夏霜の秘め事

山の端さっど

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零参 欄干擬宝珠に駆引きの舞

六刀

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「今日は随分めかしてるな。似合ってるぜ、霜月そうげつ。しかし焦らしやがるなぁ」

 召鼠めしねずみ。言わずと知れたともえ組が一人、男女を問わぬ色欲に支配された男だ。

「間違えるのも処女むくらしくて可愛いが、この俺と仲良くやりたいってんなら、行くのはせめて『色』の方だぜ?」

 女性の華を集めたような花街は二つに分かれている。遊女屋の「色」と芸者屋の「芸」だ。
 はっきりと宣言しておこう。今僕がいるのは「芸」の方だ。最低限の礼儀ある格好にしただけでめかし込んでなどいない。ここまでべたべたと粘るような悪意のひびきをぶつけてくるこの男と仲良くしたいとは思わない。遊女屋へは行かない。芸街へですら共に来たかったわけでもない。ただ、ろくに伝手のない僕にはこれしか手段が無かった。

女子おなご斬り」。
 それが唯一、僕の閃いた手掛かりだ。橋の欄干の上に乗ってみせ、見事に病人を演じ、返す手で鋭い刀筋を魅せる。それが可能なのは、なのではないか?

 閃いたまでは良かったが、上級な芸者小屋には一見いちげんお断りの店が多く、聞き込みなどもっての他らしい。こんな事ならば以前、紫煙しえんに冗談っぽく誘われた時に行っておけば良かった。あいつの事だから、僕が一人でも行きやすい店を紹介してくれただろう。
 無いものは仕方がない。乏しい人脈の中でなんとか、芸事に明るそうな者に今日すぐという条件で頼んでみた。その結果、ぞっとすることに、時間があり受けてくれる者がこの男しか居なかったのだ。

「だがまあ、雰囲気ってのを楽しむのも俺様の嗜みだ。悪くない」

 一つ懸念点があるとすれば、芝居の稽古で人を殺せるような剣が身につくのか、という点だった。僕は気づかれない程度にゆっくりと召鼠から距離を取る。魅せる刀、とは言ったがあれは見せかけだけのものではない。人を斬るための振りだ。

「しかしよりにもよってお堅い小屋かよ。いや、尻軽よりもその方が俺は嬉しいぜ?」

 いや、大柄な方が見栄えがして好まれる舞台で小柄な体でやっていくには、本物の技を身につけるくらいの気概が要るのかもしれない――そう考え、行ってみることにしたのだ。思い返しながら、僕は腰回りに絡んでこようとする召鼠の腕をさばく。そういえば、調べるのは男だからと無視していたが、芸街といえば――



真朱ますほちゃんはまだ帰って来ねえのかよお!」

 往来を遮って騒ぎが巻き起こった。僕は召鼠の脚を払って駆け寄り、見物人の垣根にぱっと混ざる。
 青梔子あをくちなし。例の人気芸妓を抱える高級店の前だ。

「前からお伝えしているでしょう? 真朱はあと十日、絶対に座敷には上がりません」
「何でだよお!」

 ごねているのは刀士。どうやら下町の酒場に彼女が降りているのを知らないらしい。つまり情報通でない。高圧的とまではいかないが、人の迷惑を考えない態度から厄介ごとの種になりそうな男だ。図体は大きい。男色の気があるかは分からない。

「あん? 寅符とらぶじゃねえか」
「知り合いなのか」

 召鼠に目だけを向ける。帳面では見なかった姓。やはり今回の下手人とは関わり無いだろう。

「ガキみてぇな暴れん坊さ。あいつには食指が動かねえんだよなぁ。それに今はお前以外見えてねえぜ」
「では真朱の事は」
「……おいおい、芸街に顔出すやつで真珠を知らねえ奴は居ねえよ」

