21 / 218
第1章
20.※ノア視点 泣かないで。
しおりを挟む
あぁ、さっきまで門の中に入るのを楽しみにしてワクワクしていた可愛いこの子供を、ユキを、泣かせてしまった。
ユキの話をしていたから、聞こえたら可哀想だと思い、耳を塞いだのだ。
だって、うっかり俺たちの話を聞いて、自分の髪は珍しく危険だということを知って怯えたら。
愛されていない証だと知り、傷つけてしまったら。
辛い過去を封印して記憶を失っているのだとして、俺たちがそれを呼び起こすキッカケになってしまったら。
そう思って、ユキの耳を塞いでいたのだ。
まさか耳を塞がれることに、恐怖心を抱くなんて思わなかった。
守るためにとった行動が逆にこいつを傷付けてしまった。
情けない。不甲斐ない。申し訳ない。
宝石のように輝く瞳は、空を流し込んだような色をしていてとても綺麗だ。そんな瞳にはうっすらと涙がたまり、聞こえないのが嫌だと、必死に堪えるように伝えてくる。きっと何も聞こえなくなって怖かったのだ。何も覚えていないから、何が怖いのか分からない。しかし、なんとなく怖い。と言った感じだろうか?
怖がらせてしまったことを謝ると、困ったような顔をして、寂しそうな顔をして。
大きく綺麗な空の瞳は、涙をためきることが出来ず、大粒の涙を次から次へと零す。声を押し殺し必死に俺の服に縋り付き泣く。
この子は何故、年頃の子供のように大声を上げて泣かないのだろう。
声を上げて泣けばいいのに。迷惑とでも思っているのだろうか?
この子は頭がいい。だから、俺らにも無用な気を遣う。
こんなに小さな子供が、舌も回らずろくに喋れもしない子供が、俺らに敬語を使って喋る。
これくらいの子供は単語単語で必死にしゃべったりするのが普通じゃないのか?
それこそ、親や周りの者が常に敬語や丁寧な口調で喋っている貴族の子供でも、これくらいの歳だとまだ無理だ。言葉を覚えるので精一杯だろう。
だから、ある程度喋れるようになる5歳くらいまでは口調は滅多に注意されない。敬語を使わなくてはならない者との交流はしないのだ。
それなのに、ユキは恐らく2歳。それもまだ小さいから2歳になったばかりか、もしくはまだ1歳なのかもしれない。2歳というよりは1歳半くらいだろうか。
兎に角そんな、まだまだ幼い子供なのだ。敬語どころか、これ程しっかり言葉を理解し、喋っているのは少し異質だ。
一体どんな環境にいたのか…。頭がいいから理解ができるのか、理解せざるを得ない環境だったのか。そういう風にされたのか……嫌な憶測ばかりで何も分からない。なにも、分からないのだ。
唯一分かるのは、俺がもうこの子を幸せにしたいと、心から強く願っているということ。
そしてそれは俺だけではないだろう。
大丈夫。この子はこれからたくさん愛される。愛してやる。少しでも幸せになれるように。
ユキの話をしていたから、聞こえたら可哀想だと思い、耳を塞いだのだ。
だって、うっかり俺たちの話を聞いて、自分の髪は珍しく危険だということを知って怯えたら。
愛されていない証だと知り、傷つけてしまったら。
辛い過去を封印して記憶を失っているのだとして、俺たちがそれを呼び起こすキッカケになってしまったら。
そう思って、ユキの耳を塞いでいたのだ。
まさか耳を塞がれることに、恐怖心を抱くなんて思わなかった。
守るためにとった行動が逆にこいつを傷付けてしまった。
情けない。不甲斐ない。申し訳ない。
宝石のように輝く瞳は、空を流し込んだような色をしていてとても綺麗だ。そんな瞳にはうっすらと涙がたまり、聞こえないのが嫌だと、必死に堪えるように伝えてくる。きっと何も聞こえなくなって怖かったのだ。何も覚えていないから、何が怖いのか分からない。しかし、なんとなく怖い。と言った感じだろうか?
