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第3章
155.痛み。
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それから俺は悲鳴をあげるのも億劫になるほど打たれ続け、身も心も限界だった。
この3ヶ月で俺は彼に対して少しだけ心を許していた。たまに抱く嫌悪感のせいで、完全には心を許せていなかったが、それなりにいい人だとは認識していたのだ。
しかし、初めに感じた嫌悪感は正しく、気のせいだとスルーしていたグレーのオーラは気の所為なんかではなかった。
それだけで俺の心はダメージを受け、与えられた選択肢で大分消耗し、終わらない痛みは前世を思い出し限界だった。
「おや、そろそろ時間ですね。では、今日のところはおしまいです。テスト、素晴らしかったと報告させていただきますね」
「……」
「こら、しっかりしなさい!ほら、立って!」
「ッッ!」
「さ、喉が渇いたでしょう?はい、お水です」
「……」
「ほら、飲んで!」
「はい……」
こんなやつから受けとった水なんて飲みたくもないが、体は水分を欲し、コップの縁の水滴から目が離せず、強制的に持たされたコップを飲まずに持ち続けることなどできず、1度口をつければあっという間に水は無くなった。
何度か水をおかわりし、叫んでいたことなんて悟られないほど喉は潤ってしまった。
そして、着崩れてしまっていた服を整え、相手を睨みつけた。
「こらこら、そんな目で見つめないでください。とっても可愛らしい。」
睨んでいるのに、まるで情熱的な視線を向けられたかのようなリアクションをし、顔を赤らめているこの変態は、どうしようもなく気持ち悪い。
「さて、このことは2人だけの秘密ですよ。バラせば、君のこと最低点数も知られることになるのですから。それに、こんなこと、知られたくないでしょ?」
「……」
「返事は?」
「…………はい」
俺の返事を聞き届け、グレーのオーラが薄まったあいつは部屋から出ていった。
俺は気持ちの切り替えが上手くできず、暫く立ち尽くしていた。
すると、部屋の扉がノックされ、ルルの声がする。
「坊ちゃん。入ってもよろしいですか?アミュート様をお連れしました」
『ユキ!』
俺は普段から授業のあとはそのまま復習のため、部屋に残っているので怪しまれることはなく、普段通りアミュートが授業後の俺に会いに来てくれた。
しかし今は、ダメだ。泣いちゃうし、バレちゃう。
「ごめん、もうちょっとまって」
「…かしこまりました。」
『ユキ?』
『ごめんね、もうすぐでキリがいいから、部屋で待ってて。』
『…わかった。がんばれ!』
『ん…』
アミュートとルルの気配が遠ざかっていき、俺はうつ伏せで床に寝転がった。
おしりや太ももを中心に打たれていた為、座るのが痛いからうつ伏せだ。
前にインベントリの中に入れていた、塗り薬を取りだし赤く腫れ上がり血のにじむ所に塗っていく。
すると、薬が合わないのだろうか、塗ったところから別の痛みがし始めた。
しかし、これは以前ガイさんに塗ってもらったことのある、あの傷が消える塗り薬だ。
合わないなんてこと、ないはずなのに、なんだか気分も悪くなる。
精神的苦痛のせいなのか、薬のせいなのか、はたまた両方なのか、吐き気がしてでも吐けなくて。
もう、どうしたらいいのか分からず、まるまるしか無かった。
この3ヶ月で俺は彼に対して少しだけ心を許していた。たまに抱く嫌悪感のせいで、完全には心を許せていなかったが、それなりにいい人だとは認識していたのだ。
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それだけで俺の心はダメージを受け、与えられた選択肢で大分消耗し、終わらない痛みは前世を思い出し限界だった。
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そして、着崩れてしまっていた服を整え、相手を睨みつけた。
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「……」
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すると、部屋の扉がノックされ、ルルの声がする。
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しかし今は、ダメだ。泣いちゃうし、バレちゃう。
「ごめん、もうちょっとまって」
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『…わかった。がんばれ!』
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すると、薬が合わないのだろうか、塗ったところから別の痛みがし始めた。
しかし、これは以前ガイさんに塗ってもらったことのある、あの傷が消える塗り薬だ。
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精神的苦痛のせいなのか、薬のせいなのか、はたまた両方なのか、吐き気がしてでも吐けなくて。
もう、どうしたらいいのか分からず、まるまるしか無かった。
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