 なるほど、手を出せない存在というのは間違いないらしい。

「嫉妬心なんか出さなくっても今、俺様の目にはお前しか映っていやしないぜ」

 目の前に僕しか居なければそうなるだろう。いや、群衆の中にはいくらか美男美女が居るが……微妙に避けられている気がする。僕が、というよりも隣の軟派男の悪名のせいで。

「そんな事より芝居だろ? 早く離れねえと梔子ばばあに捕まるぜ」
「梔子婆?」

「さあさ皆さん、そろそろ朱華はねずのおことが始まりますよ。なんとあの真朱が留守を任せた一番弟子、期待のですの。寅符様も真朱を想ってくださるなら、ぜひにぜひに、朱華を見てやってくださいな。そうすれば真朱も喜びます」
「お、おおん?」

 婆と呼ぶには若すぎるから、「やり手婆」くらいの意味合いなのだろう。巧みな言葉と数人の客寄せを使った囲い込みで、見物人があらかた店に押し込まれ吸い込まれていった。鮮やかな手口だった。

「安易に見物に混ざるのも危険か」
「そういうことさ。俺様を呼んだのは賢明ってこった。さあ行こうぜ」

 首に回されそうになった手を屈んでかわす。これは露霧ろうむ国での思わぬ事故を防ぐ良い訓練になりそうだ。思いがけず得をした。運に感謝。召鼠に感謝はしない。

「なんとも上の空って面が気に入らねえが、まあ良い。ほら、ここが例の芝居屋、『べっ甲つばめ』だ」

 多くの芸者を抱える人気の芝居屋の看板には暗い橙色の燕が描かれている。

「本物の剣を学んだことがあるって触れ込みの芸者がいる小屋さ。といっても、ここ最近舞台に出ない日が多いんだがさて、今日はどうかな?」

 例の「女子斬り」が流行り始めた頃には、にもかかわらず、一番人気だった男らしい。主役の男は第二幕から杖に得物を持ち変えるが、刀でも振っているかのような激しい杖術じょうじゅつは引き続き見物なのだという。それを聞いた僕は、顔繋ぎのついでに第七幕を観てみることにした。

「……おおっと、これは先行きが良いなぁ霜月。ますます俺様の幸運にあずかったな。当たりの日じゃあねえの!」
「!」

 入り口に赤いのぼりが立った。




ヰヰヰヰヰヰヰ

「何かがおかしい……この感じは何だ……?」

 男は、奇妙な感覚に、つい、化け物の女を追い詰めていた杖を止める。背後の松の後ろに隠れる娘には気づいていない。

「お前……まさか、お前は、人を狂わせ、血を欲させる、刀のあやかし、なのか……?!」
「そうよ、やっと思い出したぁ。懐かし、懐かしや、。ああ、薄情なおひと」

 化け物女はひひひ、と笑って男へ手を伸ばす。

「あんたがあたしを、はねのけたりなんかするから、あたしゃ、こんな下らない刀士に貼り憑いて、つまらない時を長々と、過ごすことになったのさぁ。あとちょっとで刀が百本集まるところだったってのに! あああ、恨めしい。あああ、あんたの腕が恋しい。あんたの剣で、また人を斬りたい。ねえ、またあたしを受け入れておくれよ。また人を斬ろうじゃあないの。思い出したでしょう? 人を斬る感触。ざっくりと、あんたの連れてる娘の母親みたいにさぁ、ひひひひひひひひ」
「お前! お前だけは許さんっ!」
「お義父さん……どういう、こと……?」
「っ! どうしてここに!」
「私のお母さんを、斬ったのは……お義父さんなの……?」

 男は言葉に詰まり、杖を握りしめる。

「そうさぁ! ひひひひひひひひひひ!」

 不気味な声が響きわたる中、娘は震える手で弓をつがえた。
 男との旅の最中、自分も身を守り助ける芸を身につけたい、と各地の達人に教えを乞いながら鍛え続けた弓だ。すぐに震えは収まり、ぴたりと狙いを定める。

「ああ、とうとうこの日が来たのか」

 男は杖を取り落として手を組み、頭を垂れた。

「私……私、お母さんを殺したあなたが許せない。……そして、お義父さんを傷つけたあなたが許せないわ」

 娘の射った矢は、化け物を穿った。

「な、何故だぁ貴様……!」
「ずっとお義父さんが苦しんでいるのは分かっていたわ。こんなに優しい人が、どうして私にはこんなに辛い顔をするんだろうって思ってた。きっとお母さんが関わっているんだろうって……やっと、やっと分かったわ。こんな優しいお義父さんがお母さんを殺すはずがなかった。やっと見つけたお母さんの仇! 私はこの矢を向ける相手を間違えたりしないわ!」

