髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ

文字の大きさ
上 下
172 / 218
第3章

172.ノア─簡単には…。

しおりを挟む
ユキの体調が心配で部屋へ行けば、顔色のあまり良くないユキが、こもってた理由を話すからおじいちゃん達も呼んできてと言ってきた。
普段なら、今度にしようと言っただろうが、ユキの表情や雰囲気から、そんなことは言えなかった。
正直、体調が良くなってからじゃダメなのか?とは思う。でも、今、このタイミングを逃せば、心の距離ができてしまうような、そんな気がした。

それから、両親を呼びに行き、ソファーに次々に腰かけていく。
本当はベッドの周りに行きたかったが、ソファーに座るように言われてしまっては仕方がなかった。

そこから、ユキは震えながら少し泣き、覚悟を決めたように話してくれた。要領の得ない流れだっが、一生懸命なユキの口から紡がれたのは酷く怒りを覚える内容だった。
おしりペンペンなんて可愛らしい響きをしているが、普通に暴力だった。
しかし、想像してしまったことでなかった為、良かったといえばよかったのだが、種類は違えど暴力を受けたことには変わりはない。

その事実に、俺の両親もいるというのにガイは素でキレていた。
その様子が怖かったのか、ユキは泣き叫ぶようにしてさっきよりも詳細な内容を話した。
ユキがこんなにも感情を出しているところは、正直見た事がなかった。泣く時は基本的に声を殺しているし、出していてもどこか控えめだったりする。それなのに、どこか投げやりに泣くユキに胸が締め付けられる。

それから、怒っていないことを伝えると、泣き止んだユキは突然倒れた。
表情は安らかだが、熱がある。元々体調が悪かったのだから仕方がない。
そんなユキをアミュートが完全に包み込み、体の内へと隠してしまった。

「アミュート?」
『あのね、聞いて』

それからアミュートはより詳細な内容を話してくれた。
それはユキから聞いたあのクソデブ……あの家庭教師のおっさ…あれにされた事、それからこの2日間部屋にこもっていた理由、どれだけの勇気を振り絞って話してくれたかなどだった。

俺たちに嘘の進歩状況を教えていたことも腹立たしいが、ユキが養子だということを利用して、心の隙をついて暴力を隠そうとしたことが何よりも腹立たしい。
傷が治ったのか気になって、アミュートに問えば、そっと退いて見せてくれた。
まだ赤黒く鬱血している。これじゃ座るのも寝るのも痛いだろう……。可哀想に……。さぞ痛かっただろう……。
気づいてやれなかったことも、養子であることが付け込む隙になってしまっていることも、悔しかった。愛情表現を、今よりももっと全力で…全力以上でしていれば……嫌われるなんて言葉をユキは信じなかったんじゃないだろうか……そんなふうに思ってしまう。

ユキが勇気を振り絞って話してくれた時、俺たちがもっと違う対応を取れていたら、ユキを一瞬でも傷つけることは無かったんじゃないか……。

なんて言う後悔が、ぐるぐると、心の内に渦巻く。

「ノア…様!殺すか?!…しますか?!」
「殺せないな。私の孫とはいえ、血は繋がっておらず養子。私たちにとってはただの養子ではないが、世間から見れば違う。あれは貴族の間では優秀と有名だ。いくら公爵家とはいえ殺すことは出来ん。あれは伯爵家の後ろ盾を持っておるしな……」
「伯爵家…どこのですか?」
「口にしたくない!あれの家名はたった今記憶から消した。………どっかの伯爵家の当主の弟だ。簡単には殺せん」

父のいうように、あれは簡単には殺せない。公爵家という立場あるものが無闇矢鱈に人を殺せば問題になる。なかには気に食わんだけでも殺す奴もいるが、そんな奴が上にいればそれに連なるものたちの思想もそうなっていってしまう。それはダメだ。

「殺せはしないが、少々酷い目にはあってもらう」

とりあえず、今回の件で表向き出来る罰はクビにするくらだろう……。まぁその事実だけで雇ってくれる家は減るだろうが、それじゃ生ぬるい。
もっと居心地が悪くなってもらわないと。

まずはほかにも悪行を行っていなかったか調べて…今回が初犯で何も出なかったとしても、ユキに痛い思いをさせたんだ…助けてといっても聞き入れてやるつもりは無い。いや、1度や2度くらいは傷を治してやってもいいかもしれないな……ガイなら魔力が続く限りと言いそうだが、さぁ、どうだろうか。

俺は初めて感じるここまでの怒りの感情に一瞬戸惑ったが、まぁユキに手を出したんだ仕方ないしそんなもんだな。ということですぐに受け入れ、懲らしめる方法を考えたのだった。












しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

処理中です...