髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ

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第3章

172.ノア─簡単には…。

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ユキの体調が心配で部屋へ行けば、顔色のあまり良くないユキが、こもってた理由を話すからおじいちゃん達も呼んできてと言ってきた。
普段なら、今度にしようと言っただろうが、ユキの表情や雰囲気から、そんなことは言えなかった。
正直、体調が良くなってからじゃダメなのか?とは思う。でも、今、このタイミングを逃せば、心の距離ができてしまうような、そんな気がした。

それから、両親を呼びに行き、ソファーに次々に腰かけていく。
本当はベッドの周りに行きたかったが、ソファーに座るように言われてしまっては仕方がなかった。

そこから、ユキは震えながら少し泣き、覚悟を決めたように話してくれた。要領の得ない流れだっが、一生懸命なユキの口から紡がれたのは酷く怒りを覚える内容だった。
おしりペンペンなんて可愛らしい響きをしているが、普通に暴力だった。
しかし、想像してしまったことでなかった為、良かったといえばよかったのだが、種類は違えど暴力を受けたことには変わりはない。

その事実に、俺の両親もいるというのにガイは素でキレていた。
その様子が怖かったのか、ユキは泣き叫ぶようにしてさっきよりも詳細な内容を話した。
ユキがこんなにも感情を出しているところは、正直見た事がなかった。泣く時は基本的に声を殺しているし、出していてもどこか控えめだったりする。それなのに、どこか投げやりに泣くユキに胸が締め付けられる。

それから、怒っていないことを伝えると、泣き止んだユキは突然倒れた。
表情は安らかだが、熱がある。元々体調が悪かったのだから仕方がない。
そんなユキをアミュートが完全に包み込み、体の内へと隠してしまった。

「アミュート?」
『あのね、聞いて』

それからアミュートはより詳細な内容を話してくれた。
それはユキから聞いたあのクソデブ……あの家庭教師のおっさ…あれにされた事、それからこの2日間部屋にこもっていた理由、どれだけの勇気を振り絞って話してくれたかなどだった。

俺たちに嘘の進歩状況を教えていたことも腹立たしいが、ユキが養子だということを利用して、心の隙をついて暴力を隠そうとしたことが何よりも腹立たしい。
傷が治ったのか気になって、アミュートに問えば、そっと退いて見せてくれた。
まだ赤黒く鬱血している。これじゃ座るのも寝るのも痛いだろう……。可哀想に……。さぞ痛かっただろう……。
気づいてやれなかったことも、養子であることが付け込む隙になってしまっていることも、悔しかった。愛情表現を、今よりももっと全力で…全力以上でしていれば……嫌われるなんて言葉をユキは信じなかったんじゃないだろうか……そんなふうに思ってしまう。

ユキが勇気を振り絞って話してくれた時、俺たちがもっと違う対応を取れていたら、ユキを一瞬でも傷つけることは無かったんじゃないか……。

なんて言う後悔が、ぐるぐると、心の内に渦巻く。

「ノア…様!殺すか?!…しますか?!」
「殺せないな。私の孫とはいえ、血は繋がっておらず養子。私たちにとってはただの養子ではないが、世間から見れば違う。あれは貴族の間では優秀と有名だ。いくら公爵家とはいえ殺すことは出来ん。あれは伯爵家の後ろ盾を持っておるしな……」
「伯爵家…どこのですか?」
「口にしたくない!あれの家名はたった今記憶から消した。………どっかの伯爵家の当主の弟だ。簡単には殺せん」

父のいうように、あれは簡単には殺せない。公爵家という立場あるものが無闇矢鱈に人を殺せば問題になる。なかには気に食わんだけでも殺す奴もいるが、そんな奴が上にいればそれに連なるものたちの思想もそうなっていってしまう。それはダメだ。

「殺せはしないが、少々酷い目にはあってもらう」

とりあえず、今回の件で表向き出来る罰はクビにするくらだろう……。まぁその事実だけで雇ってくれる家は減るだろうが、それじゃ生ぬるい。
もっと居心地が悪くなってもらわないと。

まずはほかにも悪行を行っていなかったか調べて…今回が初犯で何も出なかったとしても、ユキに痛い思いをさせたんだ…助けてといっても聞き入れてやるつもりは無い。いや、1度や2度くらいは傷を治してやってもいいかもしれないな……ガイなら魔力が続く限りと言いそうだが、さぁ、どうだろうか。

俺は初めて感じるここまでの怒りの感情に一瞬戸惑ったが、まぁユキに手を出したんだ仕方ないしそんなもんだな。ということですぐに受け入れ、懲らしめる方法を考えたのだった。












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