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第2章
138.ノア─説明と発覚。
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少しして俺達もだいたい状況整理ができたところで、アミュートに声をかけた。
「あー…アミュート、念話は、今、できるようになったのか?」
『あぁ。さっき、手に入れた』
「じゃあユキともできるようになったのか?」
『ユキとは元々できる』
「そ、そうか…」
『因みに、さっきも言ったがユキとお前たち3人以外には使えない。今のところ』
「そうなのか?」
『あぁ。まぁとりあえずそれで問題ない』
「そうか…」
アミュートには聞きたいことが山ほどあるが、とりあえずはユキが何故あそこまでのパニックを起こしたのかを聞くのが最優先だった。
『じゃあ説明する。』
「「「ゴクッ……」」」
アミュートの言葉を俺達は固唾を飲んでまつ。
『ユキは、ピアノを弾いて遊んでる途中から、僕たちと出会う前の記憶……を思い出したと言うより、それが引っかかってなんだかモヤモヤしている様子だった。
そこで、僕は辞めてお昼寝をしようと提案をして、ユキは蓋を閉めようとした。
その時に手を挟み、その痛みと、多分大きい音が鳴ったから、だと思う……
叫んで脅えて、錯乱していた。
それから、外の奴らが来て、ユキが余計怯えて、僕にも、反応してくれなくて……
それで、壁の隅へ移動して……って感じだ。そっから先はひたすらパニックが悪化していった。』
アミュートは何度も言葉を切り、獣の顔でもわかるほど辛そうな顔をして、途中何度も声を震わせながら説明をしてくれた。
その間俺たちは黙って話を聞いていた。
一通り話終えたアミュートは、まるで確かめるようにユキの体に顔を埋た。
俺達はお互いに顔を見合せ、戸惑いを紛らわせる。
アミュートの話を聞いて感じたことは、戸惑いがほとんどだった。
今までだってユキがパニックを起こしたことは何度もある。その理由は消えた記憶によるものだろうと考えていた。そしてそれは間違いではなく、今回のトリガーは音と痛み。それは理解出来た。が、パニックを起こす前にも違和感を感じていたとアミュートは言った。思い出した訳では無いけど感じる不快感。それは、ピアノをしていたからだと。
しかし、お昼の時に聞いた話では、ユキは楽しくピアノで遊んでいたと。それが急に不快感を感じるのは、どういうことなのだろうか。それは、俺たちがなんとかしてやることが出来るものなのか、それともどうしようも無いものなのか。出来ないにしても、防ぐことは出来るのか。
疑問は尽きない。
そうこうしていると、部屋の外から控えめなノックの音が聞こえてきた。
「お医者様がご到着されました。よろしいでしょうか?」
医者が着いたようで、俺はアミュートに視線で確認をしてから外の使用人に医者だけ入れるように伝えた。ユキは気絶しているがいつ目を覚ますか分からない。そんな不安定な状態でまたたくさんの人を見ればどんな反応をするのか怖くて仕方がない。だから部屋へ入れるのは最小人数だ。
本当はユキの部屋へ運んでやりたいが、治療を終えてから連れていった方が安心だろうと思う。
医者に診せれば、ただ手当をするよりも治癒魔法やポーションを使って癒した方が、目覚めた時にパニックを起こしにくいのではないか、と提案された。確かに、痛みも一因として起こったパニックなのだから、目覚めた時に痛みがあればその可能性は十分にあった。
だから俺は是非頼もうと思ったが、それをアミュートが制した。
『まって』
止められて、どうした?と問いたかったが、医者のいる前で俺が反応するのは不自然だ。
どうしたものかと考えて結局、医者には少し待ってもらい、俺たち3人がアミュートと医者やユキの傍を離れ、小声で話し合うことにした。
「どうした?」
『ユキは治癒魔法やポーション等に酷く耐性がない時があるんだ。お前たちも知ってるだろ?ユキと出会った初めの方に…』
「あ、あれって、そういう事だったのか……」
『そう。だから、今あんなことがあって精神が不安定な時に、無闇にそういう魔力の籠ったものを使ってユキを苦しめるかもしれないことはしたくない』
「なるほど……」
『あの時は…ユキがまだ色々と不安定だったからあぁいうことが起きたんだ。だから今回ももしかするかもしれない。今回に限らず普段から出来るだけ魔力の籠ったものは与えないで欲しいが、今回は特に危険だ』
「……そういう事だったのか。あの時は少し不思議だったんだ……」
「そういうことなら手当をするだけに留めておいた方が良さそうだな」
「そうだね…」
まさかの事実に、またびっくりした。そしてみょうになっとくして、リスクは伴うが手当で済ますことにした。
その後目覚めたユキはパニックを起こすことさえなかったが、パニックを起こしていたことについての記憶はなく、怪我の理由もわかってなさそうで、心配する俺たちに向けた顔は、先程のどこか狂気じみた恐怖の色はなく、無垢で可愛い顔付きだった。
それが逆に、ユキの抱える闇を表しているようで、とても不安で怖くなった。
俺たちで、支えてやれるだろうか……?
𓂃◌𓈒𓐍◌𓈒
お読みいただきありがとうございます🙇♀️
数合わせの為次回から2話ほどおまけになります。
その後3章に入りますので、今後ともよろしくお願いします。
「あー…アミュート、念話は、今、できるようになったのか?」
『あぁ。さっき、手に入れた』
「じゃあユキともできるようになったのか?」
『ユキとは元々できる』
「そ、そうか…」
『因みに、さっきも言ったがユキとお前たち3人以外には使えない。今のところ』
「そうなのか?」
『あぁ。まぁとりあえずそれで問題ない』
「そうか…」
アミュートには聞きたいことが山ほどあるが、とりあえずはユキが何故あそこまでのパニックを起こしたのかを聞くのが最優先だった。
『じゃあ説明する。』
「「「ゴクッ……」」」
アミュートの言葉を俺達は固唾を飲んでまつ。
『ユキは、ピアノを弾いて遊んでる途中から、僕たちと出会う前の記憶……を思い出したと言うより、それが引っかかってなんだかモヤモヤしている様子だった。
そこで、僕は辞めてお昼寝をしようと提案をして、ユキは蓋を閉めようとした。
その時に手を挟み、その痛みと、多分大きい音が鳴ったから、だと思う……
叫んで脅えて、錯乱していた。
それから、外の奴らが来て、ユキが余計怯えて、僕にも、反応してくれなくて……
それで、壁の隅へ移動して……って感じだ。そっから先はひたすらパニックが悪化していった。』
アミュートは何度も言葉を切り、獣の顔でもわかるほど辛そうな顔をして、途中何度も声を震わせながら説明をしてくれた。
その間俺たちは黙って話を聞いていた。
一通り話終えたアミュートは、まるで確かめるようにユキの体に顔を埋た。
俺達はお互いに顔を見合せ、戸惑いを紛らわせる。
アミュートの話を聞いて感じたことは、戸惑いがほとんどだった。
今までだってユキがパニックを起こしたことは何度もある。その理由は消えた記憶によるものだろうと考えていた。そしてそれは間違いではなく、今回のトリガーは音と痛み。それは理解出来た。が、パニックを起こす前にも違和感を感じていたとアミュートは言った。思い出した訳では無いけど感じる不快感。それは、ピアノをしていたからだと。
しかし、お昼の時に聞いた話では、ユキは楽しくピアノで遊んでいたと。それが急に不快感を感じるのは、どういうことなのだろうか。それは、俺たちがなんとかしてやることが出来るものなのか、それともどうしようも無いものなのか。出来ないにしても、防ぐことは出来るのか。
疑問は尽きない。
そうこうしていると、部屋の外から控えめなノックの音が聞こえてきた。
「お医者様がご到着されました。よろしいでしょうか?」
医者が着いたようで、俺はアミュートに視線で確認をしてから外の使用人に医者だけ入れるように伝えた。ユキは気絶しているがいつ目を覚ますか分からない。そんな不安定な状態でまたたくさんの人を見ればどんな反応をするのか怖くて仕方がない。だから部屋へ入れるのは最小人数だ。
本当はユキの部屋へ運んでやりたいが、治療を終えてから連れていった方が安心だろうと思う。
医者に診せれば、ただ手当をするよりも治癒魔法やポーションを使って癒した方が、目覚めた時にパニックを起こしにくいのではないか、と提案された。確かに、痛みも一因として起こったパニックなのだから、目覚めた時に痛みがあればその可能性は十分にあった。
だから俺は是非頼もうと思ったが、それをアミュートが制した。
『まって』
止められて、どうした?と問いたかったが、医者のいる前で俺が反応するのは不自然だ。
どうしたものかと考えて結局、医者には少し待ってもらい、俺たち3人がアミュートと医者やユキの傍を離れ、小声で話し合うことにした。
「どうした?」
『ユキは治癒魔法やポーション等に酷く耐性がない時があるんだ。お前たちも知ってるだろ?ユキと出会った初めの方に…』
「あ、あれって、そういう事だったのか……」
『そう。だから、今あんなことがあって精神が不安定な時に、無闇にそういう魔力の籠ったものを使ってユキを苦しめるかもしれないことはしたくない』
「なるほど……」
『あの時は…ユキがまだ色々と不安定だったからあぁいうことが起きたんだ。だから今回ももしかするかもしれない。今回に限らず普段から出来るだけ魔力の籠ったものは与えないで欲しいが、今回は特に危険だ』
「……そういう事だったのか。あの時は少し不思議だったんだ……」
「そういうことなら手当をするだけに留めておいた方が良さそうだな」
「そうだね…」
まさかの事実に、またびっくりした。そしてみょうになっとくして、リスクは伴うが手当で済ますことにした。
その後目覚めたユキはパニックを起こすことさえなかったが、パニックを起こしていたことについての記憶はなく、怪我の理由もわかってなさそうで、心配する俺たちに向けた顔は、先程のどこか狂気じみた恐怖の色はなく、無垢で可愛い顔付きだった。
それが逆に、ユキの抱える闇を表しているようで、とても不安で怖くなった。
俺たちで、支えてやれるだろうか……?
𓂃◌𓈒𓐍◌𓈒
お読みいただきありがとうございます🙇♀️
数合わせの為次回から2話ほどおまけになります。
その後3章に入りますので、今後ともよろしくお願いします。
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