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-07℃ 鉢合わせの荒野
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彼と鉢合わせたのは、わたしが考えつかなかったくらい最も最悪な状況だった。
わたしは先日、ううん昨日、初めて人を殺した。
人殺しなんて普通、ほとんどの人が「初めて」も「二度目」以降もないのが普通だから、こんな言い方はおかしいとは思う。
でもあれは故意だった。わたしは間違いなく自分の意志で、衝動の従うままに人を殺した。ごまかすことも反省もできない。
二度目があるかもしれない。そして、三度目も。
そんな思いを抱えながら、わたしは証拠隠滅のために人気のない荒れ地に来た。
持ってきたのは、ラジオの「バラン」という部品。わたしの指紋がついてるし、素人判断でそこらに置き去りにして変に警察にヒントを与えたくなかった。よく洗って塩水でもかけて人の来ない所に埋めれば、さすがにここから足はつかない。
そう思って来た場所には、先客が二人いた。わたしは素人判断を心の底から後悔した。
一人は生きていて、もう一人は、死んでいたから。
生きた一人が、刃物を振り上げた。無駄のない手つきで、横たわる人、もう動かない人に振り下ろす!
「ひっ」
悲鳴が出そうになるのを必死にこらえて、屈んで体を地面に押し付ける。見つかったら、わたしも殺されるだろうってことぐらい分かる。
その直後、赤いものが地面から花火か爆発みたいに飛び散った。
わたしは、ヒトのお腹の中身を、初めて見た。
「あ、ああ」
わたしはそこから動けなくなった。足ががくがくと震えて、歯がガチガチと鳴る。声が漏れてしまったけど動けない。
「……キレイ……」
わたしの初めては絞殺だったから、知らなかった。こんなに、ヒトの内側が美しいなんて。
「誰だ」
気づいた時には近づかれていた。
乾いた汗の塩っぽい匂いと、全然緊張感のない顔。
普通の顔をした人だ。少し血の付いた服とかを見るまで、先ほどの生きてる方の人だなんて気づかなかったくらい。呆然としていたわたしは、顔をそちらに向けるだけで何も反応できなかった。
それが私と彼の出会い。
「なんだ、凍えてるのか」
そのとき殺されなかった理由を、その言葉の意味を、まだわたしは知らない。
わたしは先日、ううん昨日、初めて人を殺した。
人殺しなんて普通、ほとんどの人が「初めて」も「二度目」以降もないのが普通だから、こんな言い方はおかしいとは思う。
でもあれは故意だった。わたしは間違いなく自分の意志で、衝動の従うままに人を殺した。ごまかすことも反省もできない。
二度目があるかもしれない。そして、三度目も。
そんな思いを抱えながら、わたしは証拠隠滅のために人気のない荒れ地に来た。
持ってきたのは、ラジオの「バラン」という部品。わたしの指紋がついてるし、素人判断でそこらに置き去りにして変に警察にヒントを与えたくなかった。よく洗って塩水でもかけて人の来ない所に埋めれば、さすがにここから足はつかない。
そう思って来た場所には、先客が二人いた。わたしは素人判断を心の底から後悔した。
一人は生きていて、もう一人は、死んでいたから。
生きた一人が、刃物を振り上げた。無駄のない手つきで、横たわる人、もう動かない人に振り下ろす!
「ひっ」
悲鳴が出そうになるのを必死にこらえて、屈んで体を地面に押し付ける。見つかったら、わたしも殺されるだろうってことぐらい分かる。
その直後、赤いものが地面から花火か爆発みたいに飛び散った。
わたしは、ヒトのお腹の中身を、初めて見た。
「あ、ああ」
わたしはそこから動けなくなった。足ががくがくと震えて、歯がガチガチと鳴る。声が漏れてしまったけど動けない。
「……キレイ……」
わたしの初めては絞殺だったから、知らなかった。こんなに、ヒトの内側が美しいなんて。
「誰だ」
気づいた時には近づかれていた。
乾いた汗の塩っぽい匂いと、全然緊張感のない顔。
普通の顔をした人だ。少し血の付いた服とかを見るまで、先ほどの生きてる方の人だなんて気づかなかったくらい。呆然としていたわたしは、顔をそちらに向けるだけで何も反応できなかった。
それが私と彼の出会い。
「なんだ、凍えてるのか」
そのとき殺されなかった理由を、その言葉の意味を、まだわたしは知らない。
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