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第1章

13.ガイ─2。

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俺らの質問が難しかったのか、一気に喋ったからなのかは分からないが、子供がきょとんとし、小首を傾げている。

そしてここがどこだか分からないという。
小さな口から紡がれるそれは、とても舌っ足らずでどこか不安そう……。
そして俺たちには色々な可能性が頭をよぎった。
攫われた。捨てられた。記憶喪失。どれも可能性大で、見事に3人揃って『あー』しか言えなくなる。

そこからライが色々と質問をしてくれた。
そして、この子はここがどこだか分からない。なぜいるのかも分からない。名前も分からない。自分に関することで、わかることはないそうだ。
そこで俺たちはこ、の子はきっと記憶喪失なのだろうと判断した。
そして俺は少し現実逃避がしたくなり、この子が可愛いという情報のみを仕入れた。
ノアも同じだったらしく、ライに強めに後頭部を殴られていた。

俺はちょっとこの子供の可愛さにやられ、頭がスカスカになっていたが、それを見て少ししっかりする。
連れていくという話を出し、俺たちは移動することにした。

何故かライが当たり前のようにあの子と、手を繋いでいることに多少不満を覚えていると、自己紹介をして欲しいと頼まれた。
確かに、自己紹介がまだだったなと思い出す。

そしてライ、俺、ノアの順に自己紹介していく。まぁ自己紹介と言っても名前を教えるだけだが。
ノアは“ノラガ”のリーダーなので、それも含めてしっかり自己紹介をしていた。
するとやっぱり、冒険者や、パーティー、様々なことがわからないらしい。まぁ子供だからというのもあるだろうが、聞いたこともないと言ったような表情をしていたため、本当に記憶が無いのだろう。

自己紹介を終え歩き出すと、今度は躓いて転んだらしい。
泣かなくて偉いなと思ったら、大きくて綺麗な青い瞳いっぱいに涙をため、次から次へと零していた。これくらいの小さな子供なら、大声を出して泣きそうなものなのに、必死に我慢している。この子は声を出して泣ける環境にいなかったのだろうか…?記憶がなくても本能的に声を我慢しているのだろうか…。
こんなに小さな子供が必死に声を殺して泣く姿はとても胸を締め付けられる。
どうやって泣き止ませるのか、宥めるのかがわらずノアとライが2人しておろおろとしていた。
俺は割とよく孤児院へ遊びに行き、よく世話をするので泣く子供には慣れている。だからそんなには慌てなかった。

擦りむいた足に薬を塗り、傷が塞がる。
そのことに気づいたのか、足をまじまじと見つめ目を輝かせる。そして、急に表情を曇らせた。
そしで、俺の服の裾をちょいちょいと引っ張った。ガイさんと俺を呼ぶが、発音が難しく『あいしゃん』と呼んでいる。可愛い。

自分は血まみれだったんじゃないか、と気になったらしい。
そりゃ不思議だよな。怪我してたって聞いたのに今はピンピンしてるから。

治療したと伝えると、『ありがとう』と感謝を伝えてきた。
かわいいかわいい…!しかし、感謝されるべきはライだ。ライがいなかったらこの子は今頃死んでいただろう。動物達に見守られて。






 
 
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