上 下
161 / 218
第3章

161.明日から頑張るね。

しおりを挟む
『人型になるには、長くてあと2日、待って欲しいんだよね』
『そんな早くなれるの?』
『うん。頑張るね』

アミュートは、人型になるには2日しかかからないという。
体の形を作り変えるのだから、大変そうなことなのに、案外しれっとできてしまうんだな。

『2日間、何するの?修行的なことするの?レベル上げみたいなとか。俺の傍から居なくなる?』
『いや!大丈夫だよ!ずっとそばにいるよ!ここにいても全然できちゃうことだからね!ただ、あまりお話はできないかもね』
『え、そうなの?』
『うん。意識を別のところに分散しちゃうから、反応は遅くなるかな~まぁ多少残してるから遅くても返事はできるよ!』
『……ちなみに意識を分散させて何するの?』
『それはね、操るの!イヌ科の生き物を従えたりして、魔物化したものも従えられたら、まぁ、精霊としては大物になるから人化できるようになるよ!』
『……そんな感じなんだね』

うん!と嬉しそうに返すアミュートに、俺はそう言えばアミュートはイヌ科の動物なら従えられるってケインが言っていたなと思い出す。その時ケインは確か、魔物化しちゃうと操りにくくなると言っていた。つまり、そこを克服すればイヌ科のトップオブザトップになるわけで、人型にもなれちゃうと…なるほど。

『だからね、2日間、話すかどうか考えればいいんじゃない?今はまだ、色々あったあとで気持ちの整理とかもできてないかもしれないし、まずは落ち着いて、結論を出せばいいと思うよ。それには2日は充分なんじゃないかな。』
『……そうだね。うん。そうする。ありがとう、アミュート』
『んーん!じゃ、僕、明日の朝から頑張るね!』
『あ、それは今からじゃないんだね』
『うん。今はまだ、ユキ、辛そうだからそばで見守ってるよ!だから、僕のことをもふもふしながら安心して、眠りにつけばいいよ』
『ありがとう』

アミュートは本当に優しい。
緩みきっている涙腺のせいで、思わずアミュートの毛を濡らしてしまう。

『寝れる?』
『……ん』
『泣いてるの?ユキ』『泣いてません!』
『……寝れなかったらお話でもしてる?それとも、創造主様のところ、一緒に行く?』
『……』

ケインのところへ……でもまだ最後に会ってからひと月経っていない。
何かあれば会いにおいでと言われているけど、今会いに行って慰めて欲しいけど、まだ、違う。

『結論を、出したら、父様たちに話す前に、会いに行く』
『…そっか、わかった。なら、僕とお話でもしてようか?』
『……んーん。大丈夫。ありがとう。なんだか眠くなってきたし…大丈夫そう』
『そっか。よかった…おやすみ、ユキ』
『…おやすみ…アミュート…』

寝ることに対する恐怖心が少し薄まっていて、アミュートが人型になる為の行為を今からやらずにそばに居てくれている安心感もあってか、俺の中でとりあえずの結論が出たあたりで急激に眠気が出てきてしまった。

俺はアミュートに抱きついて、再び眠りについた。今は夜だから。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

この手が生み出すキセキ ~ハンクラ魔女のお店にようこそ~

あきづきみなと
ファンタジー
都市の一画に魔法使いの地区がある。 「魔法区」と呼ばれるその片隅に、とある店があった。 常にフードをかぶった小柄な店主は、『ハンクラ』と読める看板を掲げているが、その意味を語らない。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

異世界で双子の勇者の保護者になりました

ななくさ ゆう
ファンタジー
【ちびっ子育成冒険ファンタジー! 未来の勇者兄妹はとってもかわいい!】 就活生の朱鳥翔斗(ショート)は、幼子をかばってトラックにひかれ半死半生の状態になる。 ショートが蘇生する条件は、異世界で未来の勇者を育てあげること。 異世界に転移し、奴隷商人から未来の勇者兄妹を助け出すショート。 だが、未来の勇者アレルとフロルはまだ5歳の幼児だった!! とってもかわいい双子のちびっ子兄妹を育成しながら、異世界で冒険者として活動を始めるショート。 はたして、彼は無事双子を勇者に育て上げることができるのか!? ちびっ子育成冒険ファンタジー小説開幕!!  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 1話2000~3000文字前後になるように意識して執筆しています(例外あり)  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ カクヨムとノベリズムにも投稿しています

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

不死の大日本帝國軍人よ、異世界にて一層奮励努力せよ

焼飯学生
ファンタジー
1945年。フィリピンにて、大日本帝国軍人八雲 勇一は、連合軍との絶望的な戦いに挑み、力尽きた。 そんな勇一を気に入った異世界の創造神ライラーは、勇一助け自身の世界に転移させることに。 だが、軍人として華々しく命を散らし、先に行ってしまった戦友達と会いたかった勇一は、その提案をきっぱりと断った。 勇一に自身の提案を断られたことに腹が立ったライラーは、勇一に不死の呪いをかけた後、そのまま強制的に異世界へ飛ばしてしまった。 異世界に強制転移させられてしまった勇一は、元の世界に戻るべく、異世界にて一層奮励努力する。

転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン… 紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢 座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!! もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。 全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。 作者は極度のとうふメンタルとなっております…

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

処理中です...