71 / 105
-71℃ 待望の餌食
しおりを挟む
「〈足の骨は美しい〉だぁ?」
「スターラーを名乗ってるが、これ愉快犯だろ」
「しかし、この遺体のことを指してるんなら、状況を知ってるのって犯人だけだよな……」
「ああ、野次馬にもマスコミにもまだ漏れてないはずだ」
「こいつもスターラーの仕業だったのか?」
「そもそも指紋が出てきてるんだろ? 今更何をする気だ」
「半白骨死体」の現場は混乱していた。凍るような寒さも気にせず、中年刑事は薄っぺらいコートで熱くなった頭の中身を吐き出す。
「ふざけやがって!」
現場に置かれたテントの中からは驚くほど大量の研ぎ澄まされたナイフが束で運び出される。忌々しく刑事は見つめる。この刃が刑事の元上司、あの女性の腹を切り裂いたはずなのだ。
その時、刑事のポケットから時代遅れの電子音が鳴る。
「何だ?」
携帯を開くと、メールが一通届いていた。送り主は「プレコシティ」。あの謎めいた少年だ。
『スターラーの情報をやろう』
「!」
タイトルが見えた途端、刑事は小さな携帯の画面に食いついた。
「……!」
「おい、お前、さっきから本当にどうし――」
背後から声を掛けてきた同僚が固まる。刑事はしまったと携帯を折り閉じたが遅かった。
「……何なんだ、それ? 俺の目が狂ってなけりゃ、今そこにスタ――」
「言うな!」
刑事の剣幕に押されて、同僚は少し後ずさる。
「……俺は行く」
「おい待てよ」
「現場の奴らには適当に聞き込みだとか言っておいてくれ」
「さっきのメールのせいか? どこに行くんだ!」
刑事は同僚を突き飛ばした。
「お前がスターラーじゃなくて良かったよ」
立ち上がる前に、走り出す。
頭に血の上った刑事には気づきようもない。
『スターラーはここに居る』
そう示された地点は、情報提供者の少年の注目する先とは真反対であることを。
刑事が現場に残り続けていたら、いずれ現場に残った証拠と警察関係者のデータを照合することを思いつく。そうなればすぐにでも犯人が特定できてしまう。それを避けるために関係ない場所へ行かされたのだと。
スターラーがこの現場の主ではないことも、少年が一時的にしろ「うずまき文字」の犯人を警察から逃がそうとしていることも――今の刑事には知りようが無かった。
「スターラーを名乗ってるが、これ愉快犯だろ」
「しかし、この遺体のことを指してるんなら、状況を知ってるのって犯人だけだよな……」
「ああ、野次馬にもマスコミにもまだ漏れてないはずだ」
「こいつもスターラーの仕業だったのか?」
「そもそも指紋が出てきてるんだろ? 今更何をする気だ」
「半白骨死体」の現場は混乱していた。凍るような寒さも気にせず、中年刑事は薄っぺらいコートで熱くなった頭の中身を吐き出す。
「ふざけやがって!」
現場に置かれたテントの中からは驚くほど大量の研ぎ澄まされたナイフが束で運び出される。忌々しく刑事は見つめる。この刃が刑事の元上司、あの女性の腹を切り裂いたはずなのだ。
その時、刑事のポケットから時代遅れの電子音が鳴る。
「何だ?」
携帯を開くと、メールが一通届いていた。送り主は「プレコシティ」。あの謎めいた少年だ。
『スターラーの情報をやろう』
「!」
タイトルが見えた途端、刑事は小さな携帯の画面に食いついた。
「……!」
「おい、お前、さっきから本当にどうし――」
背後から声を掛けてきた同僚が固まる。刑事はしまったと携帯を折り閉じたが遅かった。
「……何なんだ、それ? 俺の目が狂ってなけりゃ、今そこにスタ――」
「言うな!」
刑事の剣幕に押されて、同僚は少し後ずさる。
「……俺は行く」
「おい待てよ」
「現場の奴らには適当に聞き込みだとか言っておいてくれ」
「さっきのメールのせいか? どこに行くんだ!」
刑事は同僚を突き飛ばした。
「お前がスターラーじゃなくて良かったよ」
立ち上がる前に、走り出す。
頭に血の上った刑事には気づきようもない。
『スターラーはここに居る』
そう示された地点は、情報提供者の少年の注目する先とは真反対であることを。
刑事が現場に残り続けていたら、いずれ現場に残った証拠と警察関係者のデータを照合することを思いつく。そうなればすぐにでも犯人が特定できてしまう。それを避けるために関係ない場所へ行かされたのだと。
スターラーがこの現場の主ではないことも、少年が一時的にしろ「うずまき文字」の犯人を警察から逃がそうとしていることも――今の刑事には知りようが無かった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
旧校舎のシミ
宮田 歩
ホラー
中学校の旧校舎の2階と3階の間にある踊り場には、不気味な人の顔をした様なシミが浮き出ていた。それは昔いじめを苦に亡くなった生徒の怨念が浮き出たものだとされていた。いじめられている生徒がそのシミに祈りを捧げると——。


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ゴーストバスター幽野怜
蜂峰 文助
ホラー
ゴーストバスターとは、霊を倒す者達を指す言葉である。
山奥の廃校舎に住む、おかしな男子高校生――幽野怜はゴーストバスターだった。
そんな彼の元に今日も依頼が舞い込む。
肝試しにて悪霊に取り憑かれた女性――
悲しい呪いをかけられている同級生――
一県全体を恐怖に陥れる、最凶の悪霊――
そして、その先に待ち受けているのは、十体の霊王!
ゴーストバスターVS悪霊達
笑いあり、涙あり、怒りありの、壮絶な戦いが幕を開ける!
現代ホラーバトル、いざ開幕!!
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる