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第1章

39.変な目覚まし。

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ケインとまたねと言葉をかわすと、またふわふわとした感覚になる。

あ!狼さんの名前決めてないじゃん!うそ……どうしよう……。

『すまん!それは、お昼寝してくれ!その時にきめよう!』
ケインの慌てた声が聞こえる。

なるほど…お昼寝ね。りょーかい。




ちゅんちゅん……
鳥の鳴き声が聞こえる。

ギュギャーーー!
え…なにこれ。

ぱちっ。
変な音が聞こえ、目が覚める。
辺りを見渡し、窓をみつけ外を見ると、まだ薄暗かった。明け方辺りだろう。

ギュギャーーー!

また聞こえる。なにこれ?
キョロキョロと辺りを見渡すと、みんなはまだ寝ている。変な音を立てるようなものは無さそうだけど……

ギュギャーーー!

はっ!
ずっとキョロキョロとしていると、目撃してしまった。
それはノアさんの、目覚まし。何の変哲もない目覚ましが、時折化け物の顔の形に変形し、騒ぐ。

ギュギャーーー!

うるさ!え?センスどうなってんの?こわ。異世界の目覚ましってこんなんなの?謎だわ。
そしてなぜこんなにうるさいのに誰も起きない。

ギュギャーーー!

もうわかったって!うるさいな!
え…これどうやって止めるの?
止めたくて目覚ましの周りでわちゃわちゃとし、ぺたぺたと目覚ましを触る。

すると丁度、口が現れる当たりを触れている時に──。
ギュギャーーコモモモモ……

手を食べられた。
しかし、目覚ましに現れた化け物の顔が驚いた顔をし、手を強く噛まないようにハムハムして、口から手を追い出そうとした。
なんか可愛いな…やさしい。
しかし、初め強く噛まれて手が痛い。

痛みで静かに涙が零れる。
この体は本当に痛みに弱い。

ぽろぽろと涙がこぼれると、目覚ましのお化けの目が泳ぎ、オドオドとし始めた。
そして、舌で俺の手を完全に追い出し、

ひょ~~~ひょっひょ~~~

と俺の様子を伺いながらへんな鳴き声を上げた。ちょっと面白い。
慰めようとしているのだろうか?
だが、痛みから出ている俺の涙は止まらずぽろぽろと零れる。

すると、困ったよう顔をした目覚ましのお化けから、手がにゅっと出てきた。
急に出てきた為、滅茶苦茶驚いた。手まで出てくるんだな……
そんなことを思っていると、その手で、俺の耳をそっと閉じた。

ギュギャーーーーーー!!!!!

すると、今までより一際大きい声を上げた。
耳を塞いだのはこの為だと思われるが、大きすぎて、全然聞こえる。滅茶苦茶聞こえる。
びっくりしすぎて心臓痛い。耳痛い。頭痛い。
すると涙ももっと零れる。

しかし、その大きな音に驚いたのは俺だけではなく、寝ていたみんなが飛び起きた。

「「「なんだ(なに)?!」」」

そして、こちらを見て皆がぎょっとする。
それは、俺が泣いてるから?それとも、目覚ましから手が出てるから?それが俺の耳を塞いでるから?
多分どれもだろう。俺ならそうだ。

「どうしたの?!」
ライさんが、俺のことを抱きしめ、ぽんぽんとしてくれる。
一瞬目覚ましのことを睨んでいた。

「こいつか?こいつがなにかしたのか?」
いやいや、違うよ?!
「壊すか?」
いや、ガイさんやめて!壊さないで!

ノアさんとガイさんの言葉に、目覚ましのお化けがギョッとして、バツの悪そうな顔をする。

「やっぱりお前か…」
いや違うよノアさん!
てかお化け!なんでそんな顔するの?!
あ、俺の手を噛んで、最初に泣かせたからか…いやあれは仕方ないでしょ!急に口に手が入ると反射的に閉じるものだよ!

「やっぱり壊そう」
ガイさん!そればっかり!!

「ちぁうの!こぁさないで!!!」

ガイさんが今にも壊しそうだったので、ライさんの腕から抜け出し、目覚ましを持ち守る。
子供の体には思ったより大きな目覚ましだった為、両手で抱きしめる。

すると目覚ましのお化けが手を伸ばし、きゅっとしてきた。
なんかさっきから可愛いなこの目覚まし。初めは化け物みたいな顔を急に出てくるから怖かったけど。

「ユキ、ならどうして泣いていた?その手はどうした?」

手を見ると歯型が着いていた。

ギャ!

俺の手を見て目覚ましのお化けが驚きの声をあげる。

「だいろーぅらよ~!」
そう声をかけ、ヨシヨシと撫でてやる。

「そいつに噛まれたんじゃないのか?」
「んとね、ぼくぁね、て、おくちに、いれちゃっちゃから。らからね、このこ、わるくにゃいよ!」












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