12月のラピスラズリ

第6回文芸社文庫NEO小説大賞 最終選考ノミネート作品

煙の街に住む住人たちは、名前がなかった。
それどころか、彼らはみんな同じ顔をしていた。
彼らは毎日、決められたルールをなぞって、世界の歯車として働いている。

「No.426ab3_F」は煙の街の住人の一人。
灰色の空しか見たことのない彼が、生まれて初めての青い空を見た。心を奪われた彼の足元には『12月のラピスラズリ』という一冊の絵本が。
絵本の物語は、猫が旅に出て、自分の居場所を見つけるという話だった。
絵本を読み終えた彼の元に、絵本に登場する猫と似た、黒い猫が現れてこう言った。
「お前の立っている場所は、ここだけじゃない」と。
彼はたった1つの持ち物である絵本を持って、黒猫と共に外の世界へ踏み出すことを決心する。

旅人となって、自分の「名前」を探す旅へ。


『だから、名前が知りたかった。ずっと一緒にいたかったから』








まだ小さな息子と、空へ旅立った愛猫にこの物語を。

表紙絵は、惑星ハーブティ様の作品です
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