怖がらせてしまったことを謝ると、困ったような顔をして、寂しそうな顔をして。
大きく綺麗な空の瞳は、涙をためきることが出来ず、大粒の涙を次から次へと零す。声を押し殺し必死に俺の服に縋り付き泣く。
この子は何故、年頃の子供のように大声を上げて泣かないのだろう。
声を上げて泣けばいいのに。迷惑とでも思っているのだろうか?
この子は頭がいい。だから、俺らにも無用な気を遣う。
こんなに小さな子供が、舌も回らずろくに喋れもしない子供が、俺らに敬語を使って喋る。
これくらいの子供は単語単語で必死にしゃべったりするのが普通じゃないのか?
それこそ、親や周りの者が常に敬語や丁寧な口調で喋っている貴族の子供でも、これくらいの歳だとまだ無理だ。言葉を覚えるので精一杯だろう。
だから、ある程度喋れるようになる5歳くらいまでは口調は滅多に注意されない。敬語を使わなくてはならない者との交流はしないのだ。
それなのに、ユキは恐らく2歳。それもまだ小さいから2歳になったばかりか、もしくはまだ1歳なのかもしれない。2歳というよりは1歳半くらいだろうか。
兎に角そんな、まだまだ幼い子供なのだ。敬語どころか、これ程しっかり言葉を理解し、喋っているのは少し異質だ。
一体どんな環境にいたのか…。頭がいいから理解ができるのか、理解せざるを得ない環境だったのか。そういう風にされたのか……嫌な憶測ばかりで何も分からない。なにも、分からないのだ。
唯一分かるのは、俺がもうこの子を幸せにしたいと、心から強く願っているということ。
そしてそれは俺だけではないだろう。
大丈夫。この子はこれからたくさん愛される。愛してやる。少しでも幸せになれるように。
40
お気に入りに追加
787
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
この手が生み出すキセキ ~ハンクラ魔女のお店にようこそ~
あきづきみなと
ファンタジー
都市の一画に魔法使いの地区がある。
「魔法区」と呼ばれるその片隅に、とある店があった。
常にフードをかぶった小柄な店主は、『ハンクラ』と読める看板を掲げているが、その意味を語らない。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
異世界で双子の勇者の保護者になりました
ななくさ ゆう
ファンタジー
【ちびっ子育成冒険ファンタジー! 未来の勇者兄妹はとってもかわいい!】
就活生の朱鳥翔斗(ショート)は、幼子をかばってトラックにひかれ半死半生の状態になる。
ショートが蘇生する条件は、異世界で未来の勇者を育てあげること。
異世界に転移し、奴隷商人から未来の勇者兄妹を助け出すショート。
だが、未来の勇者アレルとフロルはまだ5歳の幼児だった!!
とってもかわいい双子のちびっ子兄妹を育成しながら、異世界で冒険者として活動を始めるショート。
はたして、彼は無事双子を勇者に育て上げることができるのか!?
ちびっ子育成冒険ファンタジー小説開幕!!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
1話2000~3000文字前後になるように意識して執筆しています(例外あり)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
カクヨムとノベリズムにも投稿しています
不死の大日本帝國軍人よ、異世界にて一層奮励努力せよ
焼飯学生
ファンタジー
1945年。フィリピンにて、大日本帝国軍人八雲 勇一は、連合軍との絶望的な戦いに挑み、力尽きた。
そんな勇一を気に入った異世界の創造神ライラーは、勇一助け自身の世界に転移させることに。
だが、軍人として華々しく命を散らし、先に行ってしまった戦友達と会いたかった勇一は、その提案をきっぱりと断った。
勇一に自身の提案を断られたことに腹が立ったライラーは、勇一に不死の呪いをかけた後、そのまま強制的に異世界へ飛ばしてしまった。
異世界に強制転移させられてしまった勇一は、元の世界に戻るべく、異世界にて一層奮励努力する。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる