暖をとる。

山の端さっど

文字の大きさ
上 下
34 / 105

-34℃ 悪魔の七本指

しおりを挟む
 公園は、学校の裏手にあるとは思えない荒れようだった。刑事が入り口に着くと、先に着いていた少年はトンと土の地面を蹴る。

「僕の後ろだけを歩いて。この公園には落とし穴が掘ってあるから」
「落とし穴ぁ?」
「たかが小学生の罠と思わない方が良いよ。10歳上くらいまでのOBが本気で制作協力してるんだ」
「おいおい……」

 まずい所に来てしまったらしい。

「そこは通っちゃダメ。そこはジャンプして。そこに真っ直ぐ歩いて」
「……おわっ!」

 派手な音を立てて刑事は穴の中に落ちた。

「な、な……」

 たかが数メートルとはいえ、下にクッションが敷き詰められていなければ危なかっただろう。

「おい、ここは安全だって――」
「ここが入り口。落ちても安全な事が多いけど『犯人』が子供たちをここに連れ去っているならどんな罠が仕掛けられていてもおかしく無いでしょ。僕のこと手伝ってくれるって約束したんだからこの程度のリスクは負ってよ」

 厳密にはそんな約束はしていない気がしたが刑事には言い返す余裕もない。

「それでどう?」
「ああ……何てこった」

 地下数メートルの空間には薄暗いランプが吊るされており、倒れて眠るたくさんの子供達を映し出していた。





「眠らされていただけらしい。多少のすり傷くらいしか無かった」
「それは良かったね」
「いや、一つ分からん事がある。全員、校内で急に口に何かを当てられて眠らされたと言ってる。だが、そいつぁ……」
「いくら昼休みでもクラス全員が学校外の公園まで運ばれたのに気づかないわけがない?」

 刑事の鋭い視線に応じる事なく、生意気な少年は首をすくめた。

「そりゃそうでしょ。校内にある隠し通路から移動したんだから」
「は……校内の隠し通路?!」
「言わないよ。いくら僕でもそっちの道を教えちゃうと怖いOBの人たちに制裁されちゃうから。そんな通路は無かったことにしてうまく報告書にまとめてよ」
「お前っ」
「それじゃあまたね。刑事さん」

 少年は刑事の手に連絡先らしきものを手書きしたメモを押し付けた。

「待てまだ話……! この文字、は……」



 刑事が渦を巻く独特な字体に気を取られているうちに、少年はまたも視界の外へするりと消えてしまった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

旧校舎のシミ

宮田 歩
ホラー
中学校の旧校舎の2階と3階の間にある踊り場には、不気味な人の顔をした様なシミが浮き出ていた。それは昔いじめを苦に亡くなった生徒の怨念が浮き出たものだとされていた。いじめられている生徒がそのシミに祈りを捧げると——。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ゴーストバスター幽野怜

蜂峰 文助
ホラー
ゴーストバスターとは、霊を倒す者達を指す言葉である。 山奥の廃校舎に住む、おかしな男子高校生――幽野怜はゴーストバスターだった。 そんな彼の元に今日も依頼が舞い込む。 肝試しにて悪霊に取り憑かれた女性―― 悲しい呪いをかけられている同級生―― 一県全体を恐怖に陥れる、最凶の悪霊―― そして、その先に待ち受けているのは、十体の霊王! ゴーストバスターVS悪霊達 笑いあり、涙あり、怒りありの、壮絶な戦いが幕を開ける! 現代ホラーバトル、いざ開幕!! 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...