暖をとる。

山の端さっど

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-44℃ 思いつきの虫歯

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「痛ぁいんだよねー。歯。絶対この店のパイのせいだと思うんだけどー。ね!」
「は、はぁ……」
「そもそも何なの、リンゴのメレンゲパイってさー。メレンゲパイって言ったらレモンでしょ」
「そ、そういう考え方もありますね……?」
「うるさーい」

 耳をすますと大抵の音が聞こえるじゃん。で、耳ってふさげないでしょ。だからうるさいのがいちばん嫌ーい。厨房のガスまで止めて静かにしたのにさ、アンタが喋んなよ。

「ねーねー、死ぬ前に教えてよ。この辺りで骨持ってそーな怪しい奴見てない?」
「あやしいやつ……?」
「あ、この辺りじゃなくてもいいや」
「その……」
「あ、いま目が『知ってる』って方に動いたー。知ってるんだ。なーに?」
「ひっ」
「言わないならぁー、」

 食事用じゃないナイフをテーブルから取ったら、「言います!」ってまーたうるさくなる。しょーがないけどさあ。

「えっと、その、あ、怪しいという程では……ひっ! 浮浪者が! ゴミ箱を漁る浮浪者がこの辺りに出るんです!」
「えー、何ソイツ。もしかしてスターラーだったりする? ゴミ箱掻き回すってことでー」
「い、いえ、それは」
「ま、いーや、見てみよーっと。間違ってたらまた探せばいいし」

 ケーキにナイフを投げてみたら、何かが割れる音がした。皿じゃない。何これ? リンゴとパイを押しのけてみたら、小さな陶器の破片が詰まってる。

「あはっ、フェーブじゃん。ラッキー。やっぱアンタ殺すのやーめた」

 首のあたりにナイフの柄でトスッ。おやすみー。
 あ、ちょうど裏口側からカサコソ音してるじゃーん。うん、人間の音ー。やっぱりうるさいのはよくないねっと!

「アンタ浮浪者?」

 ……あ、いっけない気絶ぅ。起こすにはここを叩いてー、はい。

「……え? 何、え?」
「めんどい。とりあえずコレ見えるー? 静かにしてよ。終わりたくなかったら」
「げっ……な、な、何がもくて」
「だまれ。はー、めんどい。えー、とりあえず骨出してよ。てかアンタってスターラー? ゴミの臭いするんだけど」
「い、え、スターラーじゃない、です……」
「骨」
「……こ、コンビニのチキンの骨とか」
「あー無駄骨じゃーん」

 こーんなコンビニの廃棄弁当食べて食べ残し地面に埋めそうな奴じゃないでしょスターラー。

「お、俺を殺したりしたらピープの兄貴が黙ってないっすよ!」

 んー?

「えー誰そいつ! 教えてよ。ね?」
「ぁ……は、はい……」

 ナイフって便利だねー、みんな口軽くなるし後始末もできるし。
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