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Smallest Q.1 王都・ラスティケーキ
006_ラスティケーキ&トラップ
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「パーティ結成おめでとうございます、アレンさん、ライズさん!」
「お、おう」
「……どうも、ファニーさん」
出会ってすぐ笑顔で話しかけてきた軟硬角族の受付嬢の言葉に、パーティ結成直後の二人組はやや気まずそうに答える。
((期間限定で用が済んだらすぐ解散するつもりだとは言えない……))
加えて、アレンは受付嬢の名前を覚えていなかったので(よく知ってるなこいつ)とライズをチラ見した。
「本当に良かったです、良かったです! アレンさんあの調子ですしライズさんは揉め事に巻き込まれてしまっていたので本当にお二人のことは心配で……でも、これで大丈夫ですね!」
受付嬢ファニーは手元から素早く一枚の紙を取り出した。
「低陰級認定試験場、『ラスティケーキ』入場申請書ですっ!」
「おっ、これが……って、あれ?」
アレンはファニーの手から受け取った紙の表面を撫でた。少しだけざらついている。よく見れば、紙自体もやや黄ばんでいた。
「そちらの申請書は、半年前からいつでも出せるよう用意していたものですから」
「えっ……」
「アレンさん、本当に、パーティ結成おめでとうございます、ね」
にっこりと顔を上げたファニーの後ろで、他ギルドの職員たちが一斉に拍手したり角や嘴を打ち鳴らしたり、翼をはためかせた。キラキラ光る鱗や羽がアレンたちの方にまで飛んでくる騒ぎだ。
「……ありがとう」
アレンは笑顔で受付嬢から申請書を受け取った。
「それでは、こちらにお二人の名前をサインして、鱗タグの表を隣に押し付けてください。…………はい、サインが光りましたね。これでエントリー完了です!」
申請書の下端に、処理番号のようなものが浮かび上がる。その部分を、ファニーは蹄のように硬い爪で切り離した。細長い紙切れはクルクルと丸まって輪っかを形作り、白い腕輪になってカウンターに落ちる。
「はい、こちらの輪をお二人のどちらかが、体のどこかに装着しておいてくださいね。この輪が指定ポイント、つまりラスティケーキの中心部に到達した事をもって、認定試験は合格となりますので」
「で、試験はいつ受けられるんだ?」
「今日はダメですね……明日の朝、日が昇る頃からなら大丈夫です」
「じゃあ明日の朝一を予約で。良いよな?」
「もちろん」
二人は同時に腕輪を掴んで……そこでようやく、パーティのリーダーを決めていなかった事に気づいた。
*
「だから、君で良いって言ってるでしょ」
「その『で』ってのは何なんだよ、おい」
「別に、他意は無いけど?」
どちらが腕輪をつけるか。つまり、この二人パーティのリーダーになるか。その話し合いは、申請書を書いてギルドを出てからしばらく続いていた。主に、嫌味っぽくライズが譲り、アレンがその態度に苛ついて素直にリーダーを宣言できない、という形で。
「確かに俺は高陽級で、お前は深草級だ。だけど……だけどじゃねーや、だからなんでお前はそんなに横柄なんだよ?! 等級の話したくないけど俺お前の二つ上だぞ?」
「知ってるよ、今は君が上だって事は。だから君で良いじゃん、リーダー」
「何だよお前、その露骨な言い方……ん」
「コショー? はい」
「サンキュ。ってかお前食細くないか? 奢るからもっと食えよ」
「は? なんで君が奢るわけ? ってか、小成族から食事の量心配されてるとか恥ずかしいからやめてくんない?」
「だーー、なら食えよ! おい、トゲ魚焼き一皿追加で!」
「ちょっ……」
食事の時間になっても続いていた。
「お前はどうなのかはっきり言えよ。リーダーなりたいのか? なりたくないのか?」
「だから君が今は適任? だって言ってるつもりだよ一応」
「その嫌な言い方やめろよ! 本心は?」
「……」
「黙るなよ!」
「いや、今銃弾作るのに使う研ぎ石選んでるから。喋りながら鑑定とかしたくないんだけど」
「それでお前さっきから見てたのか? こんなのこの石一択だろ」
「……なんで?」
「なんでって、お前飴削って弾にしてんだろ? これが一番研ぎやすいし安い」
「参考にするよ…………」
「また黙ったな!」
「しつこいよね、君も。そんならここにある適当な武器試しに使って上手かった方がリーダー、とかにする?」
「いいけどどの武器使うんだ……? 刃物だと俺有利だろ」
「火器ならまあ、負けないね」
「……弓はどうだ?」
「僕が勝つんじゃない?」
「いや投げナイフでは俺が勝つだろうし……」
「そこの冒険者共、言っとくがうちの店にリベリー用の弓は無いぞ」
「……ドンマイ」
「憐れむんじゃねえ!」
「君そのマント弱くない? 変えないの?」
「これそんな弱そうか? 一応なんとかって言うブラックチョコウッドから剥ぎ取った樹皮を使ってるらしいんだけどな」
「それならまあ丈夫だろうけど……なんか曖昧だね」
「親父が取ってきた素材なんだよ」
「……は? 君、純粋なリベリー族の親って言ってなかったっけ」
「そうだぞ?」
「冒険者だったの?」
「いや、専業は木こり」
「……リベリー族にも馬鹿力の家系とかあるわけ、ふうん……」
「どういう意味だ?」
道具屋、武器屋、防具屋に寄った時にも続いていた。
「ふぁあ……お前さっきから突っかかってきて、リーダーなりたいんだろ? なりたいんだよな?」
「……別に」
「何だよ」
「……昨日寝てないから早く帰りたいんだけど」
「確かに俺も……あ、明日、日の出より早く来いよ!」
「決まってんでしょ。じゃ」
「明日な!」
夜に別れた時も、そして……
「ふーん、こんなもんか。『カップケーキ』と似てるな、今のところは」
「成る程、しっとり系のチョコケーキの壁な訳ね。奥に行ったら湿度ヤバそう」
「なんだ、湿度高いとその銃使えないとかあるのか?」
「いや別に。霧とか心配してるだけ。君と違って」
「……やっぱりお前が持っとけよ、これ」
「何で? 君が持つって君が決めたんでしょ?」
「~ったく! お~前~も~俺が持つべきだっつってたよなあ? よし、デカい敵一匹倒すごとに持つ奴交代だ」
「何それ。結局どっちがリーダーなわけ?」
「保留だ!」
ラスティケーキにいざ挑み始めたその時も、結論は出ていなかった。
「ま、いいけど」
ストロー銃が、今日何度目かになるチョコバットを撃ち抜いた。
「まだ平和だなー」
「実力はもう陰等級? なんでしょ君。なら認定試験くらい最後まで平和なまま終わんなきゃおかしいはずだよね」
「お前なあ……」
もはや慣れてしまったライズの言葉に言い返そうとして、ふと、アレンは数年前の事を思い出した。
(ーー地元から上都してきた頃の俺も、こんな風にしてたよな、そういや)
懐かしいというよりは恥ずかしい回想だったが、そう思うとなんとなくライズに親しみも湧く。アレンは首をすくめて言い返すのをやめた。
「……そのポーズ腹立つ」
「……」
そんな心、ライズに伝わるわけもないのだが。
ともかく、チョコ系の雑魚を倒すだけで、攻略としては順調なまま、二人は最初の分かれ道まで真っ直ぐに道を進んできた。
「さてと、ここから分かれ道か」
「君マッピング得意?」
「いや、壁とかに印残してくタイプだ……けど、この軟らかい壁だと面倒だな」
「素直にマッピングしなよ」
「地図作るのあんま得意じゃないんだよ」
「はあ……いいよ、僕がやる」
「じゃ先見てくる」
白紙に線を描き始めたライズを分かれ道に残して、アレンは先に3つの分かれ道の先を軽く覗きに行く。一人でも攻略できると思っているダンジョンなので、分かれることに不安も感じない。
「……特に差があるようには見えないな……うん? おいライズ、こっちの道だけすぐそこにワープスポットあるぞ?」
「は?」
ワープスポットはダンジョン内に設置する冒険者用の設備で、光り浮いているクリスタルに触れることでダンジョン内をワープしたりダンジョン外に離脱する事ができる。色からして、ここのものはダンジョン内のどこかに移動するものだろう。
ライズが急いでやって来ると、ワープを見て、「はぁ」と肩を落とした。
「なあ、今までの道に無かったし入ってみようぜ!」
「ストップ。却下」
「何でだ? ワープスポット使っちゃダメとは言われてないぞ?」
「知らないの? っていうか勉強してないの?」
アレンは首を傾げる。
「こっれだから脳みそババロアの考え無しの相手は嫌なんだ。いい? 陰等級のダンジョンは魔菓力ーー菓子の影響が強くて、普通のワープスポットは設置できない。あるのは、離脱用のワープスポットだけ」
「? いや、ダンジョン内部ワープと離脱用ワープは色とかで見分けつくだろ。これ、どう見ても内部のだろ」
「はっきり言わなきゃ分かんないわけ、この生クリーム脳」
「なっ、ババロアはまだしも生クリームは酷いだろ!」
「だから、これは罠だって言ってんの。あり得ない所にあり得ない物がある。これは事実」
「罠って……こんなタイプの、聞いた事ないぞ」
「だったら新種なんでしょ。見てなよ」
ライズはワープスポットのクリスタルに狙いを定めて、撃った。
ガシャン、と、軽い音がして、頑丈なはずのクリスタルが砕け散る。その残骸から、煙のようなものがズルズルと出てきた。
「すげえ、お前よく知ってたな」
「……無用な詮索は禁止って言ったはずだけど?」
「センサク? いや、今のはただ凄いだけだろ」
「……はぁ。キミと話してると疲れるよ。それより」
出てきた煙のようなもの、にライズは再び銃口を合わせる。
「ほら、お待ちかねの最初の中ボスって奴だよ」
*****
魔菓子レポート
No.008 ブラックチョコウッド(A.BlackchocolateWood)
植物・チョコ系
「バーク」とはご存知樹皮の事であると共に、板チョコの表面にナッツなどを埋め込んだスイーツの事。真っ黒くボコボコとした樹皮が特徴なブラックチョコウッドの木は極めて硬く、伐採には20日かかると言われている。皮を剥ぐのも加工も難しく、仕立てるのは困難だが装備品としては軽く丈夫で優秀。ややしなやかさに欠ける。
Drop:ブラックチョコバーク
No.009 チョコバット(ChocolateBat)
コウモリ系・暗所を好んで生息
Lv3 Cal:10 Bx:40
「チョコウモリ」とも。ごく弱いが、数の多さで時に脅威となる魔菓子。全体がチョコでできており、顔ほどの大きさ。暗い所になら大体いる。チョコバット系は、変異種には脅威となるものも多いが、基本種はほとんど無害。ただ放っておくと「吸糖」つまり血とかを吸われるので倒した方が無難。
Drop:チョコ羽
「お、おう」
「……どうも、ファニーさん」
出会ってすぐ笑顔で話しかけてきた軟硬角族の受付嬢の言葉に、パーティ結成直後の二人組はやや気まずそうに答える。
((期間限定で用が済んだらすぐ解散するつもりだとは言えない……))
加えて、アレンは受付嬢の名前を覚えていなかったので(よく知ってるなこいつ)とライズをチラ見した。
「本当に良かったです、良かったです! アレンさんあの調子ですしライズさんは揉め事に巻き込まれてしまっていたので本当にお二人のことは心配で……でも、これで大丈夫ですね!」
受付嬢ファニーは手元から素早く一枚の紙を取り出した。
「低陰級認定試験場、『ラスティケーキ』入場申請書ですっ!」
「おっ、これが……って、あれ?」
アレンはファニーの手から受け取った紙の表面を撫でた。少しだけざらついている。よく見れば、紙自体もやや黄ばんでいた。
「そちらの申請書は、半年前からいつでも出せるよう用意していたものですから」
「えっ……」
「アレンさん、本当に、パーティ結成おめでとうございます、ね」
にっこりと顔を上げたファニーの後ろで、他ギルドの職員たちが一斉に拍手したり角や嘴を打ち鳴らしたり、翼をはためかせた。キラキラ光る鱗や羽がアレンたちの方にまで飛んでくる騒ぎだ。
「……ありがとう」
アレンは笑顔で受付嬢から申請書を受け取った。
「それでは、こちらにお二人の名前をサインして、鱗タグの表を隣に押し付けてください。…………はい、サインが光りましたね。これでエントリー完了です!」
申請書の下端に、処理番号のようなものが浮かび上がる。その部分を、ファニーは蹄のように硬い爪で切り離した。細長い紙切れはクルクルと丸まって輪っかを形作り、白い腕輪になってカウンターに落ちる。
「はい、こちらの輪をお二人のどちらかが、体のどこかに装着しておいてくださいね。この輪が指定ポイント、つまりラスティケーキの中心部に到達した事をもって、認定試験は合格となりますので」
