ない。それでも、上書きができた。それは、俺にとってものすごく大きな一歩で成長だった。















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