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山の端さっど

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-43℃ エンジェリーデビルケーキ

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『エンゼルケーキなんてものは存在しないんですよ。ケーキは等しくカロリー過多の悪魔です』

 ホワイトチョコの「悪魔」を貪りながら画面の向こうの情報屋は淀みなく喋る。五月蝿い奴だ。しかしこの三つ編み女の持つ情報は信頼がおけるという事実は当座の我慢に値する。

『つまり、ちゃんと「悪魔デビルケーキ」と名乗ってくれるこの悪魔ちゃんは気に入りました。良い差し入れをありがとうございます』
「それは上々だな」
『それで、ワタクシに何をお望みですか?「プレコシティ」さん』
「探偵を探れ」
『……随分と唐突ですのね。事情をどこまでお聞かせ願えます?』
「探偵には『妹』が居るらしい。とある殺人事件の犯人の遺留品と同じ筆跡を持つ人間だ」
『……本気で言ってます? 探偵さんに妹なんて』
「居ないのは知っているから情報屋を頼んだ」

 困惑は承知の上だが僕とて困惑している。

 昨夜「死神」刑事から連絡があった。小学生集団誘拐については触れもせず聞いてきたのは「渦巻き文字」の書き手の情報とその真意。期せずして「何故探偵は僕の名刺に動揺したか」という僕の疑問は一つ解けた。しかしそれよりも巨大な謎が現れたというわけだ。

 死神の情報が正しければスターラーこそが「妹」である確率が高い。……僕と共に嘘偽りなくスターラーを追ってきた当の探偵の「妹」が。
 そんな馬鹿な話があるものか。何かを掛け違えているに決まっている。

「ここに悪い話がある」
『聞きたくありません』
「聞け。探偵は『渦巻き文字』の情報提供者と顔見知りで僕へ連絡を取る仲介もしている。提供者に口止めはしておいたが探偵が『妹』への嫌疑に気づくのは時間の問題だ」
『ワタクシに、短いタイムリミットの間に「妹」の正体、その殺人事件との関係、探偵さんの真意まで探れって言ってます?』
「費用はいくらでも掛けて良い」
『……小学生でその大金出せる人生送ってみたかったですよ……』

 情報屋も納得したようで何よりだ。



 ……そういえば死神からはもう一つ奇妙な話があったな。

「バッグの中に入り込んだバランを見逃しもしない僕が教室に落ちている不自然なバランに気づかない道理がない」
『はぁい? 今なんと?』
「情報屋に意図まで含め聞かせてやる類の話ではない」
『じゃあ言わないでくださいよ』

 僕は情報屋に土産たものと同じカロリーの塊を口に運ぶ。甘過ぎる。低俗だ。下賤極まりない悪魔だな。

『わお、美味しそうにがっついてますねえ』
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