「で、試験はいつ受けられるんだ?」
「今日はダメですね……明日の朝、日が昇る頃からなら大丈夫です」
「じゃあ明日の朝一を予約で。良いよな?」
「もちろん」
二人は同時に腕輪を掴んで……そこでようやく、パーティのリーダーを決めていなかった事に気づいた。
*
「だから、君で良いって言ってるでしょ」
「その『で』ってのは何なんだよ、おい」
「別に、他意は無いけど?」
どちらが腕輪をつけるか。つまり、この二人パーティのリーダーになるか。その話し合いは、申請書を書いてギルドを出てからしばらく続いていた。主に、嫌味っぽくライズが譲り、アレンがその態度に苛ついて素直にリーダーを宣言できない、という形で。
「確かに俺は高陽級で、お前は深草級だ。だけど……だけどじゃねーや、だからなんでお前はそんなに横柄なんだよ?! 等級の話したくないけど俺お前の二つ上だぞ?」
「知ってるよ、今は君が上だって事は。だから君で良いじゃん、リーダー」
「何だよお前、その露骨な言い方……ん」
「コショー? はい」
「サンキュ。ってかお前食細くないか? 奢るからもっと食えよ」
「は? なんで君が奢るわけ? ってか、小成族から食事の量心配されてるとか恥ずかしいからやめてくんない?」
「だーー、なら食えよ! おい、トゲ魚焼き一皿追加で!」
「ちょっ……」
食事の時間になっても続いていた。
「お前はどうなのかはっきり言えよ。リーダーなりたいのか? なりたくないのか?」
「だから君が今は適任? だって言ってるつもりだよ一応」
「その嫌な言い方やめろよ! 本心は?」
「……」
「黙るなよ!」
「いや、今銃弾作るのに使う研ぎ石選んでるから。喋りながら鑑定とかしたくないんだけど」
「それでお前さっきから見てたのか? こんなのこの石一択だろ」
「……なんで?」
「なんでって、お前飴削って弾にしてんだろ? これが一番研ぎやすいし安い」
「参考にするよ…………」
「また黙ったな!」
「しつこいよね、君も。そんならここにある適当な武器試しに使って上手かった方がリーダー、とかにする?」
「いいけどどの武器使うんだ……? 刃物だと俺有利だろ」
「火器ならまあ、負けないね」
「……弓はどうだ?」
「僕が勝つんじゃない?」
「いや投げナイフでは俺が勝つだろうし……」
「そこの冒険者共、言っとくがうちの店にリベリー用の弓は無いぞ」
「……ドンマイ」
「憐れむんじゃねえ!」
「君そのマント弱くない? 変えないの?」
「これそんな弱そうか? 一応なんとかって言うブラックチョコウッドから剥ぎ取った樹皮を使ってるらしいんだけどな」
「それならまあ丈夫だろうけど……なんか曖昧だね」
「親父が取ってきた素材なんだよ」
「……は? 君、純粋なリベリー族の親って言ってなかったっけ」
「そうだぞ?」
「冒険者だったの?」
「いや、専業は木こり」
「……リベリー族にも馬鹿力の家系とかあるわけ、ふうん……」
「どういう意味だ?」
道具屋、武器屋、防具屋に寄った時にも続いていた。
「ふぁあ……お前さっきから突っかかってきて、リーダーなりたいんだろ? なりたいんだよな?」
「……別に」
「何だよ」
「……昨日寝てないから早く帰りたいんだけど」
「確かに俺も……あ、明日、日の出より早く来いよ!」
「決まってんでしょ。じゃ」
「明日な!」
夜に別れた時も、そして……
「ふーん、こんなもんか。『カップケーキ』と似てるな、今のところは」
「成る程、しっとり系のチョコケーキの壁な訳ね。奥に行ったら湿度ヤバそう」
「なんだ、湿度高いとその銃使えないとかあるのか?」
「いや別に。霧とか心配してるだけ。君と違って」
「……やっぱりお前が持っとけよ、これ」
「何で? 君が持つって君が決めたんでしょ?」
「~ったく! お~前~も~俺が持つべきだっつってたよなあ? よし、デカい敵一匹倒すごとに持つ奴交代だ」
「何それ。結局どっちがリーダーなわけ?」
「保留だ!」
ラスティケーキにいざ挑み始めたその時も、結論は出ていなかった。
「ま、いいけど」
ストロー銃が、今日何度目かになるチョコバットを撃ち抜いた。
「まだ平和だなー」
「実力はもう陰等級? なんでしょ君。なら認定試験くらい最後まで平和なまま終わんなきゃおかしいはずだよね」
