暖をとる。

山の端さっど

文字の大きさ
上 下
8 / 105

-08℃ パーラー旬の苺パフェ

しおりを挟む
 促成栽培抑制栽培ハウス栽培。旬などというものは大概流動的だしそもそも苺の旬は12月から5月と長い。旬の長い農作物など枚挙に暇がないが問題は今僕の前にそびえたる「旬の」苺パフェだ。ここから本気で半年旬を引きずるのか興味はある。

「考えてないでさっさと食えよ、お客様。いつも勤勉な脳細胞には糖分が必要だーだの言ってんだろ。それから、箸よりカメラを先に手に取る奴は愚かだとかもな」
「僕は写真を撮っていない。層構造や盛り付け方の妙を立体芸術として鑑賞するのは馬鹿ではない。いただきます」
「有り難く食えよ」

 この恩着せがましい台詞で分かる通り探偵の奢りだ。僕の手持ち現金は少なくないが大した借りにもならない場で他人の財布の紐を締めることもないだろう。せいぜい年齢的先輩として若者への義務とやらを果たせばいい。

「この間の資料、この店の店主の伝手で手に入ったんだよ。礼はするとして客も紹介しとかないとな」
程度の財力にたかるほど繁盛していないわけでもなかろうに」
「お小学生様が中高になった後のことを視野に入れてんだよ」

 それまで店は潰れない予定らしい。
 何だよ。小学生が大人を超える能力を持っていることが気に食わないか? それだから大人というやつは愚かなままなんだ。

「伝手とは何だ?」
「言えるわけねーだろ、いち市民に警察資料取り寄せてくれる情報源の詳細なんて」

 まあそうだろう。情報が漏れたのがバレずこちらの情報も抜き返されないのなら構わないさ。

「なあ、何が知りたかったんだ? こんな危ない橋渡らせまでして」
「現場のごく詳細な状況と捜査方針と刑事の名前だ」
「詳細ってのはいいとして、捜査方針と刑事?」
「簡単に分かることの捜査は警察に任せておけばいいからね。僕らはその道以外を行く予定だったが今回警察は何も掴んでいない無能らしい」
「OBとしちゃ耳が痛いな」
「何を今更。組織が有能なら探偵も警察を辞める醜態にはならなかっただろう? ただその無能組織の中でもやっと面白い奴を見つけた」
「はは。俺の知ってる奴かな」
「それを聞きたい」

 僕は中年の冴えない雰囲気の刑事の名前を挙げる。

「ああ、知ってるよ」

 探偵は少し小物っぽい表情をした。

「行く先々で事件を引き寄せる、『死神』って呼ばれてる男だろ」

 やはり当たりだ。信仰などクソ喰らえだが死神刑事とやらが引き起こす結果だけには興味がある。僕は足を組み直した。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

旧校舎のシミ

宮田 歩
ホラー
中学校の旧校舎の2階と3階の間にある踊り場には、不気味な人の顔をした様なシミが浮き出ていた。それは昔いじめを苦に亡くなった生徒の怨念が浮き出たものだとされていた。いじめられている生徒がそのシミに祈りを捧げると——。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ゴーストバスター幽野怜

蜂峰 文助
ホラー
ゴーストバスターとは、霊を倒す者達を指す言葉である。 山奥の廃校舎に住む、おかしな男子高校生――幽野怜はゴーストバスターだった。 そんな彼の元に今日も依頼が舞い込む。 肝試しにて悪霊に取り憑かれた女性―― 悲しい呪いをかけられている同級生―― 一県全体を恐怖に陥れる、最凶の悪霊―― そして、その先に待ち受けているのは、十体の霊王! ゴーストバスターVS悪霊達 笑いあり、涙あり、怒りありの、壮絶な戦いが幕を開ける! 現代ホラーバトル、いざ開幕!! 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...