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第1章
81.no-side─突如現れた狼。
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「「「なんだ?!」」」」
「なに?!」
突如ユキの右耳から現れた大きな狼に、その場にいた4人全員が驚き固まった。
ノラガの3人は以前に2度見ているため、ユキに害があるわけじゃないとなんとなく分かっていた。その為、頭の混乱を整理するのに時間を使う事にしたのだった。しかし、この店の店主であるドランは、突如現れた通常の倍程のサイズの狼を警戒し、そばにあった商品である剣をとって構えた。
『ユキ、大丈夫、大丈夫だよ』
そんなドランの行為を無視し、ライの腕からユキの服を咥えとり、床へ伏せ、自分のお腹辺りにユキを寝かせ丸まった。
ユキの顔を舐め、落ち着かせようとする。顕現し、この体制であればいつ何が起こっても守れるから大丈夫。そう言いながら。
「は、なんだ?おいお前ら、こいつはなんだ?」
未だに混乱しながらも警戒を緩めずにいるドランは、考え込むように固まる3人へ質問を投げかけた。何かを知っているから、剣も抜かずにいるのだろうと考えて。
「ん?……んーなんだろな……」
「俺達もよく知らねぇんだ。ただ、いつもユキを守ろうとしてる感じがする」
「そうだね。初めてあった時も守るようにそばにいたし、前回出てきた時も守るようにそばにいたし」
「だな…突然消えたが……今回は突然現れたな……」
しかし返ってきたのは、よく知らないという言葉。そしてそれに続く、なぜ剣を抜かないかの曖昧な理由。3人から返ってきたその言葉に、ドランは余計に混乱した。
「するとなにか?お前らはこのガキを大切に思ってるくせに、突然現れたり消えたりするこいつを、ただ守ってるような気がするってだけで剣も抜かずに見てるのか?」
「「「……」」」
「言われてみればそうだな…。
警戒するべき対象なのは、今言われて気付いた。良く考えればそうなのだが、全然警戒する気にならないんだ。何故か大丈夫だと思ってしまう。」
「あぁ、そうだな。俺もそうだ」
「うん。なんか大丈夫って思うんだよね…」
3人はドランの言葉を一考し、なぜ警戒しないのかを伝えた。しかし答えは全て感覚的なもの。ドランは呆れ、何も言えなくなった。
「「「「………」」」」
そして4人で沈黙し、この突如現れた狼についてそれぞれ考えることにした。
もちろんドランはその間も警戒は解かずにいた。
ドランにはそんな3人の言う、大丈夫などという根拠の無い自信は湧かなかったからだ。しかし、剣を向けてしまうのは、子供が落ち着こうとすることの邪魔になると考え、鞘にもどし、しかしいつでも抜けるようにし警戒は続けているのだ。
そんな頭の整理に意識を向け始めた4人を他所に、アミュートはユキを落ち着かせようとし、ユキはアミュートが現れたことにより少し安心し、少しずつ落ち着きを取り戻してきていた。
『ユキ、大丈夫?』
『ごめん、大丈夫。少し落ち着いてきた…ありがとう、アミュート』
落ち着きを取り戻し始め、ようやくアミュートからの念話に応えることができた。
ユキが落ち着くまで、アミュートは一方的にユキへ念話で話しかけていたのだ。
ユキはアミュートからの必死な安心してくれ!と言ったアピールに、安心し、少し和んだのだった。
「なに?!」
突如ユキの右耳から現れた大きな狼に、その場にいた4人全員が驚き固まった。
ノラガの3人は以前に2度見ているため、ユキに害があるわけじゃないとなんとなく分かっていた。その為、頭の混乱を整理するのに時間を使う事にしたのだった。しかし、この店の店主であるドランは、突如現れた通常の倍程のサイズの狼を警戒し、そばにあった商品である剣をとって構えた。
『ユキ、大丈夫、大丈夫だよ』
そんなドランの行為を無視し、ライの腕からユキの服を咥えとり、床へ伏せ、自分のお腹辺りにユキを寝かせ丸まった。
ユキの顔を舐め、落ち着かせようとする。顕現し、この体制であればいつ何が起こっても守れるから大丈夫。そう言いながら。
「は、なんだ?おいお前ら、こいつはなんだ?」
未だに混乱しながらも警戒を緩めずにいるドランは、考え込むように固まる3人へ質問を投げかけた。何かを知っているから、剣も抜かずにいるのだろうと考えて。
「ん?……んーなんだろな……」
「俺達もよく知らねぇんだ。ただ、いつもユキを守ろうとしてる感じがする」
「そうだね。初めてあった時も守るようにそばにいたし、前回出てきた時も守るようにそばにいたし」
「だな…突然消えたが……今回は突然現れたな……」
しかし返ってきたのは、よく知らないという言葉。そしてそれに続く、なぜ剣を抜かないかの曖昧な理由。3人から返ってきたその言葉に、ドランは余計に混乱した。
「するとなにか?お前らはこのガキを大切に思ってるくせに、突然現れたり消えたりするこいつを、ただ守ってるような気がするってだけで剣も抜かずに見てるのか?」
「「「……」」」
「言われてみればそうだな…。
警戒するべき対象なのは、今言われて気付いた。良く考えればそうなのだが、全然警戒する気にならないんだ。何故か大丈夫だと思ってしまう。」
「あぁ、そうだな。俺もそうだ」
「うん。なんか大丈夫って思うんだよね…」
3人はドランの言葉を一考し、なぜ警戒しないのかを伝えた。しかし答えは全て感覚的なもの。ドランは呆れ、何も言えなくなった。
「「「「………」」」」
そして4人で沈黙し、この突如現れた狼についてそれぞれ考えることにした。
もちろんドランはその間も警戒は解かずにいた。
ドランにはそんな3人の言う、大丈夫などという根拠の無い自信は湧かなかったからだ。しかし、剣を向けてしまうのは、子供が落ち着こうとすることの邪魔になると考え、鞘にもどし、しかしいつでも抜けるようにし警戒は続けているのだ。
そんな頭の整理に意識を向け始めた4人を他所に、アミュートはユキを落ち着かせようとし、ユキはアミュートが現れたことにより少し安心し、少しずつ落ち着きを取り戻してきていた。
『ユキ、大丈夫?』
『ごめん、大丈夫。少し落ち着いてきた…ありがとう、アミュート』
落ち着きを取り戻し始め、ようやくアミュートからの念話に応えることができた。
ユキが落ち着くまで、アミュートは一方的にユキへ念話で話しかけていたのだ。
ユキはアミュートからの必死な安心してくれ!と言ったアピールに、安心し、少し和んだのだった。
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