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第1章
25.暖かい涙。
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「それじゃあ、もう一度この石に触れてくれ」
ずんぐりむっくりのおっちゃんに促され、俺はもう一度石と呼ばれる水晶っぽいものにそっと触れた。
さっき1回触ってるから、さっきほどの緊張感はなかったけれど、それでも割れたら怖くてそっと、恐る恐る触った。
──ポォッ
そっと触れると淡く青いひかりを放ち、文字が石の中に浮かび上がった。
今度は興奮せずに、ゆっくり手をどける。
石の中には、種族と名前、性別と年齢の4つが書かれていた。
〔種族:人間 名前:ユキ 性別:男 年齢:2歳〕
おー!ちゃんと付けてもらった名前になってる!やったー!性別もちゃんと男でよかった~!もし女の子だったらどうしようかと思った……
「お前やっぱり2歳なのか…じゃあやっぱり……」
そんなことを考えて、俺がホッとしている傍ら、ガイさんが俺の年齢をみて何やらブツブツと言っている。
ケインも2歳って言ってたし、あってるよ?なに?2歳に見えないって話?話し方が2歳にしては大人びてるから?敬語だし。それとも滑舌死んでて発音下手すぎるからもっと小さいと思ってた?発音以外は2歳児に擬態できてるつもりだったんだけど?
「あいしゃん、ろうちたの?にゃにか、らめらった?」
「あ、いや、なんでもない。気にするな」
「…?しょうにゃにょ?」
「あぁ。それより、名前、やっぱり前のは分からないんだな。
もしかして、鑑定が終わってから名付けた方がよかったのか?余計なことしたか?」
ガイさんがまたブツブツと言い出した。
名前は別に前の出なくていいよ。どうせ何も表示されないか、前世の名前が表示されるだけでしょ?新しい名前気に入ってるし、俺は気にしてない。
「あいしゃん。ぼくね、ユキ、らよ?」
「……あぁ、そうだな。」
返事をしてくれるガイさんは、一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに笑顔になってくれた。
それを見て俺は意思がちゃんと伝わったと、ほっとした。
「じゃあ、何も問題ないようだし、通行料はさっき貰った。もう通っていいぞ。というか、閉門してるし、俺も一緒に出るよ」
ずんぐりむっくりのおっちゃんに許可を得ることが出来たので、ようやく街へ入れるそうだ。
それにしても今、閉門って言った?
俺が思っていたよりも寝てたんじゃ……だってまだ明るかったよ?小屋に入った時。
え?まじ?やらかしすぎじゃない?これはちゃんと謝らないと!
「あいしゃん!おいしゃん!」
「「ん?なんだどうし」」
ガイさんとおっちゃんがシンクロして返事してくれるのが少し可笑しいが、そんなこと思ってる場合じゃない!
「あにょ、たくしゃん、またしぇちぇ、ぉめんにゃしゃい…!」
「いや、気にするな!可愛い寝顔が見られて、残業代も貰えるんだ。最高すぎるだろう。むしろその残業代でお前らにご馳走してやりたいくらいだ。」
「そうだ。俺もお前の寝顔を見て癒されていた。気にする必要は無い」
2人ともそんなふうに言ってくれるけど、俺は聞き逃さなかった。残業……滅茶苦茶待たせてるじゃん!!
気にするなって?ありえない。気にするよ!
「………ほんちょに、ぉめんにゃしゃい。ぉめんにゃしゃい」
あー!なんで、ちゃんと発音できないのーー!
