53 / 105
-53℃ ホットミルク
しおりを挟む
ローテーブルの上に足を乗せるのは実に下品な行為だが足置きがローテーブルの形をしているのに問題はあるだろうか?
そんな論を暇潰しに探偵にぶつけた事がある。
『そこで妥協しなくても、少し待ちゃハイテーブルに足を乗せられるようになるだろ』
当時の僕はその中に身長差からなる優越感を感じ取り数日探偵とのコミュニケーションを絶った。
今思えばその対応こそが稚拙なやり口だった。数日とはいえ貴重な契約期間を自ら捨てるなど若かったものだ。
ところで僕は追懐に時間を浪費するほど暇ではない。必要に応じて記憶を引き出す。
『なあ、降参だ。俺は何をしちまった? 原因に気づけなかった事込みで反省するからどうかお許しを。俺にもう一度チャンスをいただけないか? 前払いの契約期間中に打ち切られるのは性に合わねえんだよ』
留守電を確認して息を吐く。
これが探偵と距離を取る最も自然な方法だった。探偵にまた癇癪故の過ちを成したと思われるのはそれこそ癪だが致し方ない。
さて、何から取り掛かろうか。
まず情報屋から裏取りも無しに送られてくる細かな有象無象を整理すべきだ。
なかなか連絡を寄越さない「死神」にも見張りを貼り付けなければ。
それから急に連絡が取れなくなった「ピープ」の状況を探っておくか。何か事情があるはずだ。あそこまで心を折ってなお反抗する意志があのノイズに残存しているとは思えない――
「……!」
やっと来たか。「死神」からだ。
「死神」には「渦巻き文字」を警察署内に持ち込んだ可能性のある容疑者を全てリストアップするよう命じてあった。やけに時間が掛かったのは気になるがまだ不自然という程でもないだろう。暗号化されたファイルをスキャンして捨てサーバーで開く。
「……なるほど、遅れるわけだ」
ファイルには大量の写真が収められていた。全てパソコン画面や物々しいファイル蔵の資料――警察関係者の極秘資料だ。そこに「死神」個人の意見まで入っている。
驚いたな。ここまでやれとは言っていない。ここまで掘り下げたところで役に立たない情報ばかりだ。
「くくく……」
なあ。こんな物が僕のような頭脳のもとに流出などしてしまったら何だってできてしまうじゃないか。
そうだ。探偵が刑事だった頃の資料を見てやろう。僕は面白半分で写真からスキャンされた文字データをスクロールした。
なるほど警察は無能ではない。
「……妹」
僕が必死に探していた答えがこれ程無造作に転がっているのだから。
そんな論を暇潰しに探偵にぶつけた事がある。
『そこで妥協しなくても、少し待ちゃハイテーブルに足を乗せられるようになるだろ』
当時の僕はその中に身長差からなる優越感を感じ取り数日探偵とのコミュニケーションを絶った。
今思えばその対応こそが稚拙なやり口だった。数日とはいえ貴重な契約期間を自ら捨てるなど若かったものだ。
ところで僕は追懐に時間を浪費するほど暇ではない。必要に応じて記憶を引き出す。
『なあ、降参だ。俺は何をしちまった? 原因に気づけなかった事込みで反省するからどうかお許しを。俺にもう一度チャンスをいただけないか? 前払いの契約期間中に打ち切られるのは性に合わねえんだよ』
留守電を確認して息を吐く。
これが探偵と距離を取る最も自然な方法だった。探偵にまた癇癪故の過ちを成したと思われるのはそれこそ癪だが致し方ない。
さて、何から取り掛かろうか。
まず情報屋から裏取りも無しに送られてくる細かな有象無象を整理すべきだ。
なかなか連絡を寄越さない「死神」にも見張りを貼り付けなければ。
それから急に連絡が取れなくなった「ピープ」の状況を探っておくか。何か事情があるはずだ。あそこまで心を折ってなお反抗する意志があのノイズに残存しているとは思えない――
「……!」
やっと来たか。「死神」からだ。
「死神」には「渦巻き文字」を警察署内に持ち込んだ可能性のある容疑者を全てリストアップするよう命じてあった。やけに時間が掛かったのは気になるがまだ不自然という程でもないだろう。暗号化されたファイルをスキャンして捨てサーバーで開く。
「……なるほど、遅れるわけだ」
ファイルには大量の写真が収められていた。全てパソコン画面や物々しいファイル蔵の資料――警察関係者の極秘資料だ。そこに「死神」個人の意見まで入っている。
驚いたな。ここまでやれとは言っていない。ここまで掘り下げたところで役に立たない情報ばかりだ。
「くくく……」
なあ。こんな物が僕のような頭脳のもとに流出などしてしまったら何だってできてしまうじゃないか。
そうだ。探偵が刑事だった頃の資料を見てやろう。僕は面白半分で写真からスキャンされた文字データをスクロールした。
なるほど警察は無能ではない。
「……妹」
僕が必死に探していた答えがこれ程無造作に転がっているのだから。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
旧校舎のシミ
宮田 歩
ホラー
中学校の旧校舎の2階と3階の間にある踊り場には、不気味な人の顔をした様なシミが浮き出ていた。それは昔いじめを苦に亡くなった生徒の怨念が浮き出たものだとされていた。いじめられている生徒がそのシミに祈りを捧げると——。


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ゴーストバスター幽野怜
蜂峰 文助
ホラー
ゴーストバスターとは、霊を倒す者達を指す言葉である。
山奥の廃校舎に住む、おかしな男子高校生――幽野怜はゴーストバスターだった。
そんな彼の元に今日も依頼が舞い込む。
肝試しにて悪霊に取り憑かれた女性――
悲しい呪いをかけられている同級生――
一県全体を恐怖に陥れる、最凶の悪霊――
そして、その先に待ち受けているのは、十体の霊王!
ゴーストバスターVS悪霊達
笑いあり、涙あり、怒りありの、壮絶な戦いが幕を開ける!
現代ホラーバトル、いざ開幕!!
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる