上 下
126 / 218
第2章

126.鼻歌。

しおりを挟む
次の場所に着くのにものすごく時間のかかる俺のペースに、俺自身嫌気がさしてきた。なんか辛気臭いなって。でも、ガイさんやアミュートは嫌な顔せず、むしろニコニコで着いてきてくれて優しいな~と思う。ほんと優しい。

でもなんだか歩くのに飽きてきたので、そろそろアミュートに提案をしようと思う。

『アミュート』
『ん?どうしたの?』
『アミュートの上に乗っていい?』
『いいよ?だけど、ユキはそれでいいの?さっきその人に嫌だって言ってたじゃん』
『アミュートの上に乗るのは探検感を失わないからいいんだよ』
『なるほど…?ま、僕は別にいいよ!ほら、乗って』

そう言ってアミュートは俺の前に伏せてくれた。ガイさんは急になんだ?といった顔をしていたけれど、俺がアミュートに跨るとなるほど、と納得していた。

「ユキ、アミュートに乗るのはいいのか?」
「いーにょ!」
「そうか」
「うん!あみゅーちょ、いっちぇ!」
『りょ~かい!』

アミュートの上に乗れば、やっぱりペースが全然違う。アミュートは、走る?と聞いてきたが、早歩き程度のペースで、とお願いした。急に走り出せばガイさんはビックリするだろうし、なにより俺が落ちそうで怖い。
走ってなくても落ちそうで怖いが、動物の上に乗っての移動は前世からの夢だったので、とても嬉しいし楽しい。昔本で小さな子供が犬の上に乗って移動するシーンを見てから1度やって見たかったんだ。犬に限らず、馬にも乗ってみたかった。アミュートは犬ではなく狼だが、同じイヌ科だから夢クリアだ。

「~~🎼.•*¨*•.¸¸♬」

無意識に漏れる鼻歌は、前世でよく聞いていたクラシックだ。

「ユキは歌上手だな」
「え?」
「鼻歌」
「え?」

完全に無意識だった鼻歌を褒められ、恥ずかしいやら嬉しいやらで顔が赤くなる。

「また体調悪いのか?」
「え?」
「顔、赤いぞ。照れてるだけか?」
「う……しょ、しょう……」

恥ずかしくてアミュートの背中に顔を埋める。

「ハハ!可愛いな、ユキ」
「ふぅぅ……」

恥ずかしいからそれ以上はやめて欲しい。けど待って?そういえば俺子供だ。2歳児だ。褒めるのなんて普通じゃん。お世辞率高いのが子供相手への褒め言葉だ。真に受けてどうする。
なんだ、そう思えば全然恥ずかしくないや!

「ありあちょ!」
「お……おう…」

そのリアクション、やっぱりお世辞だったんだね。思いの外喜んだような笑顔を向けられてタジタジになっているんだよね?あ~恥ずかし!お世辞なのに真に受けるとか…はぁあ…。

「そ、そういえばユキ、あっちに確か楽器部屋があったぞ…?」
「え?!」
「歌が好きなら行ってみるか?」
「いく!!」
「案内は、しない方がいいんだよな?」
「うん!れも、ろっちのほうか、おちえて?」
「……お、おう、あっちだ」
「あい!あみゅーちょ!あっちらって!」
「わんっ!『は~い』」

そうしてガイさんに指し示された方向へアミュートに乗って進んで行った。












しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン… 紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢 座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!! もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。 全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。 作者は極度のとうふメンタルとなっております…

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

処理中です...