ちゃんと謝らないと!特におっちゃん!ガイさんなんて、ずっと抱いててくれたんだよ?やばいよ。腕痺れてない?大丈夫?あーもー!残業させるとか最悪。俺が勝手に興奮して頭打って、もうすぐ高校生になる年齢なのに、義務教育修了の、働ける年齢の半大人みたいな年齢なのに、泣いて、疲れて、ねて。迷惑かけて。最悪……そんなんだから、前世でも家政婦扱いだったんだ。俺なんか愛する価値がないから。迷惑しかかけてないもん。最悪。あーもー!まじ……
「うぅ……ぉめんにゃしゃい……っ……」
やばい。あーほらまた。涙。もういいって。もう泣くなよ。子供が泣いたら大人は許すしかなくなるんだから。ダメだ。ほんとに。泣いちゃダメだ。泣いたら余計に迷惑かけるんだ。
転生してから涙腺バグってるけど、今はないちゃダメだ。ほんとに。さらに迷惑かけるのだけは絶対だめ。我慢しろ!
「お、おい?大丈夫か?泣くな、気にしなくていいぞ?お前は何も悪くないんだから。見逃してしまった俺たちの責任だから」
ほら。迷惑かけて困らせてる。泣きやめ。我慢だ。涙をこぼすな。一滴たりとも零しちゃダメだ。
「ぁぃ…ぉめんにゃしゃい」
「いい。謝るな。俺達は子供が好きだ。だから、お前の寝顔を誰にも邪魔されず、ずっと見られたんだ、幸せな時間だったよ。だから、お前が謝ることは何もない。
ノアたちに自慢できるんだ!ユキの可愛い寝顔見られなくて残念だったな!って。
だから、な?もう泣くな。
幸せな癒しの時間をありがとう。ユキ」
あぁ、ガイさん。あなたは本当に……優しすぎる。
ガイさんは俺の背中をポンポンと優しく叩きながら、揺すってあやしてくれる。
ガイさんの優しさが嬉しくて、心が暖かくなる。
「あい…!あいしゃん、おいしゃん!ありあちょう!」
さっきまでは罪悪感から、溢れそうになっていた涙が、今度は暖かい、嬉し涙へと変わり俺の頬を伝う。
待たせてしまったことに対する罪悪感はまだある。しかし今は、待っててくれたその優しさにお礼を、感謝の気持ちを伝えるのが正解だと思う。
それに、これ以上迷惑をかける訳には行かないから。
ずんぐりむっくりのおっちゃんに促され、俺はもう一度石と呼ばれる水晶っぽいものにそっと触れた。
さっき1回触ってるから、さっきほどの緊張感はなかったけれど、それでも割れたら怖くてそっと、恐る恐る触った。
──ポォッ
そっと触れると淡く青いひかりを放ち、文字が石の中に浮かび上がった。
今度は興奮せずに、ゆっくり手をどける。
石の中には、種族と名前、性別と年齢の4つが書かれていた。
〔種族:人間 名前:ユキ 性別:男 年齢:2歳〕
おー!ちゃんと付けてもらった名前になってる!やったー!性別もちゃんと男でよかった~!もし女の子だったらどうしようかと思った……
「お前やっぱり2歳なのか…じゃあやっぱり……」
そんなことを考えて、俺がホッとしている傍ら、ガイさんが俺の年齢をみて何やらブツブツと言っている。
ケインも2歳って言ってたし、あってるよ?なに?2歳に見えないって話?話し方が2歳にしては大人びてるから?敬語だし。それとも滑舌死んでて発音下手すぎるからもっと小さいと思ってた?発音以外は2歳児に擬態できてるつもりだったんだけど?
「あいしゃん、ろうちたの?にゃにか、らめらった?」
「あ、いや、なんでもない。気にするな」
「…?しょうにゃにょ?」
「あぁ。それより、名前、やっぱり前のは分からないんだな。
もしかして、鑑定が終わってから名付けた方がよかったのか?余計なことしたか?」
ガイさんがまたブツブツと言い出した。
名前は別に前の出なくていいよ。どうせ何も表示されないか、前世の名前が表示されるだけでしょ?新しい名前気に入ってるし、俺は気にしてない。
「あいしゃん。ぼくね、ユキ、らよ?」
「……あぁ、そうだな。」
返事をしてくれるガイさんは、一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに笑顔になってくれた。
それを見て俺は意思がちゃんと伝わったと、ほっとした。
「じゃあ、何も問題ないようだし、通行料はさっき貰った。もう通っていいぞ。というか、閉門してるし、俺も一緒に出るよ」
ずんぐりむっくりのおっちゃんに許可を得ることが出来たので、ようやく街へ入れるそうだ。
それにしても今、閉門って言った?
