髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ

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第2章

137.ノア─怯えるユキとアミュートの気遣い。

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早く終わらせてユキの元へ行って一緒に遊ぼうと思って、必死に仕事を片付けていると、ユキにつけていた護衛がノックもせずに慌てて部屋へ入ってきた。

「おい!ノックぐらいしろ!」
「も、申し訳ありません!至急着いてきてくださいますか?!坊ちゃんが!!」
「ガタッ!ユキがどうした?!」
「ご説明は移動しながらでもよろしいですか?!」
「わ、わかった!ライ!行くぞ!」
「はい!」

とても慌てた護衛に促され、慌てて部屋を出て廊下を走る。走りながら、その護衛はユキがパニックを起こして大変だと説明をした。そのパニックの起こし方が尋常じゃなく、怪我まで負っていると。人が近付けば、酷く脅え悪化させるので俺たちを呼びに来たと。

ガイが着いていたはずなのに、なぜそんなことになっているのだと問正せば、ガイは少々呼ばれて席を外していたところだったと。仕方がないことだが怒りが湧いてしまう。

そうしてたどり着いた楽器部屋では、部屋の隅で血だらけのユキがガタガタと震えながら吐いて謝って怯えている姿があった。呼吸の仕方がおかしいなんて所ではなくて、吐瀉物が変なところに入ったのか首をガリガリと掻きむしりながら必死に呼吸をしていた。そばに居たアミュートはどうすればいいのか分からず酷くオロオロとしていて、少しでも怯えないようにと人を近づけないようにユキの前にたってガードしていた。

俺が恐る恐る近づこうとすれば、後ろから滑るようにガイが入ってき、ユキの様子に顔を青くしていた。
護衛には両親にこのことを伝えてもらえてくるようにいい、使用人には医者を呼ぶように伝え退出してもらい、部屋には俺たち以外の人が居なくなった。
そうして、3人で話し合い、そっとユキに声をかけながら近づく。
その声には反応しないのに、近付いてくる気配には反応を示し、必死に体を丸め、狂ったように謝りながら、また吐きだした。
触れるのをはばかられたが、そっと手を伸ばせば触れる直前にユキの意識はぷっつりと途切れた。

その瞬間アミュートがユキへ駆け寄り包み込む。
アミュートにユキは生きているかと問えば、こくんと頷きが返ってきた。

そして俺たちがほっと息をはけば、アミュートの体が淡くひかったように見えた。見間違いか?と思ったが、そのすぐ後に頭に直接声が届いた。

『聞こえるか』
「「「?!?!?!」」」

俺達は混乱したが、じっと俺達を見つめるアミュートの視線に、少しだけ落ち着いた。

「き、きこえる。これ、アミュート、か?」
『そうだ』

恐る恐る聞き返せば、頷きと共にまた響く声の返事。

『これは念話だ。お前たちにだけ使うことができるようになった。他の者には聞こえん。とりあえず説明がしたいから落ち着いたら教えろ』
「……落ち着いたらって……」
『少し休憩しろ。お前たちも顔色が良くない。ユキの状況説明は僕の念話の事をきちんと受け入れることが出来てからだ』
「た、助かる」

ライの小さな呟きに、アミュートは俺たちの事を考えてくれていたようで休憩を取らせてくれた。正直ありがたい。ユキのあんな姿を見たあとにこんな訳の分からないことが起こっては、落ち着いて話も聞けそうになかったからだ。









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