「お前なあ……」
もはや慣れてしまったライズの言葉に言い返そうとして、ふと、アレンは数年前の事を思い出した。
(ーー地元から上都してきた頃の俺も、こんな風にしてたよな、そういや)
懐かしいというよりは恥ずかしい回想だったが、そう思うとなんとなくライズに親しみも湧く。アレンは首をすくめて言い返すのをやめた。
「……そのポーズ腹立つ」
「……」
そんな心、ライズに伝わるわけもないのだが。
ともかく、チョコ系の雑魚を倒すだけで、攻略としては順調なまま、二人は最初の分かれ道まで真っ直ぐに道を進んできた。
「さてと、ここから分かれ道か」
「君マッピング得意?」
「いや、壁とかに印残してくタイプだ……けど、この軟らかい壁だと面倒だな」
「素直にマッピングしなよ」
「地図作るのあんま得意じゃないんだよ」
「はあ……いいよ、僕がやる」
「じゃ先見てくる」
白紙に線を描き始めたライズを分かれ道に残して、アレンは先に3つの分かれ道の先を軽く覗きに行く。一人でも攻略できると思っているダンジョンなので、分かれることに不安も感じない。
「……特に差があるようには見えないな……うん? おいライズ、こっちの道だけすぐそこにワープスポットあるぞ?」
「は?」
ワープスポットはダンジョン内に設置する冒険者用の設備で、光り浮いているクリスタルに触れることでダンジョン内をワープしたりダンジョン外に離脱する事ができる。色からして、ここのものはダンジョン内のどこかに移動するものだろう。
ライズが急いでやって来ると、ワープを見て、「はぁ」と肩を落とした。
「なあ、今までの道に無かったし入ってみようぜ!」
「ストップ。却下」
「何でだ? ワープスポット使っちゃダメとは言われてないぞ?」
「知らないの? っていうか勉強してないの?」
アレンは首を傾げる。
「こっれだから脳みそババロアの考え無しの相手は嫌なんだ。いい? 陰等級のダンジョンは魔菓力ーー菓子の影響が強くて、普通のワープスポットは設置できない。あるのは、離脱用のワープスポットだけ」
「? いや、ダンジョン内部ワープと離脱用ワープは色とかで見分けつくだろ。これ、どう見ても内部のだろ」
「はっきり言わなきゃ分かんないわけ、この生クリーム脳」
「なっ、ババロアはまだしも生クリームは酷いだろ!」
「だから、これは罠だって言ってんの。あり得ない所にあり得ない物がある。これは事実」
「罠って……こんなタイプの、聞いた事ないぞ」
「だったら新種なんでしょ。見てなよ」
ライズはワープスポットのクリスタルに狙いを定めて、撃った。
ガシャン、と、軽い音がして、頑丈なはずのクリスタルが砕け散る。その残骸から、煙のようなものがズルズルと出てきた。
「すげえ、お前よく知ってたな」
「……無用な詮索は禁止って言ったはずだけど?」
「センサク? いや、今のはただ凄いだけだろ」
「……はぁ。キミと話してると疲れるよ。それより」
出てきた煙のようなもの、にライズは再び銃口を合わせる。
「ほら、お待ちかねの最初の中ボスって奴だよ」
*****
魔菓子レポート
No.008 ブラックチョコウッド(A.BlackchocolateWood)
植物・チョコ系
「バーク」とはご存知樹皮の事であると共に、板チョコの表面にナッツなどを埋め込んだスイーツの事。真っ黒くボコボコとした樹皮が特徴なブラックチョコウッドの木は極めて硬く、伐採には20日かかると言われている。皮を剥ぐのも加工も難しく、仕立てるのは困難だが装備品としては軽く丈夫で優秀。ややしなやかさに欠ける。
Drop:ブラックチョコバーク
No.009 チョコバット(ChocolateBat)
コウモリ系・暗所を好んで生息
Lv3 Cal:10 Bx:40
「チョコウモリ」とも。ごく弱いが、数の多さで時に脅威となる魔菓子。全体がチョコでできており、顔ほどの大きさ。暗い所になら大体いる。チョコバット系は、変異種には脅威となるものも多いが、基本種はほとんど無害。ただ放っておくと「吸糖」つまり血とかを吸われるので倒した方が無難。
Drop:チョコ羽
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