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第1章

26.ずんぐりむっくりのおっちゃん─1。

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「次!」

小屋前にいる門番が次に待っているグループを呼ぶ声が聞こえた。しかしすぐには入ってこず、しばらくすると冒険者3人組の姿が見える。そしてそのうちの一人は、布に包まれた小さな子供を抱えていた。
入ってきた初めの方は、少しぐずっているような様子だったが、中を見回し、ご機嫌MAXで大興奮だった。
チラチラと見える目はキラッキラに輝いていて、ワクワクしたような表情がとても可愛い。

子供が大興奮の間に、冒険者3人がギルド証を見せ、子供のことを話してくれる。

その子供は記憶喪失と思われ、森の中で血まみれのところを拾ったらしい。
確かに、冒険者が子供を連れているのは違和感があったから、何か訳ありなのだろうとは思ったがまさかそんなことだとは…

子供はずっと興奮していて、さっき抱えていたノアという冒険者が揺すってやっと気がついたようだった。

通行証を持っていないそうなので、原則として、必要最低限の情報と犯罪の有無がわかる石に触れてもらう必要があった。その為に、興奮状態の子供を1度正気に戻したのだが、石に触るのでまた興奮したようだった。
石に触れる時は、ものすごく緊張した面持ちで、怖々としていたが、石が光って、離すよう促すと、勢いよく離してしまい、ひっくり返ってしまった。
勢いよく頭をぶつけて、『あーこりゃ泣くな』なんて思って耳を塞ぐ準備をしていると、頭を抑えて蹲ったまま泣き声が聞こえてこないため、『この子は我慢強いのだろうか』とか、『そんなに痛くなかったのか?』などと思っていた。しかし、冒険者の1人、ガイが近付いて様子を伺うとやはり泣いていたようだ。
しかし、うちの子とはえらい違いだ。うちの妻もそう思ったようで、冒険者達にその事を話していた。
冒険者達の話を聞くと、この子はいつも声を抑えて、ひたすら耐えるように泣くそうだ。
きっと、覚えていないだけで、なにか泣くことに纏わる嫌なことがあったのだろうなと、その話を聞いて推察した。

そうこうしていると、子供が泣きながらウトウトとし始めた。
聞けば泣くのは本日三度目らしいからきっと疲れたのだろう。ただでさえ泣くのには体力を使う。それなのに、堪える様なあんな泣き方…疲れるのも頷ける。

そして眠った子供のその寝顔に、俺は目を奪われた。いや俺だけではないだろう。その場にいた全員が子供の寝顔に釘付けだった。
とても可愛くて、愛おしい。まるで天使のような寝顔。
沢山泣き、疲れたような表情をしているが、そこにはたしかに可愛らしさがあった。
きっと、泣いたあとでなく、普通に眠ったとしたら、それはもう、天使なのだろう。
この寝顔、疲れた表情をしていても、充分癒され、荒んだ心が浄化されるようだった。
きっと、疲れていない時の普段の寝顔を見たら、浄化どころではなく、召されてしまうかもしれない。

それほどまでの寝顔にその場にいた全員、釘付けになり、すっかり石の結果を見逃してしまった。
こんなに可愛らしい子に犯罪歴なんてある筈はないが、一応しっかりと確認し、記録する必要があった。そのため、冒険者3人組と話し合い、俺たちの休憩室で起きるまで待っていてもらうこととなった。
その際、この子供の通行料は先に払ってもらった。









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