憑きっ娘令嬢、愛されてますの!

山の端さっど

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おまけ02*角と占術とメイドと執事②

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「お久しぶりですよー! まっ黒小さい角が額からちょこんと生えてるメイド長のラディアです!」
「お久しぶりでございます。半透明なクリーム色の、巻きの強い角が右側に生えております執事のローデンです」
「お嬢様のご容体も相変わらずながら現状維持といったところで、角の形状と占術の関係についてお喋りしましょう!」



*御三家の角*

「と、その前に、占術御三家の角について少しまとめたら理解の助けになりそうですよね!」
「そうだろうと思ってまとめておきました」
「わあ優秀ー!」


*ウィザヴォード家
  色・翠緑すいりょく。透明。宝石の輝き
 位置・頭の左側に一本のみ
  形・ゆるく太い螺旋らせんねじれのある螺旋角
サイズ・頭の半分~頭ひとつ分ほどの長さ

「『イランド』の左角だけがある、というイメージです」
「いらんどって何ですかー?」
「私たちの世界にはいない動物ですよ」
「?」


*ヴィトガーズ家
  色・群青ぐんじょう。透明。宝石の輝き
 位置・額に横並びで三本
  形・鋭くねじれのない円錐形のタスク角
サイズ・中央の角は頭ひとつほど。左右はその半分

「『ユニコーン』の角の左右に小さい角がついたような形ですね」
「ユニコーンってパステルカラーの毛が可愛いですよね。手触りも最高です」


*ゾーゼラー家
  色・深紅。透明。宝石の輝き
 位置・左右のこめかみを覆う二本
  形・整った渦巻き形のアモン角
サイズ・掌でなんとか包めそうな大きさ

「『アンモナイト』や羊に代表される丸みの強い角です」
「角なしの異大陸の皆様から見ると、このタイプが一番カワイく見えるらしいですねー。でもラディも異大陸さんにナンパされたことあります」
「それは角だけが理由では無いでしょう」
「えっそれどういう意味です?!」



*角の形状*

「角の形状は主に三種類です。真っ直ぐな円錐形の[タスク角]、巻きながら伸びて螺旋を描く[螺旋角]、そして伸びずに渦巻きになった[アモン角]」
「角は丸まっているほど一度に大きな魔力を出せますよー! ゾーゼラー家の方々は災害級の威力で攻撃できるって聞いたことあります」
「逆にタスク角のような真っ直ぐの角は繊細に魔力を扱うことを可能にします。ヴィトガーズ家はごく繊細な金細工事業も行っていましたね」
「螺旋角はバランスタイプなんですけど、不思議と魔術の射程が一番長いんですよね。弓矢の代わりに魔力飛ばすとか余裕でできちゃいます」
「質感や角輪や形状の細かな差異と魔術の関係は、実に奥深い話ですので論文をご覧くださいませ」



*角の大きさ・太さ*

「角が大きいほど、そして太いほど魔力をたくさん蓄えられて上手く扱えます。以上!」
「と申し上げたいところなのですが、残念ながら、小さい角や細い角で多くの魔力を蓄えられる人もいます。その代表例がここに」
「ん? 誰ですかー?」
「貴女のことですよ、ラディア」



*角の本数*

「それを言うならローデンさんもそこそこレア角ですよ! 二本ありそうな雰囲気だけど生まれつき片方だけの角」
「ウィザウォード家もそうですが、[片角]が珍しいのは事実ですね。角の重さ分、体のバランスが歪むため苦労される方も多いです」
「はいはい! 片角さんって一本の角で二倍以上の魔力出力になるって本当ですか?!」
「威力が増すだけですよ。ホースの口をせばめて水を噴き出させるようなものです」
「なるほどー。そういえば、角三本のヴィトガーズ家は逆に、こう、魔力を分散させられる感じですよね」
「貴女だけに通じる言語で説明してどうするのです。複数本の角を持つ方は、それぞれの角から魔力を出せます。右手と左手でそれぞれ図形を描くような感覚ですね。三本以上の角となると、扱いが難しい代わりに複雑な魔力操作が可能になるのだとか」
「あ、もともと一本だけの人でも落ち込むことないですよ! あれこれ考えなくていいので、自由自在に魔力使えるようになります」



*角の色*

「実は角の色と魔力の関係性はあまり明らかではありません」
「何色の角なら何が得意、って事もないんですよねー。前に、神域との関係がどうとかって説ありましたけど」
「樹海の端に緑角のウィザウォード家、湖のほとりに青角のヴィトガーズ家、火山のふもとに赤角のゾーゼラー家があることからの連想でしょうか。しかし御三家以外の説明がつきません」
「その代わり、透明度! これは超重要です」
「角が透明に近いほど高度な神占術……神に近しい種類の占術を使えるようになります。行使できる術のバリエーションは完全に角の透明度で決まり、訓練や努力は無意味。私の角は少しだけ透き通っていますので、数種類の神占術が使えますが……」
「その『高度な占術』、最近何回使いました?」
「今年に入ってから三回だけですね。戦闘時以外には全く使わない術です」
「……というわけで、使えなくとも大して困りません。不透明な角で戦闘最強さんもいっぱいいますしね!」



「……さて、こんなところでしょうか」
「占術の内容についてはあまり深掘りできませんでしたね」
「まあ、我々も使えない占術については詳しくありませんから」
「それではここで、角持ちなら誰でも使える占術講座①! 鏡を使った遠隔通信!」

「定時連絡です。今のところ王城の潜入員より連絡は来ておりません。トラブルが起きているようですので、あと五分連絡が来なければ私が直接向かいます」
『……そうか、分かった。あくまで内密にね』
「仰せのままに」

「安定した通信! お見事! この距離だと、双方の魔力が安定してないと通信乱れちゃいますからね!」
「ご機嫌なところ悪いですが、ラディア。貴女にも仕事が入りました」
「おっと……それでは今日はこのくらいで失礼します! また誰かの解説お楽しみに、です!」
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