ヰヰヰヰヰヰヰ




「いやぁ何度見てもそそるねえ、あの化け女の役者ときたら、いつ見てもぞっとさせやがる。七幕は本当に名作だぜ、全く」
「……ああ」

 ……悔しいことに、かなり面白かった。守られ続けていた娘が密かに鍛えていた弓と心の強さを見せる展開には、この男が隣に居ることもしばし忘れて観入ってしまった。幸いにも、そして意外にも客席で触れられはしなかった。この男にも芸術に対する多少の敬意はあるのかもしれない。

(いつか、別の幕を紫煙しえんと観よう)

 ふいにそう思った自分がいる。奇妙なことだ。顔を繋いだのだから、次からは一人でも観れるというのに。
 きっと物語に乗せられて気分が昂っているせいだろう。

「お越しいただいてありがとうございます」
「……こちらから伺うべきところを、わざわざ来ていただいて申し訳ありません。霜月といいます。貴方にお話を伺いたく」
「私どもにそのお気遣いは不要です、墨染すみぞめ様。初めまして。僕は舎良やどらと申します」

 深く頭を下げた背の低い男は、鋭い刀のような悪意を全身から僕へ向けて放っていた。
 珍しいものではない。忍び衆というものは、頼られるよりも嫌われることが多い。まして、花街で生きる人々はどうしても立場を低くされがちなのだ。
 一見お断りの店はその偏見から芸者を守る。心中だけでなく、態度からも反感が透けて見えるのは店に守られている安心感からだろう。こびへつらわれるよりもその方がましだ。
 舞台で見た杖術と、今の間近で見た男の体つき。……似ているが断定できない。ひとまず舎良が顔を上げるまで待つ。

「……それで、お話は何でしょう」

 化粧を落としていないが、舞台上とは雰囲気が違う顔だ。
 鋭い目と目がかち合った。同時に、目玉を切り裂くような悪意の響。まるで刃のような。

 ――ふっと、耳を削いで背後に悪意の刃が抜けていった。

「騒がしいですね」

 僕は背後で起きた騒ぎ……「虎符のぼんぼん」とやらの方へ向き直る。

「刀士様、どうかここはお収めください」
「何だよお、文句でもあるのかよお! 何だってんだよお!」

 青梔子から出た後、またこの辺りの店で騒ぎを起こしているらしい。今度は手の出る喧嘩になりそうな気配がある。まさか刀持ちが先に手を出すことは無いと信じたいが……なぜこの男は柄に手を掛けているのか。単純で単調な悪意。何も考えていないらしい。やはり止める必要がある。
 こちらは僕のことなど眼中に無さそうだ。良し。静かに足を運んで死角から近づく。いつ飲んだのか酒の匂い。なるほど先程よりも大胆なわけだ。
 さて、どうしたものかと考えるほどのこともない。背後から跳んで高さを稼ぎ、体重を込めた十手を首の狙った場所にたたき込む。
 体格差のある相手を一発で落とすため、何百回と練習した型のひとつだ。多少首に筋肉がある程度では防げないし、どうやら今回は脂肪膨れの方らしい。

「痣ができるくらいは勘弁してもらおうか」

 十手を腰に収めると、何故か周囲から拍手が湧いた。

「ああ、すみませんが、でお倒れになったお客人の頭を冷やすのに誰かお手伝いを」

 群衆の中から男らが出てくる。その中に先ほどの青梔子の客引きの男の一人が居た。さすがにあの騒ぎの後であの店が酒を飲ませたとは思わないが、騒ぎを起こすだろうと見張っていたのか。僕の方を見て、小さく指で合図。芸街で時折使われる指印で、感謝を伝えるものだ。あとは任せて問題ないだろう。

「この件は皆様に迷惑のかからぬよう正しく報告を上げさせていただきます。墨染の仕事は、無闇に人様に疑いをかける事だけではありませんので。……店の前でお騒がせしました」
「いえ」

