カピバラになりたい牛

あめ

文字の大きさ
11 / 12

11.

しおりを挟む
…ふぁ~よく寝た。
ちょっと気分もスッキリしたわ。
起きたらやっぱり飼育員さんに会いたくなっちゃった…今朝は全然話せなかったし、会いたいな~来てくれないかな~

そんなことを思っているとなんか沢山のお友達が私の周りに来てくれた

『どうしたの?みんな』
『うん。みんな君に元気がないからきたんだよ。』

『あら、心配してくれたのかしら?ふふっ嬉しいわ』

『なんだ、少し元気そうだね。みんな心配してたんだよ』
『そうね~少し寝たらスッキリしたわ…』
『まだちょっとスッキリしてないって感じだね』
『えぇ。私、どうすればカピバラになれるかしら』

『ほら!やっぱり理由はこれだったでしょ?』
『『『そうだな…』』』

1番仲のいい子にスッキリしていないとバレてしまったわ。
そしたら急に、みんなの方をふりかえってよく分からないことを言い出した。
なんの事かしら……?

『?なんのことを言ってるの?』
『あぁ、気にしないで!こっちの話。
それで?君はどうしてもカピバラになりたいの?今すぐに?』
『えぇ、なれるなら今すぐになりたいわ。でも、出来ないでしょ。分かってるわよ』

『……そうだね。なれないね。でもさ、ほんとにカピバラになる必要ある?
そりゃ、なりたいかもしれないけど、あの人十分君のこと心配してたよ?
君が眠ったあと、僕の世話をしに来たんだけど、すごく心配してたよ。
「お前は昨日ヤナと喋ってたよな。何か知らないか」って僕と言葉が通じる訳でもないのに聞いてきたよ。普段はあまり喋らないのに。』

『俺の時もだったぞ。「ヤナは何かストレスを感じているみたいだが、何か知らないか」って。急に話しかけられてビックリした』

『私の時もだったわ。みんなに聞いてるってことはそれだけあなたのことが心配だったのよ。それだけでもう十分じゃない?』

うそ……そんなに心配してくれてたの?本当に?……みんなに聞いて回るほどに私のことが心配だったの?私はカピバラじゃなくて、牛なのに?

『牛のままでも、いいのかしら……?
カピバラにならなくても、いいのかしら?』

『そうだね。カピバラになっても結ばれるわけじゃないし、今のままの君で十分だよ。君は優しくて、元気でとっても可愛いから、十分あの人の心の中に入れてるよ。大丈夫。』

『そうかしら……そうかしら?本当だったらとっても嬉しいわ……!』

私は嬉しくて、涙がこぼれた。カピバラにならなきゃダメだと思ってたから。まさかあの人の心にちゃんと存在してたとは思わなかったから。

『そうだよ。それでもカピバラになりたいって言うなら、カピバラになる方法を一緒に探してあげる。
でも、見つかればいいな~くらいの気持ちの方が楽だよ。今の君がいなくなると、きっとあの人は悲しむよ。カピバラになるよりも幸せな事だと思うな』

『そうね……私は今のままでいいわ。あなた達ともお別れになっちゃうのは寂しいし、何より“カピバラ”として見られるよりも“私”を見て欲しいもの』

『うん。じゃあ、もう元気出た?』
『ええ!出たわ!ありがとう、みんな』

私はこのままでいいのね。こんなに心配してくれるお友達がいるもの。飼育員さんの心にも十分いるみたいだし。
“いつかなれたらいいな”とは思うけれど、前ほど必死になりたいとは思わない。

今はとっても飼育員さんに会いたいわ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...