暖をとる。

山の端さっど

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-39℃ 耳鳴らない頭痛

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 目が覚めた途端に頭痛がやってくる。

「痛ーい……」

 気圧のせいか、頭にズキズキとした感覚が続く。そっと錠剤を飲み込んで落ち着くのを待つことにした。

「冬に頭は駄目だよねー、頭は。何も考えられなくなるし、温めると辛くなるし。ね!」

 返事がない。あれ、今日って誰もいなかったっけ。
 ……いやいや、いるよ。眠りが浅いタイプだったし、今ので起きてないことないって。
 まさか、勝手にいなくなったりとかしてないよね?

「えー、ねえ、どうした、のっ」

 奥の部屋に続くドアをパッと開けてみる。耳をしっかりそばだててー。うん?

「あれ、普通にいるじゃん! びっくりしたー、逃げる方法とかあったかと思ーってーええ?」

 あれ、音がしない。なんで?
 確か、この子にはあちこちに鈴をつけといて、動いたら鳴るようにしてみたはず。普段は聞こえなくても、ちゃんと耳澄ましたら聞こえるはず。
 ってことは……慌てて近づいて確かめてみる。
 ……つ、冷たい。



「えー、終わっちゃったのー?」



 早い。早すぎない?
 ちゃんと手入れしてたのに。

 せっかく色々練習して、やっとうまーくできるようになってきたのに。膝のあたりまでうまく生きたまま、つながったまま、骨の標本作ってみたのに。

「これじゃ簡単に作れるのと見た目変わんないじゃん」

 あれ、どこで欠けたんだろ。右の親指の骨がなくなってる。

「えー、なんで? もしかしてホントに逃げようとはしてた?」

 窓から落ちたとか、落としたとか。ありえなくはないかも。

「まあいいかー。そんなに好きな見た目じゃなかったし」

 頭痛のせいでイライラしてくる。しょうがなくラベルに今日の日付をグリグリうずまきっぽい字で書いて、この子に貼っておく。

「あーあーあーあー、頭痛いー! ……」

 返事のない部屋はさみしいから、別の子を早く置かなきゃ。見た目が気に入る子なんて見つかるかなー。

「……先にスターラー? にやられてなきゃ、あのおねーさん欲しかったんだけどなー。もー、こっちが先約だったのに。何も宣言なく、待ち合わせ場所に死体転がすって酷くない?」

 適当なもの食べてまた寝ちゃおー。今日は何も用事がない気がするし。
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