 困惑したように、小さく舎良は言った。





「全然話できなかったじゃねえか。あれで良いのか、そうちゃんよぉ」
「その呼び方を止めろ」

 傍らに立っている分には、そうも見えるだろう。ろくな話が聞けず収穫は少なかった、と。
 勿論その通りだ。寅符の件に時間が掛かったせいで、舎良からはあまり話を聞けなかった。変装した男女も見分けられない僕には、外見や武道の型で人を特定することもできない。
 ただ、収穫に至る前の実は見つけた。

 僕だけが感じる、報告書の一行にもできない確かな根拠。
 舎良の放つ斬るような悪意の響の形は、速さは、鋭さは、あの夜の青白い病人のものと全く同じだった。

「……なぁ、霜ちゃんよぉ」
「何だ」
「……やっぱり何でもねぇや。知らねえ知らねえ。今お前の前に居るのは、紛れもなく俺様だからなぁ」

 位置関係としては正しい事を言って、召鼠は僕の顎を指で持ち上げようとした。
 今日一日で一つ大きな学びがある。気障きざな動きは隙がないように見えるだけで、慣れれば実にたやすく避けられる。ただし口までは縫えない。

「なぁ、これからだけどよ」
「何だ」
「夜までには時間があるだろ? だからよ――」

「今すぐ帰るんだよな? 夜の任務の為に少しでも仮眠を取らなくちゃいけないからな、お前さんは」

 静かな熱気。いつから居たのか、紫煙が隣に立っている。

「紫煙?」
「帰るぞ、霜月」

 痛くない程度に強く腕を掴まれる。ここで強引に振り払うのは、やましい事ありと言っているようなものだ。やましい事は無い。ここで帰るのにも異論は無い。

「……ああ、帰るつもりだ」
「だそうだ、悪いな召鼠。捜査協力に感謝するよ。ありがとうな! 蘭茶と烏羽にも、色々とよろしく言っておいてくれ」

 爽やかな顔と声にここまでの圧を含ませられるものか。恐ろしい強引さだ。しかも悪意が無い。恐ろしい。

「お、おう、勿論さ。また俺様をいつでも」

 召鼠が言い終えるのを待たず歩き出す。僕の腕を取ったままで。

「紫煙」
「話は、花街出てからな」
「紫煙?」
「実は少しばかりお前さんに対して怒ってるんだ。俺の意地悪に付き合ってもらう」

 それから花街を出るまで、紫煙は腕を離してくれなかった。



ヰヰヰヰヰヰヰ



「さてと」

 墨染の詰め所に戻った僕は、衝立を取り外した部屋で紫煙と向き合う。しろと言われた訳ではないが、僕は正座だ。

「お前さんが言うなら、俺はずうっと前に、お前をあの芝居小屋に連れてって常連にしてたぜ。召鼠に紹介なんてさせやしなかった」
「紫煙」
「今からでも構わない。とりあえず使えそうな良い店全部に顔繋いどくか?」
「し、紫煙」
「こういう言い方はあまり好かないんだが、まあ言っておくぜ。勝手に危ない所に行かないでくれ。……芸者小屋といっても、ものによっては当たり前のようにが付いてる」

 二階。というのはつまり、が初めから敷かれているような、という事なのか。色気のある芝居を見た後に、気に入った芸者をしたり連れと入ったり、ができるのか。

「……知らなかった」
「それも案内されなきゃ分からないだろ?」
「……そうだな」
「だから、もうこういう事はするな。しないでくれ」

 なぜお前が縋るように言う。この男の事が僕にはやはり分からない。

「分かった、から、離せ」

 言うと、はっとしたように紫煙は僕の手首を掴むのをやめた。

(……避けられなかった)

 召鼠の時は簡単だった。悪意が強く響く場所に触れようとしてくるから、それを避けるだけで済んだ。悪意もなしに触れてくる紫煙は無理だ。ここまで逃げ道のない部屋では手も足も逃げられない。
 ……こんな事では駄目だ。敵地に乗り込むにはまだ訓練と技術が足りない。

「別のこと考えてるだろ」
「ああ。お前を心配させるのも当然だった。僕は弱いな」
「そういう話をしてるんじゃ無いんだけどな?」

 ではどういう話だ。そこが分からない。
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