暖をとる。

山の端さっど

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-69℃ 明からしめる声

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『俺、俺、いろんな人巻き込んじゃった……』

 分かっていたよ。

『あの人の彼氏知ってる子たまたま見つけて、思い出して、もしかして俺、自分の手を汚さないで罪滅ぼしとか、できちゃうんじゃって思って……気づいたら、あの子もその友達も、いっぱい巻き込んで、一気に連絡取れなくなって』

 ああ、そうだろう。

『でも本当は、スターラーさんを恨んでるんじゃなくて、今電話に出てくれて、生きてて良かったって思ってて……俺、なんでこんな事したのか、今でも分かんねえ……』

 それも君の本心だ。

『彼氏……殺したんっすか?』
「ああ」
『そっ……すよ、ね。その、他の子ってそっちに』
「いない」
『でもSOSが来てて……じゃあ誰に……』
「知りたいか?」
『分かるんっすか?!』
「ああ」

 好きなだけ私の知っている君の本心を吐くと良い。

『俺……すんません、都合良いこと言ってんのは分かってます。でも……僕、は、後でどうなっても構いません。でも、あの子たちを、助けてください! お願いします!』

 ああ、沸き立つように今は熱い。
 やはり、どうにかする時がきた。

「明日の朝、死の覚悟が整ったら来るといい」
『! すぐに』
「まずは寝ることだ。明日までは生かされている」
『……信じます』

 さあ、スターラーの名で声明を出そう。凍える街と燃える炎に向けて。今でなければ意味がない。
 響くさ。そして絶対に食いついてくる。







〈足の骨は美しい〉







「なぜ車で移動中の『スターラー』がわざわざ今ネットでこんな文章を出す?」

 少年は困惑の声を落とした。

「僕らの追跡を察したとしてこの文面は不自然だ。先ほど死神が見つけた現場の情報の中に遺体から足の骨が欠けていたとあったが警察宛のメッセージか?」
『ワタクシ一つ思うのですが、普通の方は運転中にスマホもパソコンも操作しません』
「しかし現に――」
『この声明、本当に「妹」さんが出したんですか?』
「協力者か? しかし」
『あまり直感に頼ろうとしない貴方の代わりに言いますよ。「探偵さん」イコールスターラーだなんて、ワタクシどうしても思えないんです。ですから、本人に確認してみては?』
「本人に?」
『声明を出したスターラー本人になんとか連絡しろって言ってるんですよ、プレコシティ。もし別人なら「妹」の先手を取れるかも。普通の方は運転中にネットを見ない。なら彼女、声明の存在をまだ知らないかもしれないんですから』

 情報屋は電話口で笑みを浮かべた。
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