暖をとる。

山の端さっど

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『――随分と物憂げな表情をするじゃないか、[少年]。望み通りの地獄のかまくらに飛び込んで満足じゃないのか?

 ああ、私の姿と存在理由は気にしないでくれ。今やただの元痩せぎす眼鏡だ。
[少年]がどうやら今夜の事件をやけに重要視して、そう……何か、人生に決着をつけようとしている決意を感じて、居てもたってもいられなくてね。

 君はこの事件の何処にそれほどの重要性を感じているんだい?

 この建物、この土地が舞台になったせいなのか? 
 もしかして、あの事件で君が出会ったという[幻の少女]の関係者が居たりするのかな?
 あるいは――まさかとは思うが、私を殺そうとしていた人間を殺すことに特別なものを感じてくれたかい?

 ――いや、時間は有限だ。思い出話も取捨選択していこう。実のところ、君から話を聞き出すのが主目的ではないんだ。



 賭けをしよう、[少年]。



 ほら、ここには蝋燭が並んでいるだろう? 少しだけ早く燃えている。寒くて埃っぽい場所にいると少しだけ体に悪いって訳で――まあ、一つ一つの蝋燭が、俗な言い方をすれば人の寿命なのさ。

[少年]が負けたら、私が君の魂を――この蝋燭を
 シンプルな話だ。

 勝てば誰かの蝋燭を君の好きにすると良い。もう消えた蝋燭に火をつけるのはマナー違反だが、その道具は君には扱えそうもないしな。
 だが君が負けたら。
 私を見事に殺した君だ、分かっているね?



 質問かな?
 ふむ、分かるもの、気づいてしまうものなんだね。その蝋燭は、君の思った通りの人物のものさ。つまり彼女の寿命は――

 ……やる気だね、少年。

 そのくらい生き生きとした顔を、あの頃の君にさせてあげられなかった事は、このエリートの数少ない後悔の一つだ』
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