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第十一話 初めてお肉が食卓に上ります

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「晴成さん、今何をやったんですか?」

 ラフィアがひどく興奮していた。彼女は鬼気迫るように俺を問い詰める。

「何って、ホーンラビットを魔法で倒した、としか……」

 ラフィアが何を焦っているのか分からない。俺は盾にぶつかったホーンラビットを火魔法で倒しただけなのだが……

「その倒し方がおかしいのです。今、盾からファイアを放ちましたよね?」

「まぁ、盾にぶつかった瞬間を狙ったから、そうなるのかな?」

「それです。それがおかしいのです。通常、魔法を放つときは杖を使うか、手から直接かのどちらかなのです」

 え? だって、武器は腕の延長線上だって教わったし、盾だって似たようなものじゃない?

「ほら、かの有名な戦闘民族も若い時に、足から気功波を出して空飛んだし……」

「何の話をしているんですか!」

「あ、いや……でも、手から直接は分かるけど、杖も盾も装備品じゃない、何がそんなに違うの?」

 つい漫画の話を振ってしまったよ。怒った顔も可愛かったが、迫力もあったな……

〈主様よろしいですか?〉

「ん? メーダス、何?」

〈そもそも杖は魔石か魔玉が付いており、それが魔法そのものを増幅させて魔法が発動するのです。ですから盾を通して魔法を発動するというのは通常考えられないことなのです〉

「でも、盾でも魔石とか魔玉とか付いているものあるんでしょ? これも似たデザインだし」

〈それは用途が違うのです。盾や鎧についている魔玉等は大概バフ効果の付与がなされたものが埋め込まれているので、魔法の発動や増幅を助けるものでは無いのです。もちろん、その盾も例外ではありません〉

「付け加えますと、エンチャントの付いた魔玉等がある場合はそちらの方に魔力が引っ張られるため、魔法を発動することが出来ないはずなのです」

 つまり、俺がおかしい、と……

 地球に居た頃から、変わっているというか、人と同じことが出来ないというか、そういう普通が苦手だったけど、ここでも相変わらずか。やれやれ……

「まぁ、出来たから良いんじゃない?」

「まぁ、確かにそうなんですが……そうですね、晴成さんが普通のはずないですから」

 規格外。それは良くも悪くも多くの人と違うこと。多くの人以上に出来ることも、多くの人並みに出来ないことも、規格から外れているのだ。ラフィアは前者の意味合いが強そうに言うが、俺自身の評価はほぼ後者だ。落ち込みそう……
 こんな時は気持ちを切り替えて。

「メーダス、少ししたら続きをお願い」

〈承知いたしました〉

◇◆◇◆


 西の空が赤く染まりだす。だいぶ陽が傾いてきたようだ。
 あれから30匹は倒しただろうか。かなり体が軽くなったからレベルもそれなりに上がっているとは思うのだが、レベルアップのファンファーレが鳴らないのでステータスを確認しないと分からない。
 集団戦でファンファーレが鳴った日には気が散って仕方ないから、無くて助かるといえば助かるんだが、なぁ……

「ラフィア、今日はこれくらいにして帰ろうか」

「はい、そうしましょう。お疲れになりましたでしょう、後でマッサージでも致しますわ」

「うん、宜しく。しかし、ラフィア達のお陰で大分レベルアップした気がするよ」

 戦利品は【次元収納】にしまって手ぶらで帰る。う~ん、便利!
 因みに“解体”機能付ときた。素材以外は残らないのだが、何かにつけて便利だよ。付け加えると素材以外の部分は”魔素”となって、大地に還元されるんだとか。リソース大事だよね!

◇◆◇◆


「ただいまぁ~」

「ふふ、お帰りなさい」

 ラフィアが少しおかしそうに笑っている。二人して外出したんだから誰もいないって分かっていても、ただいま、って言うよね。

「まずはお風呂かな。それから晩御飯作って、メーダス達に話すことがあって、洗濯もしなくちゃだし、ステータスチェックもしたいな。やる事たくさんだ」

「晴成さん、マッサージも受けてくださいね」

「うん、お願い。先ずはお風呂行こうか」

「はい」

 洗濯機でもあれば楽なんだけど、電気かぁ……変電機に交流電源。何かいい手段はないものか……
 今更ながら家電の力を思い知るよ。メイドさんが欲しい……

「晴成さん、どうしました?」

「何でもない。今行くよ」

 二人してまったりお風呂を堪能しました。
 え? お風呂の場景? 毎回覗かなくてもいいでしょ?

◇◆◇◆


 ――ジュゥ~
 肉が焼ける音と香ばしいにおいが食欲をそそる。
 風呂から出た俺は火魔法を使ってフライパンでホーンラビットの肉を焼いている。え? 着替え? そんなのDPで交換ですよ。もちろん地球産。ついでにあと何着か交換したよ。

「お待たせラフィア。ホーンラビットのミニステーキ照り焼き風とサンドイッチだよ」

 サンドイッチはコンビニのものに薄切りラビット肉を加えたものだ。

「毎回毎回、食事を作ってもらってすみません……」

 彼女は落ち込むが、俺が料理をするのは仕方ない。ラフィアは女神なので料理というか、食事を必要としなかった。まして、地球の調味料を使ったものは俺でしか無理でしょ。

「今度の休日、一緒に料理してみようか」

「はい、宜しくお願いします。色々教わりたいです」

 あれ? この世界の休日っていつだ? ま、俺が休みたい日が休日でいいか……

「まずは温かいうちに食べようか」

 二人で呼吸を合わせて……

「「いただきます」」

 先ずはステーキの方から。

「んん! 美味しい。魔物肉ってこんなに美味しいの?」

 多少のクセは有るにしても、プチ贅沢肉並みに美味しいんだけど?

「本当ですね。過去のお供えでもこれほどのは記憶にないですね」

 ん? 妙に食い違っているような……

「ラフィア、ラビット肉って結構高級肉?」

「いえ、魔力の少ない魔物ですから、言うほどの肉ではないとは思いますが、人がお供えしたものしか口にしたことないので……」

「ということは、お供えされたものと比べると今日の料理が一番おいしかったと?」

「はい、別格ですね。地球の調味料を使っているためだと思います」

 この世界は食への関心が薄すぎないか? あれ、なんちゃって料理だよ?

「気に入ってくれたなら、満足ですよ。それと食後にデザートが有るからね」

「デザートですか?」

 そんなに目をキラキラさせて、よほど期待しているんだね。

「そ、ショートケーキだよ」

「地球のお菓子ですね。夢みたいです」

「デザートは逃げないから、ゆっくり食べてね」

 はい、と返事をするも、心なしかラフィアの食事をとるペースが速い気がする。地球からの取り寄せで、真っ先に欲しいものにあげていたから、わからなくもないけどね。

 二人とも食べ終わったことを確認したので、俺はテーブルにケーキを出す。ラフィアは目をきらめかせながら、フォークで小さく割って一口、口にする。

「美味しいです。なんかとっても幸せな気分です」

 彼女はとっても幸せそうな顔をしていた。きっと頬が落ちるような思いなのだろう。
 毎日出してあげたいけど、甘いものの取りすぎは太るんだよね。どうしたものか……
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