上 下
91 / 218
第1章

91.暇すぎてなめ茸。

しおりを挟む
あれから馬車で移動をし、現在3日目朝の移動中である。
ノアさんは“今回は2日はかかるだろうな”と言った。そう。最低でもと。
だから、まだ到着していないのだ。

「……」
「ユ、ユキ~、…あ、この本読んであげようか?」
「……」

俺は暇で暇で仕方がなくて、絶賛不機嫌中だ。
ガイさん優秀!なんて思っていた時期が俺にもありました。そりゃ初めの日は余裕があるから、本を持ってきてくれてたら嬉しいですよ、すごいって思いますよ。
でもね、最低2日かかる旅程で本1冊て…。おもちゃもなにもないから暇です。
リスさんの腕も可愛そうになって途中からピコピコできるものも無くなり、本も内容を記憶してしまい、特に代わり映えの無い景色にはとうの昔に興味が失せました。
暇です。ひ!ま!!です!!!ひまでーーす!!!

「ユキ、寝るか?」
「……」

3人との会話もほとんど無くなった。それは俺が不機嫌だからというのもあるが、話題が無くなったというのもある。
初めは暇潰しに、向かっているノアさんの家のある地域のことを沢山聞いて、次に家のことを聞いて…それなりに楽しみにしていて気になる点を質問して答えてもらっていたけど、それも2日目の朝が最後だった。

「ユ、ユキ…?」
「……」

移動の暇も大変な苦痛だが、そんな精神的苦痛と同じだけ、この馬車は身体的苦痛を負わせてくる。
ガタガタと揺れるし酔う。おしりは痛いし酔う。耳は痛いし酔う。換気とかできるような窓でもないし酔う。空気が悪いし酔う。
最悪。

「おーい、ユキ?」
「……」

馬車に抱いていたワクワクは乗った瞬間崩れ去った。
おしり痛いし身体が安定しないからぽてぽてと転けてしまうし、見かねた3人に順番交代で膝の上に乗せてもらうがそれでもおしり痛いし酔う。特にガイさんノアさんの膝の上。ライさんは程よく柔らかいけど、ガイさんノアさんはその鍛えられた逞しい筋肉により俺のおしりクッションには不向きだった。

「ユキー…?」
「……」

それでも俺を安定させるためにわざわざ乗せてくれているわけで、文句なんて言えるはずもなくて……。だから言ってはいない。思ってるだけ。そしてそれが顔に出ないように、出てもバレてしまわないように、リスさんの後頭部に顔を埋めて隠していた。それもあって鼻は痛いし、たまにちょっと酸欠になる。

「ユキくーん…?」
「……」

俺はね、ちょっと所じゃないくらい楽しみにしてたんだよ。馬車での旅。乗ったことないし、実物を見た事もなかったから。
でも、ちょっと考えればわかったかもしれない。整備されていない、人々が使い踏み固められただけの道を通るのだから、揺れるし、酔うのは考えたらわかったかもしれない。思慮の足らなかった俺にも責任があるのかもしれない。
でも、でもね。楽しみを苦痛によって壊された俺の気持ちも誰かわかって欲しい。

「ユキさーん…?」
「……」

同情するなら整備後の道をくれ!!(人ダメクッションでも可)
………はぁ。
おしり痛い。気持ち悪い。でも吐く程じゃないって言う絶妙に嫌な酔い。
暇で暇で頭バカになりそう。爆発しそう。なめ茸。

「「「……」」」
「……」

なめ茸って何。急に何。あーーダメだもうとうとうバグってしまった。どうしよう。これからどんどんバグっていくかも……うわーーん!!

「ユキ!!!」
「ふぇぁ!」

頭がついにバグってしまったと、ひとり心の中で嘆いていると、急にノアさんに肩をがしっ!と掴まれ割と張った声で呼ばれてついつい変な声を上げてしまう。
慌てて口を手で押え、なぁに?と、小首を傾げて見つめてみる。

「………あ、ユキ、大丈夫か?さっきからずっと声をかけていたが反応がなかったけど…?」

一瞬ノアさんも、フリーズしてしまいどうしたのかと思ったが、自力で復活したノアさんはといった。

なにそれ。俺知らないよ?ほんに呼んだ?心の中でとかではなく?







𓂃◌𓈒𓐍◌𓈒
更新止まってしまってて申し訳ありません…


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

この手が生み出すキセキ ~ハンクラ魔女のお店にようこそ~

あきづきみなと
ファンタジー
都市の一画に魔法使いの地区がある。 「魔法区」と呼ばれるその片隅に、とある店があった。 常にフードをかぶった小柄な店主は、『ハンクラ』と読める看板を掲げているが、その意味を語らない。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

異世界で双子の勇者の保護者になりました

ななくさ ゆう
ファンタジー
【ちびっ子育成冒険ファンタジー! 未来の勇者兄妹はとってもかわいい!】 就活生の朱鳥翔斗(ショート)は、幼子をかばってトラックにひかれ半死半生の状態になる。 ショートが蘇生する条件は、異世界で未来の勇者を育てあげること。 異世界に転移し、奴隷商人から未来の勇者兄妹を助け出すショート。 だが、未来の勇者アレルとフロルはまだ5歳の幼児だった!! とってもかわいい双子のちびっ子兄妹を育成しながら、異世界で冒険者として活動を始めるショート。 はたして、彼は無事双子を勇者に育て上げることができるのか!? ちびっ子育成冒険ファンタジー小説開幕!!  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 1話2000~3000文字前後になるように意識して執筆しています(例外あり)  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ カクヨムとノベリズムにも投稿しています

セリオン共和国再興記 もしくは宇宙刑事が召喚されてしまったので・・・

今卓&
ファンタジー
地球での任務が終わった銀河連合所属の刑事二人は帰途の途中原因不明のワームホールに巻き込まれる、彼が気が付くと可住惑星上に居た。 その頃会議中の皇帝の元へ伯爵から使者が送られる、彼等は捕らえられ教会の地下へと送られた。 皇帝は日課の教会へ向かう途中でタイスと名乗る少女を”宮”へ招待するという、タイスは不安ながらも両親と周囲の反応から招待を断る事はできず”宮”へ向かう事となる。 刑事は離別したパートナーの捜索と惑星の調査の為、巡視艇から下船する事とした、そこで彼は4人の知性体を救出し獣人二人とエルフを連れてエルフの住む土地へ彼等を届ける旅にでる事となる。

不死の大日本帝國軍人よ、異世界にて一層奮励努力せよ

焼飯学生
ファンタジー
1945年。フィリピンにて、大日本帝国軍人八雲 勇一は、連合軍との絶望的な戦いに挑み、力尽きた。 そんな勇一を気に入った異世界の創造神ライラーは、勇一助け自身の世界に転移させることに。 だが、軍人として華々しく命を散らし、先に行ってしまった戦友達と会いたかった勇一は、その提案をきっぱりと断った。 勇一に自身の提案を断られたことに腹が立ったライラーは、勇一に不死の呪いをかけた後、そのまま強制的に異世界へ飛ばしてしまった。 異世界に強制転移させられてしまった勇一は、元の世界に戻るべく、異世界にて一層奮励努力する。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

処理中です...