幻想食三十一字譚「ジャック・ザ・リッパー? 食べてみようよ」

山の端さっど

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妖怪食覚書き*其の壱

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「さあてさて、しんぷるが好きなあたしでも料理はするって教えてあげる」

ーーーーーーーーーー



*【一反木綿のさらだ】*
  難易度*い
  貴重度*いろはにほ

「用意するものは白洲と死に掛けびと、そしてもちろん一反木綿!」
「白洲は場所で、用意物ではないだろう?」
「でもとっても大事な構成要素ものよ。あの場所でなくちゃあの味は出せないもの」
「成程。続けてくれ、親愛なるディア・お嬢さんレディ
「人の生気を吸って生きる妖怪に死に掛け人の唾液をあげる。どうなると思う? 生命せいめい死命しめいが混ざり極上の味になるの!」
「それで私は窒息の憂き目を見たわけか」
「でもそんな荒療治さえ無かったら、貴方勝手に死んじゃったでしょ?」
「どういう意味だ?」
「さて、さぁてね? いったいどういう意味でしょう?」
「……君は秘密が好きだな」
「そんなあたしが好きにならない?」
「……さて、ね」
「まあいいわ。後は好きに細かくするの、裂いても切っても千切ってもよし。食べやすくするための処理なんだけど、食感にも関わることだから」
「これにて完成、か――改めて思い返しても、君のしたことを『料理』と定義してよいものか、私には分からないよ」
「えー、どして? 一番おいしい食べ方よ?」
「『ジャック・ザ・リッパー』としてはもう少し丁寧な仕事を願いたいものだね」
「だったらあなたがやってみせてよ?」
「ほう?」



ーーーーーーーーーー



*【海坊主のしお衣活け作り】*
 難易度*いろ
 貴重度*いろ

「衣とは言うけど今度は本当に布々しくはなかったわよね?」
「どちらかと言えば食材の見た目と食感だった」
「そうでしょう、心配せずともそう珍味ばかり食べさすあたしじゃないわ」
「……妖怪食自体が珍味ではないか?」
「しぃぃぃぃーっ。それを言っちゃあお終いよ。だって美味しい珍味じゃないの」
「同意だな。さて、今回は私が『やってみせた』わけだ。口で言うのは簡単だね。刺身の調理法だ。出来うる限り薄く断面を滑らかに仕立てる……失敗していたらと思うとぞっとするね」
「あら? そんな事してくれちゃったら、またあれを呼び寄せて狩りをしてもらうわよ」
「ぞっとしないね」
「でも今回ひとつ良いこと知っちゃった。……妖刀使うと美味しくなる!」
「これからも調理器具にされてしまうようだな、お前」

[メスはカタカタと鞘の中で揺れ動いている]
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感想 1

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みんなの感想(1件)

矢庭竜
2023.01.04 矢庭竜

二人のやり取りがかわいいお話!それに、差し挟まれる三十一字がどれもセンス良くて凄いです。

解除

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