俺が思っていたよりも寝てたんじゃ……だってまだ明るかったよ?小屋に入った時。
え?まじ?やらかしすぎじゃない?これはちゃんと謝らないと!
「あいしゃん!おいしゃん!」
「「ん?なんだどうし」」
ガイさんとおっちゃんがシンクロして返事してくれるのが少し可笑しいが、そんなこと思ってる場合じゃない!
「あにょ、たくしゃん、またしぇちぇ、ぉめんにゃしゃい…!」
「いや、気にするな!可愛い寝顔が見られて、残業代も貰えるんだ。最高すぎるだろう。むしろその残業代でお前らにご馳走してやりたいくらいだ。」
「そうだ。俺もお前の寝顔を見て癒されていた。気にする必要は無い」
2人ともそんなふうに言ってくれるけど、俺は聞き逃さなかった。残業……滅茶苦茶待たせてるじゃん!!
気にするなって?ありえない。気にするよ!
「………ほんちょに、ぉめんにゃしゃい。ぉめんにゃしゃい」
あー!なんで、ちゃんと発音できないのーー!
ちゃんと謝らないと!特におっちゃん!ガイさんなんて、ずっと抱いててくれたんだよ?やばいよ。腕痺れてない?大丈夫?あーもー!残業させるとか最悪。俺が勝手に興奮して頭打って、もうすぐ高校生になる年齢なのに、義務教育修了の、働ける年齢の半大人みたいな年齢なのに、泣いて、疲れて、ねて。迷惑かけて。最悪……そんなんだから、前世でも家政婦扱いだったんだ。俺なんか愛する価値がないから。迷惑しかかけてないもん。最悪。あーもー!まじ……
「うぅ……ぉめんにゃしゃい……っ……」
やばい。あーほらまた。涙。もういいって。もう泣くなよ。子供が泣いたら大人は許すしかなくなるんだから。ダメだ。ほんとに。泣いちゃダメだ。泣いたら余計に迷惑かけるんだ。
転生してから涙腺バグってるけど、今はないちゃダメだ。ほんとに。さらに迷惑かけるのだけは絶対だめ。我慢しろ!
「お、おい?大丈夫か?泣くな、気にしなくていいぞ?お前は何も悪くないんだから。見逃してしまった俺たちの責任だから」
ほら。迷惑かけて困らせてる。泣きやめ。我慢だ。涙をこぼすな。一滴たりとも零しちゃダメだ。
「ぁぃ…ぉめんにゃしゃい」
「いい。謝るな。俺達は子供が好きだ。だから、お前の寝顔を誰にも邪魔されず、ずっと見られたんだ、幸せな時間だったよ。だから、お前が謝ることは何もない。
ノアたちに自慢できるんだ!ユキの可愛い寝顔見られなくて残念だったな!って。
だから、な?もう泣くな。
幸せな癒しの時間をありがとう。ユキ」
あぁ、ガイさん。あなたは本当に……優しすぎる。
ガイさんは俺の背中をポンポンと優しく叩きながら、揺すってあやしてくれる。
ガイさんの優しさが嬉しくて、心が暖かくなる。
「あい…!あいしゃん、おいしゃん!ありあちょう!」
さっきまでは罪悪感から、溢れそうになっていた涙が、今度は暖かい、嬉し涙へと変わり俺の頬を伝う。
待たせてしまったことに対する罪悪感はまだある。しかし今は、待っててくれたその優しさにお礼を、感謝の気持ちを伝えるのが正解だと思う。
それに、これ以上迷惑をかける訳には行かないから。
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